三菱商事の企業概要
三菱商事とは、三菱グループの総合商社のことを指し、世界中で幅広い事業を展開しています。投資について詳しくない人なら、三菱といえば銀行のイメージがありますが、三菱銀行も同じ三菱グループに類します。
財閥系の中でも三菱はトップの企業といわれ、1950年に設立し、1954年に東京・大阪両証券取引所に株式上場しました。設立当時は貿易仲介を中心としたビジネスを行っていましたが、1970年代になって資源開発への投資も手掛けるようになり、そこからビジネスの幅を広げていき、現在に至ります。
上場 | 東証プライム |
---|---|
資本金 | 約2044億円 |
設立年 | 1954年 |
売上高 | 約21.5兆円 |
従業員数 | 85154人 |
三菱商事の事業内容
三菱商事の事業内容は多岐に渡ります。その種類は食品からエネルギー資源と幅広く展開しているので、ここではその中でも主な事業として展開されているものを個別に紹介していきます。
- 産業DX事業
- 次世代エネルギー事業
- 天然ガス事業
- 総合素材事業
- 化学ソリューション事業
- 金属資源事業
- 産業インフラ事業
- 自動車・モビリティ事業
- 食品産業事業
- コンシューマー産業事業
- 電力ソリューション事業
- 複合都市開発事業
産業DX事業
産業DXとは「デジタルのテクノロジーを用いたビジネスやサービス」のことを指し、三菱商事においては「中期経営戦略2024」の柱の1つとされており、リアルとデジタルを融合させることで、さまざまな社会問題の解決を目的としています。
次世代エネルギー事業
次世代エネルギー事業についても、三菱商事では「中期経営戦略2024」の柱の1つとされています。炭素技術からの脱却、あるいは低めるための技術開発や、環境負荷の低い次世代エネルギーを消費者に提供するまでの一連の流れを構築することを目的としています。
天然ガス事業
三菱商事では、北米や東南アジアなどで、天然ガス・原油の開発や生産を行い、エネルギーを安定供給すると共に、カーボンニュートラル社会の実現に向けて事業を展開しています。よりクリーンなエネルギーの供給を第一として目指し、CO2の削減を期待できるCCUS、カーボンクレジットが現在注目されています。
総合素材事業
三菱商事が取り扱う総合素材は多岐に渡ります。社会のデジタル化や自動車の軽量化を目指すための素材開発、太陽光発電用パネルの原料となる珪砂事業、さらに建設やインフラで用いられるセメントや炭素材の開発も行っています。
化学ソリューション事業
三菱商事の科学ソリューション事業では、石油化学製品や塩、メタノールといった商品製造事業とトレーディング事業が展開されています。また昨今の環境問題にも着目し、リサイクルPETや環境対応素材製造事業にも積極的に取り組み、今後の環境の変化にも対応できるビジネスモデルを構築しています。
金属資源事業
金属資源事業は、事業環境の変化によって度々そのモデルが変わっています。現在では原料炭や銅を中心としながら、その他今後注目を浴びていくであろう脱炭素や電化、循環型社会において需要が高まるであろう鉄に関する開発事業も行っています。
産業インフラ事業
三菱商事は産業インフラ事業についても積極的に展開しています。船舶や宇宙航空機、産業機械などの分野において、それぞれのビジネスモデルを展開しており、さらに今後の高まるニーズとしてデジタル化や低環境負荷などにも応えられるようなサービスやソリューションを提供しています。
自動車・モビリティ事業
三菱商事の自動車事業は、乗用車・商用車に限らず海外での現地生産・販売から販売金融、アフターセールスまで、自動車に関連するものをグローバルに展開しています。さらにはヒトやモノの移動に関する社会問題の解決にも乗り出しています。
食品産業事業
三菱商事の食品産業事業では、さまざまな社会問題や環境問題の解決と、消費者の安心と安全の確保を両立させ、多様で豊かな生活の実現を目的として掲げています。食料、生鮮食品、食品素材など「食」に関する良質な商品をグローバルに展開し、安定的に持続できる供給モデルを目指しています。
コンシューマー産業事業
コンシューマー産業事業では、リテイルやアパレル、ヘルスケア、物流などの分野において、デジタル技術を活用し、生活における利便性を向上させることを目的としています。例えば、コンビニなどの小売業、医療機器や福祉用具の提供、食品のパッケージング技術の提供など幅広く展開しています。
電力ソリューション事業
電力ソリューション事業では、2本部2室体制(「ユーティリティーリテイル本部」「海外電力本部」と「Eneco室」「国内電力事業統括室」)から成り立っており、再生可能エネルギーを作り、天候によって変動する電気を調整し、それを消費者に届けることを核として事業を展開しています。
複合都市開発事業
複合都市開発事業では、三菱商事の総合的な力を発揮することで、高機能かつ魅力的な街づくりをしていくための事業です。住宅だけではなく、物流施設や商業施設、空港事業に至るまで、都市開発に関する様々なビジネスを取り扱っています。
三菱商事の業績推移|売上・経常利益
三菱商事の業績推移について、売上と経常利益に特別利益を足し特別損失を差し引いた税引前利益について、以下の表にまとめました。
年度 | 売上(百万円) | 税引前利益(百万円) |
---|---|---|
2021 | 12,884,521 | 253,527 |
2022 | 17,264,828 | 1,293,116 |
2023 | 21,571,9731 | 1,680,631 |
2021年度はコロナの影響により、一時収益は落ち込んでいましたが、2022年からは業績は回復しました。そしてコロナの収束した2023年から業績が膨れ上がり、高い収益力を持っています。
2023年の収益力の上昇は、ひとえに資源価格の高騰にあります。ロシア・ウクライナ戦争の影響により、石油・ガス・鉄・石炭などの供給が急激に高まったことで、それらの開発に携わる三菱商事の収益が向上したと考えられます。
三菱商事の株価推移|過去5年のチャート
コロナやロシア・ウクライナ戦争などの社会問題により、三菱商事の株価推移は過去に比べても上下幅が大きくなっています。ここでは2023年から過去5年の株価チャートの推移を見ていきます。
- 2019〜2020年にかけて株価が下落
- 2021〜2023年にかけて株価が高騰
2019〜2020年にかけて株価が下落
以下の表は2018年から2021年にかけての株価チャートです。
引用:三菱商事「株価チャート」
2020年はコロナが最も深刻化した年となります。コロナショックによる経済的な影響は三菱商事に関わらず多くの企業に及びました。三菱商事の場合はコロナによる人や物の流れの停滞で、金属価格の下落や車の販売数の低下などが起こり、株価の下落に繋がったと考えられます。
この株価の下落により、三菱商事はそれまで維持していた業界首位を伊藤忠商事に奪われてしまいます。
2021〜2023年にかけて株価が高騰
以下の表は2021年から2023年にかけての株価チャートです。
引用:三菱商事「株価チャート」
コロナが収束してからは右肩上がりで株価が高騰しています。業績回復だけでは止まらず、その後の円安や資源高という追い風に助けられたこともあり、コロナショック以前よりも大幅な増収による効果だと考えられます。
さらに三菱商事の株価がこれほどまでに右肩上がりで高騰したのには、投資の神とも名高いウォーレンバフェットが、三菱商事の株を大量に購入したことも要因の1つです。
三菱商事の株主還元|配当・自社株買い
株を購入するにあたって、重要なのが株主優待や配当金などの株主還元です。三菱商事はここ最近大きく株価も変動してしまいましたが、配当や自社株買いについてはどのような推移が見られるのでしょうか。ここでは三菱商事の配当・自社株買いについて紹介していきます。
- 三菱商事の一株配当・配当利回り推移
- 三菱商事の自社株買い推移
三菱商事の一株配当・配当利回り推移
以下にIRBANKにおける三菱商事の配当金推移を表にしてまとめました。
年度 | 中間 | 期末 | 合計 | 利回り(%) |
---|---|---|---|---|
2020 | 64 | 68 | 132 | 5.76 |
2021 | 67 | 67 | 134 | 4.28 |
2022 | 71 | 79 | 150 | 3.26 |
2023 | 77 | 103 | 180 | 3.79 |
コロナショック中でも、三菱商事は配当を実施していました。そこから2023年の現在まで連続増配を繰り返し、2023年の期末配当ではついに実績100を超え、合計で1株180まで上がりました。三菱商事は2024年の配当予想を、中間・期末共に100としており、まだまだ増配の気配を強めています。
2024年の増配の発表により、三菱商事は8期連続増配を達成しており、株式市場では一気に注目を集めています。
三菱商事の自社株買い推移
以下に三菱商事が自社株買いを実施した年度の総額を表にしてまとめました。
2014年 | 599億9991万 |
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2015年 +399億9989万 | 999億9980万 |
2020年 | 2999億9999万 |
2022年 | 699億9991万 |
2023年 +2149億9912万 | 2849億9904万 |
三菱商事はさらに2023年から2024年にかけ、総額3000億円を上限に設定した上で、自社株買いをすることを発表しました。取得期間は5月10日から12月31日を予定しており、取得した株式は2024年1月31日に全て消却する旨も公開している。
ここから分かるように、三菱商事は配当金の増配だけではなく、自社株買いも積極的に行い、株主還元に努めています。
三菱商事の株価はなぜ安いか理由を解説
三菱商事の株価はコロナショック以前よりも倍近く高騰していますが、現在のPERは11.4倍となっています。またPBRは1.23倍となり、どちらも徐々に上昇していますが、まだ株価指標的には割安だといえます。
三菱商事の株価が安いのはなぜなのでしょうか。ここでは三菱商事の株価の安さの理由について紹介していきます。
- 世界市況の影響による価格変動が起きやすいから
- 低収益事業を有しており、利益率が低いから
- ESG投資の観点からネガティブな印象を持たれている
世界市況の影響による価格変動が起きやすいから
三菱商事は資源やエネルギー、食品など幅広く事業を展開していますが、その多くが世界市況の影響を受けやすいものです。
現在はロシア・ウクライナの問題によりさまざまな資源の需要が高まり、価格が高騰したことで三菱商事の業績は大幅に向上しています。コロナショックによる業績悪化からも完全に立ち直り、今後も業績が向上していくことが期待されています。
一方で、今後の世界市況の変化によっては、三菱商事の株価が急激に下落することもありえます。投資家にとって世界市況によって株価にも影響が出やすい三菱商事の株は手が出しづらく、結果破竹の勢いで業績を伸ばしているのにも関わらず、株価指標上では安くなっているのです。
低収益事業を有しており、利益率が低いから
三菱商事は総合商社であり、多くの事業を有していますが、その中には低収益事業も含まれています。投資家の観点から見れば、低収益事業を有しているのは企業としての効率が悪いという評価になります。
また三菱商事は商社であり、商品を仕入れて販売するという形であるため、利益が伸び辛くなっています。これは製造業のように新しく開発し、販売価格を高めるといったことができないためです。
利益率が低くなると、利益余剰金も減少し、株主還元の期待が低くなります。三菱商事の場合はさらに利益の伸び辛さも懸念され、株価が安くなっているのだと考えられます。
ESG投資の観点からネガティブな印象を持たれている
投資家の中には三菱商事をESG投資の観点からネガティブな印象を持っている人もいます。
ESG投資とは環境・社会・企業統治の3つの視点から投資先を考えるもので、三菱商事の事業が現代のESG投資としてはそぐわないと考えられていることが株価の安値に繋がっています。
三菱事業は多くの資源事業で利益を上げていますが、中でも石炭で高い利益を上げているというイメージが投資家の中にはあり、それが現代の脱炭素の流れに沿っていないと判断されてしまっているのです。
資源ビジネスは常に環境問題と向き合う必要があるために、批判されてしまうリスクがあります。こうしたネガティブなイメージが三菱商事の株価バリュエーションを極端に下げている要因となっています。
三菱商事の株価に対する投資家の口コミ
三菱商事に対する投資家の評価はさまざまです。しかし現在の資源高騰による業績の向上が影響したことで、多くの投資家から注目を集めています。ここでは三菱商事に対する投資家の口コミを紹介していきます。
ウクライナの復興支援が本格化したら、もう少し上がるじゃろう!この4月に悩んだ末に買えなかったことが悔やまれる‼️
引用:Yahoo!ファイナンス
リーマンショック後に三菱商事の株価が半年で3950円から923円まで落ちた恐怖体験から今後あの様な暴落があるとワイは商事と物産しか持ちきる自信がない。
引用:X
三菱商事はバフェット効果と昨年の資源高で1兆円以上の利益を出し、最も勢いがある企業の一つだと思います!5年前の株価と比較すると株価は約2.5倍になっており、大型株としてあまりない上昇幅です。また、今後も事業が成長していくことが予想されるので、引き続き楽しみな銘柄だと思います
引用:X
ほぼ事前観測通りの三菱商事の株価は、今後の商社セクターの動きを占う上で重要だよなあ。
出尽くしでここで終わるか、更に物色されるのか。引用:X
バフェットからの手紙が更新されてたけど、保有株の時価TOP15社に伊藤忠が入ってたね昨年末で5.1%の保有、今後に注視したい
最近、三菱商事の株価も上がってきているし、日本企業が複数社載るという事も想定できるそうなれば海外投資家の評価も変わってくるかな引用:X
資源価格の高騰の他、バフェットが三菱商事の株を買ったことで、その勢いに乗り株を購入している投資家もいるようです。今後の世界市況から考えて、三菱商事の株価上昇を期待している人も多い中、下落のリスクによって判断に迷っている人も見受けられます。
さらに日本投資家だけではなく、海外投資家による三菱商事の株購入も急増しており、今後の三菱商事の動向には世界中から注目と期待が寄せられています。
三菱商事の株価は今後どうなる?
三菱商事の今後の動向は現在多くの投資家から注目を集めています。その事業の多くは世界市況に強く影響を受けてしまうため、当然急な下落のリスクもありますが、今後の株価はどうなるのでしょうか。ここでは今後の三菱商事の株価について解説していきます。
- 資源価格の高騰により、さらに業績が伸びる可能性
- EV電気自動車の普及によって、業績が伸びる可能性
資源価格の高騰により、さらに業績が伸びる可能性
三菱商事の株価が上昇する一番の理由となるのが資源価格の高騰です。特に三菱商事では鉄や銅、原料炭などで大きな利益を出しているので、金属関連の需要の変化によって株価は大きく変動するでしょう。
現在はコロナの自粛が解禁されたことで、経済活動が活発になっており、その影響で金属関連の需要も高まり、価格が高騰しています。
未だ世界中で建設やインフラ整備が多く展開され、金属需要は益々高まっているので、今後も金属関連の需要が高まることが期待できるでしょう。
EV電気自動車の普及によって、業績が伸びる可能性
三菱商事の金属資源事業では、2021年から電化・アルミ・電池原料に力を入れています。これは今後社会に多く普及するであろうEV電気自動車のことを見据えたものだと考えられます。
EV電気自動車が今ある自動車に代わり一般的なものになっていくとすると、見込まれる利益というのは計り知れないものになるでしょう。
今後仮に金属資源の高騰が収束し、需要が高まらなくなってしまったとしても、EV電気自動車事業によってさらに業績を伸ばす可能性があります。
三菱商事の業績・株価・配当についてまとめ
現在飛ぶ鳥を落とす勢いで業績を伸ばしている三菱商事ですが、その株価は未だ株価指標的には安く、投資家の注目を集めています。
本記事ではそんな三菱商事の株価が安い理由や、今後の株価に関する予想などを紹介しました。
三菱商事は資源事業の利益割合が多く、世界市況の変化によって株価にも影響が出ます。しかし投資の神とされているバフェット氏による大量購入や資源価格の高騰などで、現在三菱商事の株は世界中から購入されています。
今後の三菱商事の動向は日本だけではなく世界中から注目されることでしょう。
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