三菱電機の企業概要
三菱電機とは、1921年に設立された日本の大手総合電機メーカーです。
事業展開はインフラ部門をはじめ、インダストリー・モビリティ部門、ライフ部門、ビジネスプラットフォーム部門まで多岐にわたります。
インフラ部門では鉄道車両用電機品や無線通信機器などを、インダストリー・モビリティ部門ではプログラマブルコントローラーやインバーターなどを開発および製造しています。
ライフ部門ではエレベーターやエスカレーター、ビルセキュリティーシステムをはじめ、「霧ヶ峰」シリーズで知られる空調機まで幅広く手がけています。
ミサイルや警戒管制レーダーなどの宇宙・防衛エレクトロニクス分野にも密接に関わっており、日本にとって欠かせない企業です。
会社名 | 三菱電機株式会社 |
---|---|
市場名 | 東証プライム |
代表取締役社長 | 漆間 啓 |
本社所在地 | 東京都千代田区丸の内2-7-3 東京ビル |
創立年月日 | 1921年1月15日 |
資本金 | 1,758億2千万円 |
従業員数(連結ベース) | 149,655人 |
三菱電機の事業内容
三菱電機の主な事業内容は、「重電システム」「産業メカトロニクス」「情報通信システム」「電子デバイス」「家庭電器」の5つです。
ここでは事業分野ごとの特徴や強みについて紹介します。
- 重電システム
- 産業メカトロニクス
- 情報通信システム
- 電子デバイス
- 家庭電器
重電システム
重電システム事業は日本政府や大企業など、大口顧客から仕事を請け負う分野です。
具体的には、鉄道車両用電機品やタービン発電機などを製造しています。
三菱電機の重電システムは、エネルギー効率化や社会インフラの安定運用、環境保全など、持続可能な社会の構築に大きく貢献しています。
とくに近年では、再生可能エネルギーの利用拡大やスマートグリッドの構築に向けた技術開発に注力しており、脱炭素社会への移行を技術面から支えています。
産業メカトロニクス
産業メカトロニクスは、工場の自動化や製造業の生産性向上を支える機械や産業用ロボットを取り扱う事業分野です。
具体的には、プログラマブルコントローラー、ACサーボ、産業用ロボット、数値制御装置、電動パワーステアリング用モーターなど、製造業の自動化と効率化に大きく貢献する製品を数多く展開しています。
とくに、MELSECシリーズのシーケンサーは、装置制御から安全・情報・計装制御まで、広く生産ライン・社会インフラを支える国内トップブランドとして知られています。
情報通信システム
情報通信システム事業は、主に宇宙開発や国防政策に関連する部門です。
無線通信機器や人工衛星をはじめ、高度な情報通信技術を駆使した製品とソリューションを開発しています。
なかでも映像解析ソリューション「kizkia」は、AIを活用して監視カメラ映像から特定の「ヒト・モノ・コト」をリアルタイムかつ自動的に検知・通知する技術として注目を集めています。
電子デバイス
電子デバイス事業は、高度な技術革新を支える半導体をメインに取り扱う部門です。
とくにパワー半導体デバイスは、家電や再生可能エネルギー、電源、電力、鉄道、自動車など、あらゆるパワーエレクトロニクス機器の省エネに貢献する主力製品です。
たとえば、SiC(炭化ケイ素)パワー半導体デバイスは、家電、産業機器、鉄道、自動車などのあらゆるパワーエレクトロニクス機器の大幅な省エネ化に貢献しています。
家庭電器
家庭電器事業の代表的な製品は、高効率で環境に優しいルームエアコン「霧ヶ峰」シリーズです。
他にも、食品の鮮度を長持ちさせる技術を搭載した冷蔵庫や、省エネ性能に優れたLED照明器具などを取り扱っています。
独自の技術開発によって省エネルギー性と快適性を両立した製品を多数製造しているほか、使わなくなった家電のリサイクルにも積極的に取り組んでいます
三菱電機の業績推移|売上・営業利益
引用:日本経済新聞
2023年3月期における三菱電機の売上高は約5兆円で、前年度比で見ると約5,000億円の増加です。営業利益は約2623億円で、若干ではあるものの前年度から増加しています。
売上高増加の背景には、インフラや産業機器、情報通信システムなど、多岐にわたる事業領域での堅調な需要があります。
とくに再生可能エネルギーの普及拡大や、デジタル変革に伴う設備投資の増加が売上を押し上げたと考えられます。
営業利益が微増した理由としては、売上高の増加に加え、コスト削減や生産性向上の企業努力も関係しています。
為替の影響も大きく、今後も円安傾向が続けば、輸出企業である三菱電機の業績にはプラスの影響を与えるでしょう。
三菱電機の株価推移|過去10年のチャート
三菱電機の株価は数年間にわたって低迷を続けていましたが、2024年に入って急激な値上がりを記録しています。
ここでは過去10年分のチャートに基づいて、三菱電機の株価推移を具体的に解説します。
株式投資を検討している方は、参考にしてみてください。
- 2018年〜2023年にかけて株価が低迷
- 2023年〜2024年年にかけて株価が高騰
2018年〜2023年にかけて株価が低迷
引用:日本経済新聞
三菱電機の株価は2018年にピークを迎えたのち、2023年までの5年間は低迷を続けました。
2020年以降、新型コロナウイルスの影響による経済活動の停滞、需要の減少、サプライチェーンの混乱などが、一時的に業績を圧迫しました。
その後も株価が低迷した主な要因に、品質管理の不祥事が挙げられます。
2021年6月、鉄道車両用空調装置の検査不正が発覚したのち、国内16拠点、のべ197件の不正が明らかになったことで、投資家の信頼を損ない、株価が下落しました。
2023年〜2024年年にかけて株価が高騰
引用:日本経済新聞
それまで低迷が続いた三菱電機の株価は、2023年に入って高騰し、2024年3月時点では2,500円以上の高値圏を記録しています。
株価上昇の背景には、三菱電機の業績回復があります。
インフラ部門をはじめ、ライフ部門、インダストリー・モビリティ部門、ビジネス・プラットフォーム部門のそれぞれが営業増益し、企業全体の営業利益率は前年同期比で1.3ポイント改善しました。
また2024年3月、三菱電機はルネサスエレクトロニクスの保有株を全て売却し、売却益が1093億円になったと発表しました。この売却益は今後の成長投資に回す方針で、投資家からの評価も高まっています。
三菱電機の株主還元|配当・自社株買い
三菱電機は自社の株主に対して、どのような株主還元を実施しているのでしょうか。
株主に現金で支給される配当と、三菱電機が株式を買い戻す自社株買いの内容について、それぞれ詳しく解説します。
- 三菱電機の一株配当・配当利回り推移
- 三菱電機の自社株買い推移
三菱電機の一株配当・配当利回り推移
引用:株予報Pro
三菱電機の一株あたり配当金は次のように推移しています。
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年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 |
---|---|---|---|---|---|---|
1株当たり配当金(年間) | 40.0円 | 40.0円 | 36.0円 | 40.0円 | 40.0円 | 未定 |
中間配当金 | 14.0円 | 14.0円 | 10.0円 | 14.0円 | 14.0円 | 20.0円 |
期末配当金(単位:円) | 26.0円 | 26.0円 | 26.0円 | 26.0円 | 26.0円 | 未定 |
直近5年間の一株あたり配当金は、36円〜40円で横ばいです。
2023年度の中間配当金は、前年度対比で6円増額しており、投資家にとってポジティブなサインと捉えられます。
配当利回りに関して、2023年度の実績配当利回りは2.53%で、2024年度の予想配当利回りは1.98%です。
これらの数値から、三菱電機株は今後も比較的安定した配当金および利回りが期待できるでしょう。
三菱電機の自社株買い推移
三菱電機は発行済み株式の1.89%に相当する4,000万株、500億円を上限に自社株買いを実施しています。
2023年3月時点での取得済み株式数は約2,300万株、金額にして約447億円です。
三菱電機は2021年度にも500億円を上限とした自社株買いの方針を打ち出し、ほぼ上限の499億円を購入しています。
自社株買いの主な目的は、株主還元の強化および資本効率の向上です。
三菱電機の積極的な自社株買いは、自社の財務健全性や成長性への自信の表れと捉えられます。
三菱電機の株価がなぜ安いのか解説
東証プライムに上場している総合電機メーカー7社を比較すると、三菱電機の株価は5位です。
なぜ三菱電機の株価は、他の総合電機メーカーと比べて安いのでしょうか。
主な理由を3つ挙げて、それぞれ詳しく解説します。
- 全国ニュースになるほど悪質な不祥事が連発した
- 重電システム事業のような公共事業は利益率が低い
- 事業全体の利益率が低く、企業として成長性が乏しい
全国ニュースになるほど悪質な不祥事が連発した
三菱電機では近年、品質不正や労務問題など数々の不祥事が発覚しています。
なかでも取り沙汰されたのが、鉄道車両向け空調装置における35年以上にわたる不正検査問題です。
この問題は組織的な不正行為として認められ、杉山武史社長(当時)の引責辞任に至るなど、企業統治の問題が浮き彫りになりました。
不正検査は国内の全22拠点のうち、実に3分の2を超える17拠点で発覚し、合計197件の不適切事案が確認されました。
不正の内容は、納期や試験設備の問題から契約内容と異なる試験や検査を行ったり、設計に起因する製品のばらつきを隠蔽するために虚偽の報告を行ったりするなど、意図的なものが多く報告されました。
これらの不祥事は投資家や顧客からの信頼を大きく損なう結果となり、株価にも大きな悪影響を与えました。
重電システム事業のような公共事業は利益率が低い
日本では、公共事業関連する社会資本がすでに充足していることも、三菱電機の事業の将来性、ひいては株価に影響を与える要因です。
たとえば、三菱電機の主力事業であるタービン式発電機の製造においても、新たな発電所の建設には莫大な経費が必要となります。
さらに、完成した発電所の維持管理にも多額の費用がかかります。
しかし、日本はすでに十分な発電能力を有しているため、新たに発電所を建設してもそこから得られる利益は限定的です。
実際に、日本政府が公共事業に割り当てる予算は1998年以降、減少傾向にあります。
公共事業の需要が減少する中では、三菱電機が重電システム事業部門から大きな収益を上げることは困難です。
結果として、事業収支が赤字に陥るリスクが高まり、株価が安くなっていると考えられます。
事業全体の利益率が低く、企業として成長性が乏しい
三菱電機の直近5年間の財務データを見ると、営業利益率は5.2%から6.4%の間で推移しており、とくに大きな成長は見られません。
営業利益率が停滞している背景には、前述したように公共事業の収益性の低さが考えられます。
また、低収益が続いているためか、株主に対して目立った増配も行われていません。
したがって、投資家の間では三菱電機株の魅力がなくなり、結果的に株価が安くなるという負のスパイラルに陥っていると考えられます。
三菱電機が株価を向上させるためには、事業全体の利益率を改善し、株主にとって魅力的な企業に成長するような戦略が必要です。
三菱電機の株価に対する投資家の口コミ
三菱電機の株価に関する投資家たちの口コミを調査したところ、おしなべて今後の成長に期待する意見が多く見受けられます。
2023年まで低迷を続けた三菱電機株が、なぜ今になって注目を集めているのでしょうか。その理由は大きく2つ考えられます。
1つ目に、三菱電機が日本の宇宙産業や防衛産業と密接に関わっていることが挙げられます。三菱電機は防衛ミサイルや、敵国のミサイルを感知する管制レーダーなどを手がけるメーカーです。
国防に対する需要は底堅いため、三菱電機株を手放さない投資家の気持ちも納得できます。
2つ目に、2024年3月から東京都内の一部地域で運用が開始されたロボットデリバリーサービスも注目すべきポイントです。
三菱電機はUber Eats JapanおよびCartken Inc.と業務提携を結び、AI技術を駆使したデリバリーロボットの導入・運用に取り組んでいます。
巣ごもり需要が拡大したコロナ禍以降、フードデリバリー市場は成長市場として注目を集めています。三菱電機の技術力が、日本国内におけるロボットデリバリーサービス普及の起爆剤となるかもしれません。
三菱電機の株価は今後どうなる?将来性を解説
長きにわたって低迷を続けたのち、2024年に入って急激な高騰を見せている三菱電機の株価は、今後どうなるのでしょうか。
直近10年における株価推移のトレンドや、今後の事業展開を踏まえて、三菱電機株の将来性を考察します。
- 公共事業を減らして、余った資源を成長事業に再投資できれば、株価上昇もあり得る
- 明確な経営戦略をもてなければ、今後も株価は低迷もしくは下落する
公共事業を減らして、余った資源を成長事業に再投資できれば、株価上昇もあり得る
三菱電機がこれまで注力してきた公共事業、特に発電所や道路の建設などは、日本国内では既に供給過多の状態にあります。
今後、これらの事業から収益性や成長性は薄いといえるでしょう。
したがって、これらの事業から速やかに撤退すると同時に、今まで公共事業に投じていた人・モノ・カネ・情報といった経営資源をより成長性の高い事業へとシフトできれば、企業価値の向上につながります。
具体的には、産業用の工場自動化やパワー半導体など、グローバル市場においても成長が期待されており、三菱電機が持つ技術力を活かせる領域への再投資が有効です。
投資家にとっては、三菱電機がどのようにして事業ポートフォリオの最適化を図り、成長戦略を実行していくのかが注目点となるでしょう。
明確な経営戦略をもてなければ、今後も株価は低迷もしくは下落する
収益性の低い既存事業から手を引き、成長事業に資本を投じれば、三菱電機株はさらなる成長が期待できると説明しました。
しかしながら、近年の報道や公式プレスリリースを見る限り、三菱電機の経営陣に明確な経営戦略があるとはいえません。
近年、同社は品質に関する不祥事を受けて、「2年で300億円」を品質管理に投じると発表しました。
たしかに、三菱電機が不祥事からの教訓を生かし、品質管理の強化に努めることは極めて重要です。
一方で、管理部門にいくら投資しても、利益は1円も生まれません。
売上高や営業利益を増やし、企業の株価を向上させるためには、製造部門や営業部門への投資が不可欠です。
特に、技術革新が進む現代においては、産業用ロボットやエネルギー管理システムなど、将来性の高い分野への積極的な投資が求められます。
そういった明確な成長戦略を持たず、現状維持の姿勢を続けるならば、三菱電機株は今後も低迷を続けるでしょう。
三菱電機の業績・株価・配当についてまとめ
三菱電機の株価が今後どうなるのかについてまとめました。
三菱電機株は不祥事や利益率の低さを背景に、ここ数年低迷を続けていました。
しかし、同社は日本の宇宙開発や防衛政策と密接に関わっているほか、フードデリバリーのような成長市場に積極的に参入しているため、今なお多くの投資家から根強い人気を受けています。
2024年以降はとくに株価が上昇傾向にあるため、先行者利益を狙う投資家は要チェックの企業です。
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