商船三井の企業概要
商船三井とは、三井財閥系列の企業であり海運事業をメインに取り扱っている企業です。
設立は1884年であり、比較的若い企業ですがその規模は大きく、グループ会社は500社以上、保有している運航船舶は697隻にも及びます。
以下は、商船三井の企業概要についてまとめた表です。
商号 | 株式会社 商船三井 Mitsui O.S.K. Lines, Ltd. |
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所在地 | 〒105-8688 東京都港区虎ノ門2丁目1番1号 |
従業員(当社単体) | 1,168名(陸上829名 海上339名) |
グループ会社数 | 509社(連結子会社及び持分法適用会社) |
グループ運航船舶規模 | 697隻 5,067万重量トン(当社及び連結子会社) |
商船三井が提供している海運輸送サービスは、自動車やエネルギー燃料、資材など運ぶものによって分類されており、その他にも非海運事業も積極的に展開しています。
海運事業業界としての売上は、日本郵船に次ぐ2位であり、海運事業において日本を代表する企業の1つといえます。
商船三井の事業内容
商船三井は海運事業を主に取り扱っていますが、その他にもさまざまなジャンルで事業を拡大しています。
ここでは、商船三井が取り扱っている事業内容について紹介していきます。
- ドライバルク事業
- エネルギー事業
- 製品輸送事業
- ウェルビーイングライフ事業
- 関連・その他事業
ドライバルク事業
ドライバルク事業は、鉄鉱石や木材チップ、バイオマス燃料から、肥料、セメント、塩などに至るまで、さまざまな乾貨物を運搬することをメインとした事業です。
各資材の運搬に適した専用船を利用することで、トレードに柔軟で高品質な輸送サービスに寄与しています。
また、船舶に利用する燃料を環境負荷の低いLNGにしていく研究開発にも積極的です。
エネルギー事業
商船三井のエネルギー事業では、世界最大級の船隊とこれまでの輸送ノウハウを活用することで、世界での安定したエネルギー供給に大きく貢献しています。
また、浮体式LNG貯蔵再ガス化設備や、浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備といった海洋事業も手がけており、エネルギー輸送技術を用いながら事業展開に積極的です。
また船員への教育や訓練を徹底することで、ソフト面・ハード面共に高品質なサービスを提供しています。
製品輸送事業
製品輸送事業では、輸送サービスへのニーズが多様化していく現代社会でも、より高品質なサービスを提供するために、高度なネットワークを用いています。
特に自動車輸送サービスは、半世紀を超える実績を誇るパイオニアであり、海運だけではなく陸送や沿岸輸送、その他ターミナル運営に至るまで、地域に密着した専用サービスを提供しています。
ウェルビーイングライフ事業
ウェルビーイングライフ事業では、ウィルビーイング(幸福で肉体的、精神的、社会的すべてにおいて満たされた状態)とライフスタイルに関する人を中心にした新しい価値を創造することを目的とした事業を数々と展開しています。
代表的な事業としては、フェリーやクルーズ事業、そして不動産事業などが挙げられます。
ものを運ぶだけではなく、人の生活や余暇に貢献していくことで、より良い社会を築くことを推進しています。
関連・その他事業
その他の関連事業として、商船三井ではタグボート事業や海事コンサルティング事業も行っています。長年培ってきた海運事業における技術と経営ノウハウを活かし、入出航する船舶のサポート、並びにコンサルティング業も行っています。コンサルティング業では海運事業関連はもちろんですが、その他金融や財務、保険、情報システムといった多種多様なジャンルにも対応しています。
商船三井の業績推移|売上・営業利益
以下は商船三井の業績推移を表す、売上と営業利益のグラフです。
出典:商船三井「財務データ」
商船三井の直近の売上や営業利益は上昇傾向にあります。大きく落ち込んだ2020年ではコロナショックによる影響で経営そのものが停滞し、営業利益は赤字になっています。
その後コロナが収束するにつれて、停滞していた分の反動もあって、輸送サービスの需要が急上昇した結果、海運市況で値上がりが起こり、売上と営業利益がV字回復したと考えられます。
2022年では営業利益率は6.7%まで上昇し、コロナ以前よりも大きく跳ね上がる状況となりました。海運事業は世界景況によって業績が大きく左右するといわれていますが、コロナから現在に至るまで、まさにその効果が顕著に表れたと考えられます。
商船三井の株価推移|過去5年のチャート
コロナ収束によって経済活動が活発化するにつれて、物流需要も高まり、業績は大きく向上した商船三井ですが、株価チャートはどう推移しているのでしょうか。
ここでは商船三井の過去5年分のチャートから、株価推移について解説していきます。
- 2019〜2022年にかけて株価が上昇
- 2022年〜2023年にかけて株価が横ばい
2019〜2022年にかけて株価が上昇
2019年からコロナが流行するまでは横ばいが続いていましたが、コロナショックによる影響で一時下落となっています。
そこからコロナが収束するにつれて、物流の特需により業績の回復、また商船三井はそのタイミングで配当金の増配をしているため、多くの投資家の好感を得ることができました。
その後の株価は高水準で継続しています。一時急落する場面もありましたがが、2019年度と比べると、全体的に株価は3倍近い値段となっています。
2022年〜2023年にかけて株価が横ばい
2022年以降の株価は全体的に高水準で横ばいとなっていますが、ピンポイントで急落している場面がいくつか見受けられます。
コロナが収束したことで経済活動が再開し、輸送サービスの特需によって、貨物賃料が急上昇したため、業績好調が見込まれるとの判断から多くの買いが発生していました。
しかしコロナ一服後の貨物賃料下落の懸念や、配当の権利落ちが意識されたことで、一時株価も急落してしまったのだと考えられます。
とはいえ年単位で見た場合、株価は高水準のまま推移しています。
商船三井の株価が急落した理由を解説
商船三井はコロナ収束の経済活動再開によって大きく業績を伸ばし、株価も高水準で推移していますが、一時急落した場面もあります。
商船三井の株価は何故急落してしまったのか、その理由を解説していきます。
- コンテナ船の貨物賃料下落が嫌気されたため
- 配当落ちが懸念され利益確定売りが進んだため
コンテナ船の貨物賃料下落が嫌気されたため
グラフは商船三井のドライバルク船市況の推移を表したものです。コロナ収束後、ドライバルク船市況は大きく値上がりを示していますが、2022年になる頃には急落しています。
海運事業の売上の多くは貨物賃料によって大半を占めているため、その料金が下落してしまえば売上や利益も下がってしまいます。
これは直前の特需が収束した反動による荷動きの鈍化が原因として考えられます。2023年現在までコロナ期と同じくらいの値まで落ちた時期もあったため、嫌気した投資家の投資意欲を削いでしまった結果、株価にも影響が出てしまったのだと思われます。
配当落ちが懸念され利益確定売りが進んだため
もう一つ商船三井の株価が下落した理由として、配当の権利落ちが懸念されたことが挙げられます。
元々権利確定日は株価が下落しやすい傾向にあり、これを配当落ちといいます。特に高配当となった株は、配当落ちによる値下がりが大きくなってしまうため、多くの投資家が利益確定売りを進めてしまったため、一時株価が下落したと考えられます。
商船三井の権利確定日は3月末と9月末となっており、2022年の9月株価が急落してしまっています。しかしこれらの急落は一時的なもので、すぐに復調しているので全体的にはまだ高水準な株価を継続しています。
商船三井の株主還元|配当・株式分割
商船三井が株主還元として実施しているのは、配当と株式分割です。特に直近では配当の増配が行われたので、業績向上に伴い株主還元も大きく動いています。
ここでは、商船三井の株主還元の現状について解説していきます。
- 商船三井の一株配当・配当利回り推移
- 商船三井の株式分割
商船三井の一株配当・配当利回り推移
以下のグラフは商船三井の配当の推移を表したものです。
出典:商船三井「配当推移」
商船三井の配当は、ここ最近は増配傾向にありましたが、2023年予想では下落しています。しかしコロナ前と比べると配当は高水準になっており、今後の業績次第ではこの高水準な配当を維持する可能性も考えられます。
2023年以降の配当は、コンテナ船運賃の下落や燃油高などの影響により、2022年よりも業績が落ちる見込みから減配という結果になったものと思われます。
物流事業の需要は落ち着きましたが、商船三井はエネルギー事業にも力を入れており、特にクリーンエネルギーの普及に積極的です。
エネルギー事業が上手くいけば、大きな収益にも繋がるので、今後の株価にも良い影響をもたらす可能性はあります。
商船三井の株式分割
商船三井は自社株式の分割も実施しています。商船三井は2022年に1株につき3株の割合をもって株式を分割しています。
株式分割する目的としては、株式の投資単位あたりの金額を下げることで、投資しやすい環境を作り出すことにあります。こうして投資家層を拡大する狙いがあります。既に所持している株式は3倍となりますが、これは配当が3倍となるわけではなく、1株あたりの配当は3分の1となるので、実質変化はありません。
商船三井の配当はなぜ高い?
商船三井の配当はなぜ高いのでしょうか。
その理由は主にコロナ収束につれて膨張したコンテナ船運賃の高騰ですが、ここでは、さらに配当が高くなった理由について詳しく解説していきます。
- コロナによる特需で大きく業績が伸びたため
- 配当性向がさらに引き上げられたため
- 株主還元を重視する姿勢があるため
コロナによる特需で大きく業績が伸びたため
コロナが収束するにつれて、輸送サービス(コンテナ船)の特需が起こり、商船三井は大きく売上を伸ばしています。これは、商船三井の業績推移を見れば明らかでしょう。
なぜコロナで特需が発生したのかというと、コロナによる経済活動の鈍化が港湾の人手不足を引き起こし、物を運ぶ主体が減少してしまったことで、コンテナ船の運賃が急上昇したからです。
そして売り上げが伸びたことで1株あたりの利益も大きく伸び、結果配当金の増配に繋がりました。
配当性向がさらに引き上げられたため
商船三井は配当性向が高いことでも有名です。
配当性向とは、当期純利益に占める年間の配当金の割合における指標であり、この配当性向が高くなればなるほど、株主に還元される配当金も高くなる仕組みです。
商船三井はもともと配当性向が25%と高めでしたが、業績好調の影響もあり、2023年には配当性向が30%に引き上げられています。
この配当性向が高くなることは、単に配当金が高くなるというわけではなく、もし今後急激に業績が悪化しても、配当性向が高いためにある程度の配当金は期待できるという利点もあります。
参考:商船三井「配当方針」
株主還元を重視する姿勢があるため
商船三井の配当が高くなった要因は、業績の好調によるものが大きいですが、そもそも株主還元を重視している企業であることも理由の1つです。
一般的な企業では、余剰利益については貯め込むことが多いですが、商船三井は経営方針の1つとして、株主への利益還元を優先していることもあり、利益が増加すればするほど株主の利益にも繋がります。
企業側が株主への利益還元を優先するのは、企業価値を高める他、投資家が離れないようにする狙いがあると思われます。特に商船三井の取り扱う輸送事業は、世界景況に大きく左右されてしまいます。
コロナのように業績が好転する場合もありますが、急な減益も当然可能性として考えられるので、事業投資に積極的な商船三井としては、株主への利益還元を優先することが基本方針となっています。
商船三井の株価に対する投資家の口コミ
商船三井の株価はコロナ禍以前と比べると高水準であり、配当も増配傾向にあります。今後のコンテナ船運賃下落の影響も懸念されますが、実際の投資家からの評価はどうなっているのでしょうか。
ここでは、最近の投資家の口コミについて紹介していきます。
株価上がってるうえに、9月分の配当がたくさんはいってきて嬉しいな。商船三井とKDD Iの配当金が多かった。来年のNISA枠一杯使うため、最近、株買うのセーブしてる。積立NISAは、月10万で買付登録しといた。
引用:X
商船三井さん、先日からスエズ運河で武装組織が暴れてるから運賃上昇が期待されて株価が上がってました。
こうゆう短期的な業績影響で値上がりした場合、どこかで下がるので先週空売り入れたら今日爆下がり。
チャートは大きな波を形成してますので、うまく乗りこなせるようにします!船だけに引用:X
半年ぐらい前に配当が良いと聞いたので商船三井の株を100株だけ購入。
昨日に計算書が届いて配当金は11,000円とのこと。
悪くない。
株価も一株3500ぐらいで買ったのが今は4122か。んー。。
もっと買ってりゃ良かった。。
いや、そんな勇気あったら今頃は大金持ちか破綻かいずれかやろね
バランス大事引用:X
NISAで商船三井と郵船保有です
株価調子良いですねえ 300だと配当も大きいですね、いいな
100ですが6月の配当金みると26,000円 今回11,000円...
また戻してくれたらなあ引用:X
いよいよ配当金の時期になりましたね!
トップはバリバリの含み損
商船三井でした
バルチック上がってきて株価が
上がってきているので頑張って欲しい引用:X
商船三井は株主還元に積極的な姿勢を見せており、直近の増配傾向から多くの投資家から注目を集めています。
しかし一方で、世界景況の影響が強く出てしまう商船三井の株を、最も価格が跳ね上がった時期に売りに出せなかった投資家が後悔しつつも次の機会を窺っているといった様子です。
今後の業績次第では、今の高水準を維持できる可能性もあるので、今は短期的な運用というよりは長期的観点で運用している投資家が多い印象です。
商船三井の株価は今後どうなるか将来性を予想
商船三井の株価は今後どうなるのか、将来性はあるのでしょうか。
一時期株価が下落した理由は、コンテナ船運賃の下落と、配当落ちを意識したことが主な理由でしたが、ここ5年で見ると依然商船三井の株価は高水準といえます。
この株価はこの先も持続していくのか、その将来性について予想していきます。
- 新たな事業で成功すれば、業績安定化も見込める
- 円安が進めば、業績にポジティブな影響を与え株価上昇
新たな事業で成功すれば、業績安定化も見込める
商船三井における売上の多くを占めているのはコンテナ船の運賃ですが、これだけを主軸とした場合、世界景況に左右される形となるので、基盤としては不安定な状態といえます。
そこで商船三井はその構造を脱却するべく新しい軸となる事業を計画しています。
その中で有力なものとしては、エネルギー事業の拡大があります。船舶燃料をクリーンエネルギーにする整備が進められており、これが普及すれば大きな利益に繋がる事業となるでしょう。
円安が進めば、業績にポジティブな影響を与え株価上昇
2023年では以下のグラフのように、円安の状況が続いています。
商船三井の株価上昇の要因にもなっており、今後円安が継続するのであれば、海運事業である商船三井の利益も高水準を継続することができるでしょう。
株主還元に積極的な商船三井であれば、利益が上がれば上がるほど、還元される配当も増配されます。しかし逆に円高となってしまえば、一気に業績に悪影響を及ぼし、減配となるリスクもあるので、運用する際は注意が必要です。
商船三井の業績・株価・配当についてまとめ
商船三井はコロナによる影響で、人手不足となった結果、海運市況で値上がりが起こり、業績を大きく伸ばしました。それに伴い配当金も大きく増配したことで、高配当な株となっています。
利益を株主に還元する経営方針をとっているので、利益が高いうちは利回りも高くなりますが、今後の世界景況に大きく左右されるので、リスクも相応にあると考えて運用することをおすすめします。
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