グローバルAIファンドとは
グローバルAIファンドとは、三井住友DSアセットマネジメントが運用会社ですが、実態はヴォヤ・インベスト・マネジメントが運用するマザーファンドが運用・指図を行っています。つまり、投資先は、ヴォヤ・インベスト・マネジメントが選定することになります。
ヴォヤ・インベスト・マネジメントは、アメリカのヴォヤ・フィナンシャルという金融グループ傘下で50年以上の実績を持つ資産運用会社です。
2023年8月14日時点で、純資産額は4,032億円あり、日本経済新聞の投信ランキングでは27位につけていることから、かなり大きい規模のファンドと言えます(出典:日本経済新聞)。
基本情報は下表の通りです。
単位型・追加型 | 追加型 |
---|---|
投資対象地域 | グローバル(日本含む) |
投資対象資産 | 投資信託証券、株式 |
決算頻度 | 年1回 |
投資形態 | ファミリーファンド |
為替ヘッジ | あり・なし |
グローバルAIファンドの特徴
グローバルAIファンドは、AIが銘柄を選定するのではなく、AIがビジネスに関連する上場企業の株式等に投資を行います。AIが関連する銘柄とはどのようなものかということや、ファンドとしての特徴を見ていきましょう。
- グローバルAIファンドの投資対象
- グローバルAIファンドの組入上位銘柄
- グローバルAIファンドは「為替ヘッジなし」「為替ヘッジあり」の2種類
- グローバルAIファンドの購入時手数料・信託報酬
グローバルAIファンドの投資対象
グローバルAIファンドの投資対象は、AIテクノロジーそのものを開発する企業よりは、AIを活用するソフトウェアやアプリケーションを提供する企業、AIを活用したサービスを提供する企業となります。
AIを活用したサービスとは、例えば自動運転、ヴァーチャル・リアリティ(VR)、ロボティクスや、フィンテック、IoTが挙げられます。また、AIによる予測分析を応用したセキュリティやリスク管理も対象範囲となります。
AIは、生成AIに代表されるようにまさに今発展中の技術ですが、量子コンピュータのように技術確立が途上ではなく、既に様々なケースでビジネスに応用されています。先行投資ではなく、収益を上げている企業が投資対象となるので、リターンを狙う個人投資家にとっても投資対象となり得るでしょう。
但し、AIのような先端技術は将来どのような勢いで発展するか、或いはシュリンクしてしまうのかという点が読みにくい点は、注意が必要です。
グローバルAIファンドの組入上位銘柄
では実際にグローバルAIファンドに組み入れられている銘柄を見ていきましょう。個別の銘柄の前に、地域的な偏りを観察してみます。
▼組入上位5カ国・地域
# | 国・地域名 | 組入比率 |
---|---|---|
1 | アメリカ | 83.6% |
2 | 中国 | 3.4% |
3 | カナダ | 3.3% |
4 | 台湾 | 2.3% |
5 | フランス | 1.2% |
月次報告書を参照すると、基準日2023年6月30日で、アメリカの銘柄が83.6%と圧倒的となっています。これは、AI関連のビジネスがアメリカで進んでいることと、マザーファンドを運用するヴォヤ・インベスト・マネジメントがアメリカを本拠地とすることから、情報を収集しやすいということが理由でしょう。
次に同じく基準日2023年6月30日で組入銘柄上位10社を見てみます。
▼組入銘柄上位10社
# | 企業名 | 業種 | 組入比率 |
---|---|---|---|
1 | テスラ | 一般消費財・サービス | 4.4% |
2 | アマゾン・ドット・コム | 一般消費財・サービス | 4.1% |
3 | オン・セミコンダクター | 情報技術 | 3.7% |
4 | メタ・プラットフォーム | コミュニケーション・サービス | 3.6% |
5 | アドビシステムズ | 情報技術 | 3.2% |
6 | ディア | 資本財・サービス | 2.9% |
7 | トゥイリオ | 情報技術 | 2.8% |
8 | ネットフリックス | コミュニケーション・サービス | 2.7% |
9 | ショピファイ | 情報技術 | 2.7% |
10 | エレバンスヘルス | ヘルスケア | 2.6% |
1位のテスラは言わずと知れた電気自動車のメーカーです。2位のアマゾンや4位のメタにしてもAIそのものが主力ビジネスではなく、それぞれの本業の要素技術としてAIが活用されており、それが競争力につながっている点が共通します。つまり、AIを使いこなしている企業が組み入れられていることになります。
グローバルAIファンドは「為替ヘッジなし」「為替ヘッジあり」の2種類
グローバルAIファンドは「為替ヘッジなし」と「為替ヘッジあり」を選択することが可能です。ファンドの投資対象はグローバルであるため、アメリカの銘柄を組み入れる場合は当然ドル建てとなります。海外通貨は為替リスクを伴うため、そのリスクを避けたい場合には「為替ヘッジあり」を選択することになります。
外貨建ての資産に対し為替ヘッジを行わない場合、基準価額は為替変動の影響を受けます。円安の際は基準価額にプラスの影響(為替差益)が発生し、逆に円高の際は基準価額にマイナスの影響(為替差損)が発生します。
「為替ヘッジあり」の場合、対円で為替取引を行うことで、為替リスクの影響を抑えることができます。但し、ヘッジを行っても為替リスクをゼロにすることはできません。
為替リスクを取るか取らないかは、個人投資家の投資スタイルに依ります。純粋に組入銘柄のパフォーマンスだけをトレースしたいのであれば為替の影響を排除した「為替ヘッジあり」を選択するということになります。
グローバルAIファンドの購入時手数料・信託報酬
投資家に発生する費用は、購入時に発生するものと、毎年発生するものがあります。前者は購入時手数料で、購入価格の3.3%を上限として証券会社等の販売会社が定めるものです。
後者は信託報酬と呼ばれるもので、ファンドの純資産総額に年1.925%の率をかけたものとなります。これ以外に細々と監査費用や資産を海外で保管する費用等が発生します。
一般的にアクティブファンドの信託報酬は1%台前半のものもあるので、少し高めと言えそうです。
グローバルAIファンドの運用実績・リターン
グローバルAIファンドの運用実績について、基準価額と純資産総額で見てみましょう。下チャートは為替ヘッジなしで、上段が基準価額の推移を、下段が純資産総額の推移を示します。
まず特徴として挙げられるのは2020年頃から、基準価額と純資産総が急激に伸びていることです。この時期に人気を集め、順調に成長を続けました。しかし、2022年に入ると突然落ちています。この理由については後ほど説明します。
またリターンも見てみましょう。運用コストを差し引いたトータルリターンを参照します。
トータルリターンについては、特別高いパフォーマンスを示したわけではありませんが、まずまずの成績と言えそうです。同じようなハイテクノロジー系のファンド「netWIN GSテクノロジー株式ファンド」でも同等のパフォーマンスを示しています。
グローバルAIファンドの基準価額が下落した理由
先の推移で観察した通り、グローバルAIファンドは2022年に基準価額が大きく下落しました。その理由説明の前に、グローバルAIファンドの組入銘柄を再度見てみると、一般にハイテク銘柄と言われるものが多くなっています。つまり、AI関連銘柄とハイテク銘柄は重複しているのです。
2022年はまさにこのハイテク銘柄が大きく下落した時期と一致します。コロナによる株式全体への影響もありましたが、特にアメリカのハイテク銘柄に大きく影響を及ぼしたのはFRBによる金利上昇です。
一般に株価は、将来生み出すキャッシュフローを現在価値に直して理論価格が求められ、割安か割高かを判断します。ハイテク銘柄は今後の成長を期待されるため、将来の成長が折り込まれやすいという特徴があります。
金利の上昇が見込まれると将来キャッシュフローの割引率が大きくなり、その結果個々のハイテク銘柄は割高と判断されて避けられてしまったため、それらを組み入れるファンドの基準価額も下がることとなりました。
このことは、ハイテク銘柄が多いと言われるアメリカのナスダック総合指数の推移を見ると分かります。下のチャートが示す通り、ちょうど2022年から指数も大きく下落していることが見て取れます。
出典:Yahoo!ファイナンス
グローバルAIファンドの掲示板やSNSの口コミ・評判
次にグローバルAIファンドについて、口コミからその評判を探ってみましょう。
口コミを見る限りでは、ポジティブな意見もネガティブな意見もあるようです。SNSなので詳細な投資状況は把握できませんが、前述の2022年のハイテク銘柄の急落の前に高値掴みしてしまった投資家は、なかなか値が戻っていないのかもしれません。
分配金に関するコメントも見受けられますが、基本的に分配金はファンドの純資産から支払われるものなので、基準価額が下がることになります。このファンドに限った話ではありませんが、中長期で保有するのであれば、分配金ではなく再投資することで資産形成は進むということも念頭に置いておくと良いでしょう。
グローバルAIファンドの今後の見通し
グローバルAIファンドの今後の見通しについては、明るい材料と不確実な材料の両面があります。
明るい面は、アメリカの金利動向です。2023年8月時点では、アメリカ経済にはまだインフレ圧力が残っておりFRBはインフレを抑えるために政策金利を年内に再度上げる観測もあります。しかし、2022年のハイテク銘柄下落に繋がったような大幅で長期の金利上昇は今後見込まれないというのが、現時点での論調です。マクロ経済が理由でファンドの価値が大きく下がる可能性は低いのではないでしょうか。
一方、不確実な要素の1つは、AIの技術トレンドを読むことは専門家でも難しいということです。オープンAI社の「Chat GPT」のように、突然社会に多大なインパクトを及ぼすこともあれば、別の代替技術の登場により急速に廃れる可能性もゼロではありません。
また、AIは今や多くの業種で活用されていますが、どこまで使いこなせているか、企業の競争力の源泉となっているのかを見通すことも難易度が高いです。組入銘柄を観察した際にハイテク銘柄と多くが重複していたこともあり、AI関連銘柄に該当するのかは判別しにくいのが実態でしょう。
中長期で見ればAIは強力な要素技術であることに間違いはなく、AIを収益獲得や効率化のために広範かつ効果的に活用できている企業が組み入れられるのであれば、今後の見通しはポジティブと言えます。
グローバルAIファンドは資産運用としておすすめ?
グローバルAIファンドを資産運用のポートフォリオの1つとして加えるべきかという点については、積極的におすすめするものではありません。その理由は、不確実性が高いということと、口コミでの不満でも見て取れるように、圧倒的な成績を上げているわけではないことです。
一方でAI関連銘柄を投資家が自力で見つけ出すことは至難の業です。5年というスパンで見ればそこまで低調なパフォーマンスではないということもあり、AIという影響力の大きい技術の将来性に期待して、中長期保有目的で保持することについては、悪くないとも言えます。
繰り返しになりますが、その技術の専門家であっても、ファンドを販売する金融機関であっても先端技術は将来性の判断が難しいです。また企業がどの程度AIを活用できているのかを見定めることも同様に難易度が高いです。
自身のポートフォリオに追加するのであれば、大きくベットするのではなく、将来性と不確実性が同居した期待半分銘柄という扱いが良いのではないでしょうか。
グローバルAIファンドの特徴と口コミ・評判をおさらい
ここまでグローバルAIファンドについて、口コミでの評判や、パフォーマンスについて観察してきました。口コミではポジティブな意見とネガティブな意見がどちらも存在し、パフォーマンス面ではそこそこの成績というファンドでした。
AIはそのインパクトから、技術そのものの動向や、それを導入する個々の企業の動向まで目を配る必要があり、膨大な情報の収集と分析を行うことが重要です。投資をギャンブルにしないためにも、投資家自身にも相応の努力が求められます。
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