楽天の企業概要

楽天の企業概要

楽天とは、ECサービスを主軸としながらも、生活に即した多様なサービスをM&Aとブランドの一体化によって事業範囲を拡大させています。現在日本国内に1億以上、世界で約14億のグループ会員に展開しています。

クレジットカード、銀行、証券、生命保険など、楽天〇〇と名がついたサービスを普段の生活で利用している方も多いでしょう。たとえばクレジットカードを利用することで生まれたポイントを電子マネーで使えるなど、楽天グループ内で経済が回るよう整備されているのが楽天経済圏です。

「ポイントがもらえるから生命保険も楽天(生命)に入ろう」という強力な動機付けになり、楽天グループの成長を牽引しています。

会社名楽天グループ株式会社
(英文社名: Rakuten Group, Inc.)
代表者三木谷浩史
設立年1997年
主要事業EC、金融、通信、デジタルコンテンツ
従業員数単体8,409名・連結32,079名(※2023年12月31日現在、使用人兼務取締役、派遣社員及びアルバイトを除く就業人員ベース)
資本金446,768百万円(2023年12月31日現在)

楽天の主な事業内容

楽天の主な事業内容

楽天は多岐にわたる事業を展開しています。主な事業内容としては、インターネット関連事業、モバイル関連事業、金融関連事業が挙げられます。以下では、それぞれの事業内容について詳しく説明していきます。

ポイント

  • インターネット関連事業
  • モバイル関連事業
  • 金融関連事業

インターネット関連事業

楽天のインターネット関連事業は、Eコマースを中心に展開されています。楽天市場は、多くの小売業者と消費者をつなぐプラットフォームとして、業界内で高いシェアを誇ります。また、デジタルコンテンツの提供や、広告・メディア事業も手がけています。

これらの事業は、楽天の「エコシステム」戦略の一環として、相互に連携しています。

モバイル関連事業

楽天モバイルは、通信インフラを自社で持つことで、低価格かつ高品質な通信サービスを提供しています。さらに、楽天スーパーポイントを活用したサービスも展開しており、他の楽天グループのサービスとの連携も強化されています。

このようにして、楽天はモバイル関連事業においても、顧客獲得コストの最小化やライフタイムバリューの最大化を目指しています。

金融関連事業

楽天の金融関連事業は、クレジットカード、銀行、証券など、多岐にわたります。楽天カードは、国内でのシェアが非常に高く、多くの利用者に支持されています。

また、楽天銀行や楽天証券も、インターネットを活用した新しい金融サービスを提供しており、楽天エコシステム内での相乗効果を生んでいます。そして、これらの金融サービスは、楽天ポイントと密接に連携しています。

例えば、楽天カードでの支払いによって得られる楽天ポイントは、楽天市場での買い物や楽天モバイルの料金支払いにも使用できます。

楽天の業績推移|売上・営業利益

楽天の業績推移
Dennis - stock.adobe.com

楽天グループの2023年通期業績は連結売上で2兆713億円(前年比7.8%)と、27期連続の成長を実現しています。ECやフィンテック事業は従来より引き続き収益源となっています。また広告事業も、2023年の売上収益は2,065億円(前年比12.9%増)と2桁成長を達成しています。ブレーキ事業と言及されることの多いモバイルも、前年比で営業損失の縮小を実現しました。

通期決算および四半期から、2022年以前のモバイル事業を中心とした先行投資の回収がいつまでに達成できるかという点、また、社債の発行や償還のスケジュールに対し財務状況がどうなっていくかが同社の評価を定める基準になってくるでしょう。後述する株価も投資回収の可能性と、今後のファイナンスリスクを天秤に乗せての株価であることは間違いありません。

楽天の株価推移|過去3年のチャート

楽天の株価推移

楽天の株価推移をチャートから見ていきましょう。モバイルへの進出が株価低迷の原因となっていますが、2023年後半から底を脱し、株価が上昇傾向にあります。モバイル単体の状況改善と、ほかの事業分野を含めてグループ全体の業績が評価されていると見ることができます。

ポイント

  • 2021〜2023年にかけて株価が下落
  • 2023〜2024年にかけて株価が上昇

2021〜2023年にかけて株価が下落

楽天の株価推移

2021年から2023年にかけて株価の下落が見られます。楽天モバイルへの先行投資が会社の財務を圧迫するのではないかと報道されたのがこのあたりです。モバイル事業自体は伸びているほか、インフラとしての基地局数も拡大しています。

楽天の経営陣として思い描いた成長スピードに追いついていないという点で評価された株価といえるでしょう。言い換えればコングロマリット企業として複合的な成長がモバイル単体の評価を上回ると市場が判断すれば、楽天グループ全体の株価が上がることを示唆しているチャートともいえます。

2023〜2024年にかけて株価が上昇

楽天の株価推移

2023年から2024年にかけて株価が上昇基調に転じます。目先のファイナンスの脆弱さはあれど、本業が伸びていると評価されたことからの株価推移といえるでしょう。極端な話モバイル単体が改善しないと見込まれれば、KDDIなどのキャリアや新規参入組など事業買収に応じるところは数多くあります。

寡占市場が続く携帯電話業界に対する挑戦として、現時点は三木谷会長の強い意志により展開していますが、今後の可能性も含めて投資家は株式評価をしているといえるでしょう。

楽天の株主還元|配当・自社株買い・株主優待

楽天の株主還元

楽天の株主還元を見ていきましょう。配当や自社株買い、株主優待はどのような制度になっているのでしょうか。注目すべきは今期、配当がストップしていることです。財務状況の悪さを立証しています。

ポイント

  • 楽天の一株配当・配当利回り推移
  • 楽天の自社株買い推移
  • 楽天の株主優待

楽天の一株配当・配当利回り推移

年度一株当たり配当金
(年間)
一株当たり配当金
(株式分割補正後)
2023(第27期期末)0円0円
2022(第26期期末)4.5円4.5円
2021(第25期期末)4.5円4.5円

現時点の楽天で最優先の課題は「有利子負債を増やさないこと」です。そのため2023期は剰余金の配当を行わないことを発表しています。次回の2024年期は未定ですが、早期復配をすることで株価の安定にもつながるため、視野には入っているでしょう。

2020年以前は安定して年間4.5円の配当を実施していました。ホームページからは2003年以後を確認することができます。あくまで最近3年間の処置は緊急的であることが読み取れます。

楽天の自社株買い推移

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買付期間買付方法買付株式数(株)買付総額(円)
2001年5月9日~2001年5月28日店頭市場における買付700674,704,000
2002年8月23日~2002年9月17日信託設定による市場買付4,340474,970,500
2017年2月22日~2017年12月18日東京証券取引所における市場買付81,991,30099,999,911,300

ホームページで公開している楽天の自社株買い一覧です。目を引くのは2017年の買付です。当時の日本経済新聞でも取り上げられており、Yahoo!やAmazonとの競争からこの規模の購入に踏み切ったと三木谷氏がコメントしています。

株価をより向上させるため、楽天経済圏の更なる強化や楽天モバイルへの注力に向かっていったと考えれば、この時期の自社株買いの目的は株安への焦りだったのかもしれません。結果的に、この大型買付が2024年現在時点で最後の自社株買いとなっています。

楽天の株主優待

■第27期 株主優待の内容

  • 楽天グループ株主向け「楽天モバイル」特別優待
  • (音声+データ30GB/月)プランを1年間無料にて提供

株主優待も楽天モバイルの利用権です。これだけ多角的な企業だと、楽天に投資する個人投資家全員がモバイル戦略を支持しているわけではありません。ECとしての楽天と選択制にする考え方もあったと考えられますが、株主優待をモバイルに一本化しています。

楽天グループ全体を通して、楽天モバイルを支援していることがわかります。特設ページにて申し込みを受けた株主に対し、順番にSIMカードを送付します。楽天モバイルへの注力を考えると、この優待は今後も暫く続くのではないでしょうか。

楽天の株価はなぜ安い?下落理由を解説

楽天の株価はなぜ安いか

楽天の株価はなぜ安いのでしょうか。特に2021年から2023年にかけて持続した下落原因を分析します。繰り返しになりますが、この時期は楽天モバイルへの先行投資が大きく嵩み、会社全体のファイナンスにも影響した時期です。

ポイント

  • 楽天モバイルが大型赤字の原因になった
  • ストーリー狂いはレバレッジ企業の宿命
  • 深刻な自己資本比率

楽天モバイルが大型赤字の原因になった

楽天モバイルに多額の先行投資を必要とすることは、挑戦時から経営陣も、また株主も理解していたと思います。寡占市場の続く携帯電話・スマートフォン業界を変えるという大義名分もありました。

ただ大きく会社経営に影響したこととが株価低迷を招いた一つ目の理由です。もうひとつはNTTドコモやKDDIといった競合が既に社会インフラ企業となっており、簡単には倒せないのではないかという懸念が広がったこと。

着実にモバイル事業が浸透していくにつれて、株価も下げ止まりとなっていった印象を受けます。それでも低迷時期が2年続いたのは、あまりに赤字規模が大きかったことが背景にあるでしょう。

ストーリー狂いはレバレッジ企業の宿命

ソフトバンクなどもそうですが、楽天もまた借入金や社債など財務戦略を駆使して会社を成長させる「レバレッジ企業」です。当然、そのなかの施策が大きく狂うことになれば、会社全体への影響力も絶大なものになります。

三木谷氏はじめ幹部にとって想定を超えていたかどうかはわかりませんが、2024年になって上がり始めた株価を見ると、この段階まで粘り強く取り組み続けた「胆力」に拍手を送りたいと思います。

ただ、楽天はモバイル事業だけではありません。タイミングを見てあらたな挑戦をし、同社にとってライトな株主をホールドするか、一旦離れさせるか悩むところでしょう。

深刻な自己資本比率

詳しくは次項で取り上げますが、楽天の自己資本比率はとても低いものとなっています。なお下記資料では、自己比率は「親会社所有者帰属持分比率」となっています。

■楽天の自己資本比率

年度自己資本比率
2021年12月6.5%
2022年12月3.9%
2023年12月3.7%

引用:楽天グループIR

まさに「新たな出資者(資金調達)が無ければ最悪のケースも考えられる状態」を迎えています。これは最新期もそれほど変わらないでしょう。

楽天の株価と自己資本比率がやばい

楽天の株価と自己資本比率がやばい

楽天の株価暴落も気になりますが、もうひとつ留意点とされるのが「自己資本比率」です。株価は一時期半分以上に落ち込み、株式相場を大きく騒がせました。実はその陰で、とうに危険水域といわれているのが自己資本比率です。

ポイント

  • 一時期の株価は600円台まで下落
  • 2023年12月期の自己資本比率は3.7%に

一時期の株価は600円台まで下落

楽天モバイルへの先行投資、といっても、一時期の株価は600円台まで落ち込みました。2019年前後は1,000円から1,200円だったため、約半額まで落ち込んだことになります。2024年現在800円台まで持ち直したものの、このまま500円台に落ちるのではないかと手放した投資家も多いでしょう。

楽天は確かに大企業ですが、このような先行投資のタイミングは株価も変動するため、リスク銘柄として割り切ることも重要だと思います。当然、2024年以降の動きを見ていると、ホールドし続けた果実もまた存在します。個別株ならば、ローリスクの銘柄と組み合わせることで、リスク分散をしていきましょう。

2023年12月期の自己資本比率は3.7%に

楽天の危機を示す数字として、最も懸念されているのが自己資本比率です。2023年12月の自己資本比率は3.7%と、相変わらず危険水域にあることがわかります。同社のホームページにも「2024年のファイナンスは大丈夫です」と書かれているくらいなので、大企業として本来は看過されない状態にあることは間違いありません。

2024年4月、楽天グループはフィンテック事業を軸とした再構築を発表しました。もしかしたら財務状況改善のため、あっと驚く売却や、テコ入れが視野に入っているのかもしれません。投資家としては当面の財務への影響はもちろんのこと、長期的に見たときの楽天グループにどのような影響があるか、注視したいところです。

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楽天の株価に対する投資家の口コミ

楽天の株価に対する投資家の口コミ

楽天の株価に対するSNS上での投資家の口コミを見てみましょう。

楽天G、25日線を割らないね。今日も上がったら反発だね。そもそも、携帯事業以外の業績はかなりいいからね。携帯事業だけが足を引っ張る形での株価だから。携帯事業がうまくいったらとんでもない事になりそう。
#楽天G

引用:X

楽天モバイルで大赤字→身売り→株価暴落
かと思いきや最近は株価が上がってきましたね。

引用:X

楽天の株価まだまだあがるな
もっと買っておけばよかった

引用:X

楽天グループ
金融事業再編。どうなのー?って思ったけど株価はアゲてるから市場的には好感なのか

統合された方が投資するわたし達は確かに便利。期待して待ってます頑張れ楽天

#楽天グループ

引用:X

楽天の株価をみているとお代わり3000億円公募増資も見えてくる、というか絶対社内ではまじめに議論している。今年の年末の社債とドル債の償還とキャッシュフローを考えたら。

このリファイのりきれば携帯事業立て直せる気までしてきた。メインストーリーはKDDI→楽天の買収だけど。。。

引用:X

投資家の声は、モバイルは底を脱したか、先行投資により影響を受けたグループ全体のファイナンスをどのように立て直すかに集中している印象です。既存キャリア大手による買収がもし報道されれば、株価には大きな影響があるのではという指摘も複数ありました。

楽天の株価は今後どうなる?将来性を解説

楽天の今後の株価

楽天の株価は今後どうなるのでしょうか。将来性を解説します。繰り返しになりますが、最大のポイントは楽天モバイルです。赤字幅も縮小してきたように、いよいよ本格的な評価段階に入ります。同社の株価にも大きな影響が見られるでしょう。

ポイント

  • 楽天モバイルが軌道に乗れば株価の大幅上昇も
  • Amazonとの全面戦争となるか

楽天モバイルが軌道に乗れば株価の大幅上昇も

楽天グループとしてはモバイル以外の事業は好調です。モバイルが収益段階に入れば、楽天グループとしての株価も上昇基調に転じることでしょう。問題は全体の財務が楽天モバイルの成長を待ち切れるかという点です。仮に待ちきれないとなれば、モバイルを事業売却し、全体的な構造転換を図るという経営判断になるでしょう。

2024年4月に報じられた金融事業の再編は、モバイルの成長とは別の選択肢を作るための構造セグメント見直しと考えられます。

Amazonとの全面戦争となるか

楽天の最大の競合というべきAmazonが生命保険領域への進出を図っています(2024年現在はペット保険に進出)。ECのみならず、楽天と全面競合の可能性があります。

証券、銀行、キャッシュレスあたりに進出してくると楽天もネックですが、海外勢の蹂躙への嫌悪感も強く、日本の産業群が楽天を旗印にまとまる可能性も無くはありません。投資家としてはその可能性を鑑みておきたいところです。三木谷会長は経済団体のトップになるなど、着々と財界活動におけるポジションを固めている印象があります。

楽天の業績・株価・配当についてまとめ

楽天の株価についてまとめました。楽天モバイルへの先行投資で一時期の株価は急落したものの、2024年に入って挽回している印象が強いです。「先行投資」という言葉がとても相応しい取り組みですが、会社全体の財務が危惧されるほどの状況は予想外だったでしょうか。今後、楽天モバイルが更なる成長をするのか、「答え」が見えることによって株価にも影響があることでしょう。

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