ゼロコンタクトとはどのようなファンドか

ゼロコンタクト

ゼロコンタクトとは、ハイテク銘柄に投資するファンドの一種で、その中でも新型コロナ対策として「非接触型サービス」に関連する銘柄を集めたファンドです。

日興アセットマネジメント社が販売する「デジタル・トランスフォーメション株式ファンド」という名前で登場し、愛称としてゼロコンタクトと呼ばれているものです。特定の銘柄を選別してポートフォリオに組み込むので、アクティブファンドとなります。

ポイント
  • 非接触型サービスとはどのような銘柄に投資するのか
  • 実際の運用を行うアーク社とその投資スタイル
  • 手数料はアクティブファンドの中でも高め

非接触型サービスとはどのような銘柄に投資するのか

ゼロコンタクトは非接触型サービスに投資すると述べましたが、その内容についてもう少し詳しく見てみましょう。組み入れられる銘柄として分かりやすいのは、Web会議ツールの「Zoom」です。対面ではなく離れた場所からリモートで会議を可能にするので、まさに非接触です。

また、eコマース(EC)の「Shopify」や、クラウド上にコミュニケーションプラットフォームを実現する「Twilio」といった銘柄が含まれます。いずれも、従来は対面で行われていたショッピングやコミュニケーションを、ネットを通じて非対面、非接触とし、ニューノーマル(新常態)の生活スタイルを実現するサービスです。

日々の生活も働き方も、最早コロナ前に戻ることはないだろうという考え方が広まり、人気の投資先となりました。

実際の運用を行うアーク社とその投資スタイル

ゼロコンタクトは日興アセットマネジメント社が販売していますが、銘柄の選定やポートフォリオの組成、実際の取引といった運用はアメリカのアーク社が行っています。

このアーク社はかなり特徴ある運用会社で、「Disruptive Innovation(=破壊的イノベーション)」を起こす可能性のある企業を早い段階で見つけて投資することを標榜しています。イーロン・マスク氏が率いる「TESLA」を見出したことで注目を集めました。

破壊的イノベーションとは、古くは蒸気機関であり、最近ではインターネットがそれにあたります。iPhoneも、携帯電話機能に音楽プレーヤー、カメラ、アプリプラットフォームを融合したイノベーションで成功しました。アーク社は、非接触型のサービスに爆発的な成長機会があると考え、ゼロコンタクトを組成しました。

手数料はアクティブファンドの中でも高め

ゼロコンタクトはテーマ型のアクティブファンドであり、信託報酬は純資産総額に対して 1.7985%となっています。また、購入時に販売手数料として3.3%かかります。一般的なアクティブファンドでは、信託報酬1%以上、販売手数料2〜3%と言われますので、若干割高となっています。

ゼロコンタクトの組み入れ上位銘柄

ゼロコンタクト

ゼロコンタクトの組み入れ上位銘柄は、2023年1月31日時点で下表のようになっています。アメリカが中心ですが、カナダとウルグアイといった国の企業も組み込まれています。

#銘柄業種構成比(%)
1Shopifyインターネット・通販7.30
2ROKU家電6.80
3Zoomインターネット6.80
4BLOCK金融サービス6.70
5COINBASE事業サービス5.60
6ROBROX携帯サービス4.70
7Twilioインターネット4.60
8Draftkingsホテル・レジャー4.50
9MercadoLibreインターネット4.50
10UiPathソフトウェア4.40

いくつか銘柄を挙げると、Shopifyは前述の通りカナダのeコマースの企業です。ROKUは、業種が家電となっていますが、ROKUのユーザにテレビや映画のストリーミングも手掛けるエンターテインメント企業です。BLOCKは決済サービス、COINBASEは暗号資産と、金融系のサービスが組み入れられています。

情報技術系ではTwilioがあり、CPaaS(Communication Platform as a Serviceと呼ばれるクラウド基盤上で電話やチャット機能を構築する仕組みを提供しています。同じく情報技術系で、UiPathはRPA(Robotic Process Automation)と呼ばれる、オペレーションを自動化する技術を提供する企業です。

ゼロコンタクトの運用実績|基準価額チャート推移

ゼロコンタクト

ゼロコンタクトは、新型コロナを背景にマーケットが変動する中で、キャッチーなキーワードもあり2020年7月31日に新規設定されて以降、一時は大量の資金が集まりました。その後どうなったかを含め、運用実績推移を確認してみましょう。

ポイント
  • 基準価額は設定後好調だったがその後下落し続けている
  • 運用実績を考える上で ~テーマそのものの魅力
  • 運用実績を考える上で ~高リスクの銘柄はないか

基準価額は設定後好調だったがその後下落し続けている

新規設定からの基準価額の推移は、以下チャートの通りです。

ゼロコンタクト

チャートを見ると、設定から2021年2月頃までは順調に資金を集められていますが、そこから急に雲行きが怪しくなり、それ以降が下降の一途で、現在では当初の半分程度です。暴落と言っても良いかもしれません。同じ時期の、S&P500指数チャートと比較してみましょう。

ゼロコンタクト

出典:TradingView

ゼロコンタクトの潮目となったのは、2021年2月です。上チャートで赤丸のポイントですが、この時期にアメリカのマーケットでは、市場予想を超える物価上昇を背景にFRBの利上げが遠のくという見方が広まり、利上げ継続観測から株価は下落しました。しかし、それも一時的で全体的には上昇基調であることが分かります。

それにも関わらずゼロコンタクトの基準価額は下落し続けていることから、マーケット全体の動きとは異なり、このファンドが嫌気されたということになります。

運用実績を考える上で ~テーマそのものの魅力

運用実績を考える上で、この手の時流に沿ったアクティブファンドでは注意すべき点があります。

1つはテーマそのものに魅力がなくなるケースです。2000年に入ってすぐには、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)ファンドがこれから著しい経済成長を遂げると期待され人気になり、その後はシェールガスやゲノム、AIといったテーマ型アクティブファンドが登場しました。ゲノムやAIのように今後も技術的発展が望めるものもありますが、それ以外は軒並み見る影もありません。

非接触型サービスはアフターコロナの中で一定のニーズはあると予想されますが、世界の生活スタイルや最新の動向には注意を払っておく必要があります。

運用実績を考える上で ~高リスクの銘柄はないか

運用実績を考える上で、もう1つ気を付けるべき点があります。現在ゼロコンタクトは40銘柄で構成されていますが、その中には先ほどご紹介した暗号資産を取り扱うCOINBASEが2023年1月31日時点で5.6%組み込まれています。

暗号資産に関連するニュースとして記憶に新しいのは、FTXトレーディングの破綻や、裏付け資産を持つステーブルコインの「テラ」暴落です。暗号資産自体の良し悪しはここでは述べませんが、規制面、技術面等で整備されていないビジネスのため、他産業に比べれば暴落のリスクを抱えていると言えるでしょう。

注目ファンド

詳細な投資分析によるバリュー投資を中心に実践しており、短期的な利益追求ではなく安全性を追求しながら中長期的な利益を求めているヘッジファンド。

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ゼロコンタクトの掲示板での評判・口コミ

ゼロコンタクト

ここで、ゼロコンタクトの評判を確認してみましょう。SNSや掲示板において「ゼロコンタクト 」というキーワードで検索してピックアップされたものをいくつかご紹介します。

私もゼロコンタクト三分の一になり泣きそうになりがら保有続けています。この額では売却できないですよね。日興に電話したら一年以内に16000円に戻るのではと言っていましたが信じていいのか。。

引用:Twitter


数年前、日興証券の営業マンに言われるがまま買ったゼロコンタクトとテトラエクイティ。最初は良かったけど今ヤバいことになってる。これやっぱ今すぐ手放すべき?見込みなさそう?今まで放置して死ぬほど後悔してる。

引用:Twitter


某証券とも取引のあるお客さんが怒ってた。『ゼロコンタクトって商品がすごく値下がりしているのに連絡がないの!』
ワテ:『あっ…ゼロコンタクトって…そういう意味なん…』
某証券さん恐るべし。(偏見のみ)

引用:Twitter


俺たちのゼロコンタクト、ついに最下位達成。1000億あるファンドでこれはもはや快挙では・・・

引用:Twitter


ゼロコンタクの含み益が減る一方。参ったなぁ。

引用:Twitter

ネガティブワードを含めて検索したわけではありませんが、SNS上の口コミでは総じてマイナスの意見が見受けられます。基準価額が下がり続けているので、当然と言えば当然でしょう。

また、口コミを見る限り、証券マンもテーマ型のアクティブファンドは売り込みやすいためか、勧誘に乗ってしまったような記載も見られます。では、なぜ値下がりしたのか、次の章でその理由を探ってみましょう。

ゼロコンタクトが2021年後半から値下がりした理由

ゼロコンタクト

2021年後半からゼロコンタクトが値下がりしたのは、特定銘柄のリスクに引っ張られたというよりは、ファンドそのものの人気が落ちてしまったことによります。その理由は、過度に期待が織り込まれていたことと、アメリカの金融方針が影響を与えたと考えられます。

ポイント
  • 過度な期待が織り込まれたことで、一転して下落した
  • アメリカの金融方針が組入れ銘柄に大きな影響を与えた

過度な期待が織り込まれたことで、一転して下落した

ゼロコンタクトが値下がりに転じた契機は、やはり過度な期待を集めたことによるものです。このファンドが登場した2020年は、新型コロナの影響もあり株価が低迷しており、非接触型サービスの人気は高まりました。投資先の選択に苦労していた投資家は、その波に乗り遅れないよう必死で買いを進め、値上がりが値上がりを呼ぶ展開です。

そしてその動きは、今後数年の成長をも織り込み、先取りするものでした。これは、ゼロコンタクトの組み入れ銘柄に多いテック株と呼ばれるハイテク企業の銘柄にも言えることで、同じく2020年から株価は上昇基調でした。

下のチャートはハイテク企業銘柄が多いNasdaqの指数推移ですが、2021年後半から下落傾向となっています。2021年当時において、非接触型サービスビジネスの拡大は見込まれていたでしょうが、その成長以上のものがゼロコンタクトの組み入れ銘柄の価格に反映され、人気を集めた分その反動で大きな下落幅を示すことになりました。

ゼロコンタクト

出典:TradingView

アメリカの金融方針が組入れ銘柄に大きな影響を与えた

ゼロコンタクトが値下がりしたもう1つの大きな理由は、アメリカの金融政策にあります。当時、アメリカだけではなく世界の主要な中央銀行は、新型コロナによる経済停滞を防ぐため大規模な金融緩和を実行し、長期金利は下落することになりました。

その後アメリカでは2021年後半にインフレとなり、今度は金融引き締めが行われ、それにより長期金利は上昇に転じました。ゼロコンタクトが組入れている銘柄は、将来的に大きく成長し株価上昇が期待されるグロース株が多いですが、グロース株は金利が低下すると買われ、金利が上昇すると売られる傾向があります。

グロース株は将来の企業価値を現在価値に直して値が付くため、金利が上昇すれば現在価値の割引率が大きくなり、企業価値が低く見られるのです。

一連の動きはゼロコンタクトだけに当てはまるものではありませんが、アメリカの金融政策の動きに大きく影響を受ける銘柄を組み込んでいることから、金利変動と軌を一にして値下がりをしました。

ゼロコンタクトはどうなる?今後の見通しについて

ゼロコンタクト

ゼロコンタクトはこの先どうなるのでしょうか。ここまで価格が下落しているのであれば、逆に今が買い時なのではないかという考え方もあります。しかしながら、今後の見通しは明るいものとは言えないでしょう。その理由は次の通りです。

ポイント
  • 既に織り込み済の期待を超える成長が見込めない
  • アメリカの金利は高いままでグロース株には逆風が吹く
  • テーマ型アクティブファンドは長期保有に向かない

既に織り込み済の期待を超える成長が見込めない

ゼロコンタクトが値上がりするためには、当然、組み入れ銘柄の株価が上昇する必要があります。構成比トップのShopifyの株価チャートを見ると、以下の通り値崩れしたまま復活基調が見られない状態です。また、今後大きく成長を遂げることを期待させるようなニュースも出ていません。

ゼロコンタクト

出典:TradingView

構成比の2番手であるROKUは、2021年以前に高成長を実現し、株価にもそれが映し出されていますが、2022年以降はShopifyと同じく株価が低迷したチャートになっています。

ゼロコンタクト

どちらの銘柄も、「ゼロコンタクトが2021年後半から値下がりした理由」の章で述べた通り、2021年時点で数年先の成長まで織り込んだ価格となっていました。つまり株価が上昇するためには、マーケットが予想もしていないような技術革新を起こすか、新型コロナが今以上に進んで非接触型サービスの利用者が更に増加するかといったイベントが起こる必要があります。

今のところゼロコンタクト組み入れ銘柄の企業において、革新的な新規サービスの発表は出ておらず、新型コロナも収束に向かっていることから、マーケットの期待はしばらく低いままだと言えるでしょう。

アメリカの金利は高いままでグロース株には逆風が吹く

FRBのパウエル議長は、3月7日に米連邦議会上院で「利上げのペースを加速する」旨の発言をしました。一旦2月に利上げペースを減速したにも関わらず急な方針転換となり、市場関係者に衝撃を与えました。

これは、アメリカのインフレ圧力が、FRPの予想と異なり、収まりを見せないことが背景となっています。現在4.5%程度の政策金利は6%を超えてくるのではという見方も出ているようです。

つまり、金利の上昇が今後も続くためグロース株には逆風が吹くことになり、グロース株を構成銘柄に持つゼロコンタクトにも同じく逆風が吹き付けることになります。これが、今後の見通しが良くないと予測するもう1つの理由です。事実、パウエル議長の発言の後、7日のアメリカ株は全面安となりました。

パウエル議長は、同じ席で、インフレ傾向が必ずしも景気後退につながるものではないという発言もしています。マーケットのハードランディングの可能性が高まっていることを懸念する市場関係者もいることから、景気後退による株式全面安もリスクも見過ごせないでしょう。

テーマ型アクティブファンドは長期保有に向かない

テーマ型のアクティブファンドは、インデックスファンドよりも大きなリターンを狙うものです。そのリターンの源泉は、利益成長にあると言えます。これまで述べてきました通り、ゼロコンタクトの組み入れ銘柄に関して、現在の状況を覆すほどの成長性をマーケットは見込んでいないようです。

それにより純資産総額が減り続けていますが、これによる資金不足はファンドマネージャーが考える運用を実施することを妨げる可能性があります。つまり、資金がなくてやりたい運用ができない、ということです。

また、アクティブファンドは、特定のセクターやテーマに絞るスタイルのため、マーケット全体が不調な時期には、インデックス以上にリターンは低下し、資金が逃げる可能性があります。アメリカでしばらくインフレが続いた後、リセッション(景気後退)が懸念されています。そのような中で、テーマ型アクティブファンドであるゼロコンタクトを長期保有することはギャンブルに近いと言えるのではないでしょうか。

ゼロコンタクトの現状と今後の見通しをおさらい

ゼロコンタクトは、新型コロナの蔓延を背景に非接触型のサービスを集め、その成長性への期待から一時大きな拡大を見せました。しかし、過度に集めた期待の剥落と、アメリカの経済動向を背景に現在は低迷しており、今後の復活の兆しが見えない状況です。現時点では、別の選択肢を見つけることが賢明と言えるでしょう。

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