住友林業の企業概要
住友林業とは、社名の通り住友グループに属し、林業を祖業とする企業です。その始まりは古く1691年で、住友グループが営んでいた銅山事業で傷ついた環境を復興する植林事業が祖業です。その後、木材に関する上流である林業から、下流の木材住宅まで手掛ける企業となりました。
企業概要は下表の通りです。
企業名 | 住友林業株式会社 |
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設立 | 1948年2月20日 創業は1691年(元禄4年) |
資本金 | 50,074百万円(2022年12月31日時点) |
従業員数 | 連結:21,948/単体:5,139(2022年度) |
住友林業の事業内容
住友林業の事業内容は、木材に関して幅広いものとなっています。また、国内だけでなくアメリカ等海外でも事業展開しており、業績面では海外が主力と言えます。ここでは、個別の事業について説明します。
- 資源環境事業
- 木材建材事業
- 住宅事業
- 海外住宅・建築・不動産事業
- 生活サービス事業
資源環境事業
資源環境事業では、国内外の森林事業、及び木材を利用したバイオマス発電を展開しています。国内の森林事業では、約4.8万ヘクタールの社有林を所有し、これは日本国土の約800 分の1にあたる広大な面積です。
住友林業は祖業が銅山開発による公害からの復興であったことから、現在は環境保護活動に積極的であり、バイオマス発電の環境エネルギー事業はその表れとなっています。
木材建材事業
木材建材事業は、木材建材を国内外に提供する商社としての活動や、建具、内装建材、階段部材等を製造する事業を指します。住友林業フォレストサービス、住友林業クレスト等のグループ会社と連携し、製造から販売までをカバーしています。
また環境保護への取組みを進める企業であることから、木材の調達から運搬、廃棄までの全行程におけるCO2排出量を計測するソフトウェアの販売も手掛けています。
住宅事業
住宅事業は広く知られており、住宅展示場で住友林業が手掛けるモデルハウスを見学したことがある方もいるでしょう。木材をふんだんに使用した戸建注文住宅事業や、コンセプトを統一した戸建が並ぶ街づくり、リフォーム、リノベーション等を行なっています。戸建注文住宅に付随して、用地の販売等の不動産仲介事業も手掛けています。
海外住宅・建築・不動産事業
住友林業における海外住宅、不動産事業は、2022年度(2022年1月1日から2022年12月31日)の売上ベースでは50%以上、経常利益ベースでは80%を超えており、収益面での屋台骨と言えます。アメリカを中心に、現在ではオーストラリア、アジアでも事業展開しています。
住友林業の業績や今後の見通しを分析する上では、海外、特にアメリカの住宅事情を観察することが重要になります。
生活サービス事業
生活サービス事業では、有料老人ホームや在宅介護や、三重県における宿泊事業といった人々の暮らしをサポートする内容を展開しています。それに加え、保険代理店、ゴルフ場運営等も手掛けています。
但し、セグメント別の売上では他の事業に比べて小さく、企業全体の業績や今後の見通しには影響を与えない規模となっています。
住友林業の業績推移|売上・営業利益
住友林業の売上、営業利益等は下のグラフの通りです。2020年が3月と12月で表示されているのは、2020年度に決算時期を変更したためです(出典:住友林業 IR)。
2019年度までは売上が安定的に増加していましたが、2020年度に大きく落ち込んでいます。これは2019年12月に初めて症例が報告された新型コロナウイルスの影響による経済全体の低迷によるものです。2021年度に入ると、需要の持ち直し等によって業績が回復しています。
出典:業績ハイライト|住友林業
落ち込みの影響をより詳細にセグメント別に売上推移で見てみると、住宅・建築事業と木材建材事業で影響が大きいことが分かります。
出典:業績ハイライト|住友林業
国土交通省の発表する住宅着工統計を見てみると、下のグラフの通り2020年(令和2年)には全体的に住宅市場が低迷していることが分かります。
住友林業の株価推移|過去10年のチャート
住友林業の過去10年における株価チャートを確認してみます。やはり住友林業も新型コロナウイルスの影響を受けており、株価チャートは大きくコロナ前とコロナ後でその傾向を分けることができます。
- 2014年〜2020年にかけて株価が横ばい
- 2020年〜2023年にかけて株価が高騰
2014年〜2020年にかけて株価が横ばい
2014年から2019年までは右肩上がりではありますが、大きな上昇はなく横ばい傾向を示し、その後新型コロナウイルスの影響を受けて下落しています。新型コロナウイルスはグローバルで経済低迷という影響を与えたので、国内でも海外でも収益を獲得していた住友林業にはダメージを与えました。
但し、新型コロナウイルスによる影響は蔓延初期に限定され、結果として住友林業にとって追い風となりました。後段で株価にプラスの影響を与えた要因を取り上げてみます。
出典:Yahoo!ファイナンス
2020年〜2023年にかけて株価が高騰
2020年以降、住友林業の株価は2倍以上に跳ね上がっています。成長する事業と安定した株主還元施策をエンジンに、現在も好調を維持しています。
出典:Yahoo!ファイナンス
ここでもう一度セグメント別の業績推移を確認しましょう。2021年度にそれぞれのセグメントで売上が急拡大しており、これが株価上昇の要因となりました。それぞれのセグメントにおいて、どのような背景から業績改善につながったのか、詳細は、のちの項でご説明します。
出典:業績ハイライト|住友林業
住友林業の株主還元|一株配当・配当利回り推移
住友林業の株主還元施策については、継続的、安定的な配当が基本となります。自社株買い等の踏み込んだ施策については、2023年12月のアナリスト・機関投資家説明会において、将来的な実施の可能性を否定はしていませんが、当面は行わない方針です。(出典:住友林業2023年12月期第2四半期決算質疑応答)
配当の推移は以下の通り、安定しており、業績の拡大に応じて配当金が増加しています。これも人気銘柄となる理由の1つでしょう。
配当性向は2022年度において22.98%となっており、日本企業の平均である30〜40%と比べると低いものとなっています。また、配当利回りは下のグラフのようには3.0%前後で推移しており、プライム市場で配当がある企業の平均2.03%よりは高くなっています。(出典:日本取引所グループ)
出典:みんかぶ
住友林業の株価が上昇した理由を解説
住友林業の株価はこの数年で2倍に上昇しました。その理由を、業績が伸長した海外住宅・不動産事業、木材建材事業、住宅・建築事業のそれぞれのセグメント別に考察します。
- アメリカの住宅価格上昇が海外業績の伸長に貢献
- 2021年以降の木材価格上昇が売上に寄与
- 国内の郊外における住宅需要が増加
アメリカの住宅価格上昇が海外業績の伸長に貢献
住友林業にとって海外住宅・不動産事業は経常利益の80%を占め、収益に与える影響が大きいです。つまりアメリカの住宅市況が重要なポイントです。
アメリカの住宅価格指数について下のチャートを参照すると、2020年以降住宅価格が上昇していることが分かります。これが住友林業の業績回復を後押ししました。実際、海外住宅・不動産事業の売上は、2021年度に前年の353,371百万円から644,573百万円と、80%増を記録しました。
経常利益も同様に44,032百万円から104,334百万円となり、これが株価の上昇につながったことが分かります。
2021年以降の木材価格上昇が売上に寄与
木材建材事業については、木材価格の上昇が業績改善に影響しています。2021年3月以降、特に住宅建材の梁や土台に使う木材の需要が急上昇し、それに応じて価格も上昇しました。経済産業省の調査でも、下グラフの通り国内の木材価格が2021年以降上昇していることが確認できます。
出典:経済産業省
日本は、木材の約7割を輸入に頼っていますが、輸入木材の価格も上昇しました。木材全体の価格が上がったこの現象は「ウッドショック」と呼ばれています。
出典:経済産業省
木材の製造から販売まで手掛ける住友林業にとっては、ウッドショックは売上と利益の拡大に繋がり、株価の上昇にも寄与しました。
国内の郊外における住宅需要が増加
国内の住宅は、新型コロナウイルス後に郊外エリアで需要が増加しました。住宅着工件数は以下グラフ(再掲)の通り、2021年(令和3年)以降伸びています。
出典:建築着工統計調査報告書
ニッセイ基礎研究所が住民基本台帳をもとに作成した資料によれば、東京23区は2021年に転出と転入が逆転し、人口が郊外に移動したことが明確です。
出典:ニッセイ基礎研究所
投資家やアナリストが、これらの情報をもとに住友林業の業績拡大を予測し、人気銘柄となったことがうかがえます。特に、新型コロナウイルスの影響下における株式市場では銘柄の選別が行われ、特定の銘柄に資金が集まりました。
住友林業の株価に対する投資家の口コミ
実際に住友林業の株式を保持している投資家の口コミからその評判を確認してみましょう。
口コミ全体の傾向としては、今後も上昇することを期待している投稿が多く見受けられました。また、期末の権利確定日が年末であったことから、その時期に売買が活発化しており、口コミ数も増加していました。前述の通り、配当が増加傾向にあることから、配当狙いの投資家も多くいたことでしょう。
それに加え、収益の基盤となっているアメリカにおける今後の金利の動きを気にかける投稿も散見されます。金利は今後の見通しを分析する上で重要なポイントですので、次項でその解説を行います。
住友林業の株価は今後どうなる?将来性を解説
住友林業の株価は今後どうなるかということについて、想定シナリオを置いて考察してみます。株価に大きな影響を与えると考えられる要素は、アメリカの住宅事情、及び国内における木材の需要となりますので、その観点で分析します。
- アメリカの利下げによる住宅需要の増加に期待
- 国内木材への需要増加が継続見込み
アメリカの利下げによる住宅需要の増加に期待
2023年に入ってアメリカの住宅事情はあまり良くない状況です。下のグラフは、アメリカにおける住宅着工件数が伸び悩んでいることを示しています。この原因は、米国連邦準備制度理事会(FRB)が進めてきた利上げによるもので、住宅ローン金利も上昇したことから需要が低迷しました。
出典:ニッセイ基礎研究所
ただ、FRBが2023年12月12日に開いた会合において利上げが見送られ、2024年に利下げが行われる見通しです(出典:NHK ニュース)。利下げにより住宅ローン金利の設定も下がることになれば、住宅需要が復活する可能性があります。
住友林業にとっては、追い風となるため、株価の上昇につながることが期待されます。
国内木材への需要増加が継続見込み
高騰していた木材価格は、農林水産省が発表した最新の情報では落ち着きを見せています。しかし、このことが住友林業の株価が低下する理由にはならないと推察されます。
その理由は、価格が落ち着く傾向とは言えウッドショックの影響で依然高値であることに加え、ロシアによるウクライナ侵攻により、ロシア産木材が輸入されない状態が継続していることもあります。
海外木材の価格も上昇していることから、政府は国内木材の利用を促進しています。林野庁が2009年に、木材の国内自給率を50%まで高めることを発表(出典:林野庁)しており、現在は40%を超えるところまできています。
輸入木材から国内木材への切り替えが今後も継続されることは、住友林業にとって業績拡大の機会であり、株価の上昇につながることが予想されます。
住友林業の業績・株価・配当についてまとめ
ここまで住友林業の株価について、業績や株主還元施策、事業内容とその見通しについて考察してきました。木材を中心とした事業内容や、アメリカにおける事業展開は、今後の株価上昇に期待を持たせるものです。
また、環境保護に積極的な姿勢も、今後投資家にとって重要な評価指標の1つとなる可能性があります。住友林業は、今後有望な銘柄としてポートフォリオに組み込むことは、「あり」だと言えます。
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