日本製鉄の企業概要
日本製鉄とは製鉄業を事業の中心とした企業です。
祖業の製鉄業のほかにもプラント建設、化学分野、システム開発と複数の分野で展開しています。それぞれの事業分野の特徴を見ていきましょう。
商号 | 日本製鉄株式会社(読み仮名:にっぽんせいてつ) |
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本社 | 東京都千代田区丸の内2-6-1 |
代表者 | 代表取締役社長 橋本 英二 |
事業内容 | 製鉄、エンジニアリング、ケミカル・マテリアル、システムソリューション |
従業員数 | 10万6068名(2023年3月31日現在:連結) |
日本製鉄の事業内容
日本製鉄の事業内容を分析します。祖業である製鉄業のほかにも、製鉄のノウハウを活用した複数の事業分野が展開され、業績を支えています。それぞれの事業分野について見ていきましょう。
- 製鉄事業
- エンジニアリング事業
- ケミカル・マテリアル事業
- システムソリューション事業
製鉄事業
日本製鉄の祖業です。
もともとは明治維新の殖産興業時に、北九州にて八幡製鉄所としてスタートしました。
重工業に活用する厚板、鉄骨造の住宅などで必要不可欠な鉄型建材、インフラに欠かせない鋼管など、鉄と一言で言っても幅広いジャンルに分かれています。
チタンやステンレスなど、一般消費者に馴染みのある素材も製鉄の一種として、同社で取り扱っています。
エンジニアリング事業
製鉄のノウハウを活用して、規模の大きい建造物事業を手掛けています。製鉄・環境・エネルギー関連のプラント建設から、超高層建築物や巨大鋼構造物など多様な領域で、国内外のインフラを支えています。
日本にとどまらず、経済発展のただなかを迎えている諸外国においても高いニーズのある事業です。
反面、日本国内における高速道路や新幹線など、建設後に数十年が経過して大規模や保守が近づいている建造物の工事にも対応力を示しています。
ケミカル・マテリアル事業
製鉄プロセスからはさまざまな素材の生成機会が生まれます。
炭素材料や化学品、金属箔や潤滑材料、さらには液晶ディスプレイの材料となるエスファインなど多岐にわたります。
これらを活用素材として提供するのがケミカル・マテリアル事業です。従来の重工業に留まらず、環境を重視したサステナビリティ型素材の開発・提供も進んでいます。
システムソリューション事業
製鉄の安定的な生産には高機能のシステムが必要です。
日本製鉄では長年、製鉄業のシステムを24時間365日支えてきたシステム構築の実績で、製造業に加えて金融・流通・公共など、幅広い分野に先進的ITを活用した最適、かつ安定したシステムを提供しています。
DXやIOTのキーワードから派生して今後も更なる発展が期待できる分野といえます。
日本製鉄の業績推移|売上・営業利益
引用:日本製鉄
最新通期の2022年には、当期純利益が過去最高の6,940億円を記録しています。
決算資料を見ると意外にも海外ではなく、国内における原材料の上昇を販売価格に反映し、かつ利益構造を追求したために利益幅が大きくなった説明がされています。
ただ決算資料では、次期2023年度に原材料の調整と進んだ円安を踏まえた為替調整が予定されているため、2022年は先出し分の利益確定という見方もできます。
また2022年分の好業績には、当期の設備休止関連損失が328億円と低いことも影響しています。
2021年の設備休止関連損失は1,572億円だったので、前年と比較してかなり減少しました。翌年2023年には700億円が想定されています。
毎期ごとの設備休止関連損失にもよりますが、2023年度の関連損失が高くなっても引き続き利益幅は維持できそうな印象です。
日本製鉄の株価推移|過去3年のチャート
日本製鉄の株価推移をチャートから見ていきましょう。時期によって株価の上下幅はありますが、長期的なレートとしては伸長している株価チャートといえます。素材価格の高騰や円安傾向と、日本国内における実績の維持が背景となっているようです。
- 2021年〜2022年にかけて株価が上昇
- 2021年〜2022年にかけて株価が横ばい
2021年〜2022年にかけて株価が上昇
引用:Yahoo!ファイナンス
過去3年のチャートを見るとなだらかな成長曲線を描いています。
特に2023年の年明けから春にかけての上昇が著しいですが、この時期は決算も無ければ、際立ったニュースリリースもありません。
おそらく日本国内の株価全体の伸び、もしくは重工業領域の伸びが同社の後押しとなった影響が考えられるでしょう。
春先に伸びが落ち着いてからも株価は維持され、2022年までには縁が遠かった3,000円台をキープできるようになりました。
同社のニュースリリースを見ると、頻繁な発信を意識していることがわかります。市場の株価も上昇しているとはいえ、手堅いIRの結果といえるでしょう。
2021年〜2022年にかけて株価が横ばい
引用:Yahoo!ファイナンス
2023年の上昇基調を迎えるまでは、上がっては下がっての印象が強いです。
2021年から2022年の2年間を区切って見ると、おおよそ2カ月から3カ月のスパンで株価が上下していることがわかります。
コーポレートで発信の多い同社のため、事業や四半期決算を見て買い時と判断する投資と、売り時と判断する正反対の投資家がいることが予測できます。
もともと重工業のインフラ銘柄は株価の上下が少ない特徴があります。
インフラ銘柄の大手ともいえる日本製鉄がこれほどの変動を見せるのは、複合的な要因があることに疑いはないでしょう。
特に短期レートでは、買い時と売り時の判断が重要です。
日本製鉄の株主還元|配当・株主優待
日本製鉄の株主還元を分析します。同社の配当や株主優待はどのようになっているのでしょうか。配当状況は2020年度と2021年度で、別会社のような配当状況です。詳しく分析していきます。
- 日本製鉄の一株配当・配当利回り推移
- 日本製鉄の株主優待について
日本製鉄の一株配当・配当利回り推移
日本製鉄の一株配当を見ると、20年度以前と21年度以後で別会社のように配当状況が異なります。
21年度以降の好業績を受けて、配当が一気に手厚くなっています。前項にて分析した2023年からの株価の上昇は、少しずれていますが株主還元策とも関係があるかもしれません。
なお上記資料最新通期時点の見通しでしたが、その後発表されたレポートによると2022年度は見通し通り180円、翌年2023年度は更に上昇し、150円以上の年間配当が実現できたことがわかります。
日本製鉄の株主優待について
日本製鉄の株主優待は、見学会・説明会への招待と、そのほかの優待にわかれます。
■見学会・説明会
項目 | 内容 | 案内回数 | 案内対象 |
---|---|---|---|
工場見学会への招待(抽選) | 製鉄所の見学会に招待 | 年2回(3~4月、10~11月) | 所定の時期において1,000株以上所有株主 |
経営概況説明会への招待(抽選) | 大阪および1都市(名古屋・福岡・札幌のいずれか)での開催 | 年1回案内(9月頃) | 所定の時期において1,000株以上所有株主 |
引用:株主優待|日本製鉄
■優待
項目 | 内容 | 案内回数 | 案内対象 |
---|---|---|---|
鹿島アントラーズ観戦招待(抽選) | 鹿島アントラーズのJ1ホームゲームに招待 | 年2回案内(4~8月、8月から12月) | 所定の時期において5,000株以上所有株主 |
紀尾井ホール演奏会招待(抽選) | 紀尾井ホールの定期演奏会に招待 | 年2回案内(4~9月、10~3月) | 所定の時期において5,000株以上所有株主 |
引用:株主優待|日本製鉄
日本製鉄の株価が上昇した理由を解説
日本製鉄の株価が上昇した理由を分析していきます。2020年前後からの大規模赤字を受け、同社の株式評価は著しく下落しました。そこからの3年で強力な経営陣のリーダーシップのもと、進めた構造改革への高評価が株価上昇の形で現れています。
- 手堅い業績の伸長が株価上昇をもたらしている
- 2020年からの大型赤字からの見事な構造改革
- 今井新社長が期待値となって株価に反映されるか
手堅い業績の伸長が株価上昇をもたらしている
第一にいえるのは手堅い業績の伸長です。製鉄などの重工業株は従来、安定して業績が立ちやすいため株価の変動は大きくなく、安定銘柄といわれています。
日本製鉄の規模になると素材価格や為替の影響がありますが、2022年度までは業績好調の後押しになったといえるでしょう。
2023年には設備損失や為替差損を入れると同社が発表しているため、純粋な本業の利益が維持できても、最終的な利益がどうなるのか予断を許さないところです。
株価への影響は否定できないですが、既に発表されているため、投資家にとっては織り込み済みとなる可能性もあります。
2020年からの大型赤字からの見事な構造改革
2020年3月期、日本製鉄は過去最悪となる4315億円の最終赤字を計上しました。
以後構造改革のため製鉄所のシンボルといえる高炉4機を休止し、広島県呉市の大規模工場を閉鎖するなど国内事業の構造改革を断行しました。
2022年からのV字回復からの手堅い事業は、同社の乾坤一擲の事業展開といえます。
業績が回復するとすぐに株主還元を手厚くし、市場価値を安定化させます。
一連の動きは剛腕と称される現任の橋本社長が牽引し、同社の評価を著しく回復させました。不安定な環境変化のなかでの構造改革は、間違いなく賞賛に値するものです。
今井新社長が期待値となって株価に反映されるか
2024年1月に日本製鉄は社長交代を発表しました。
4月1日付で現任の橋本氏が会長兼CEOに就き、新社長には副社長の今井正氏が就任します。
前項の構造改革を牽引した橋本社長が会長となり支える形でデビューする今井新社長には、鉄鋼産業にとって大きな課題となる脱炭素施策が期待されています。
脱炭素は今日事業を展開するにあたって回避できない重要課題であり、日本国内はもとより海外においても重要視されています。
脱炭素への取り組みが進まなければ、海外の機関投資家が一気に株を売り抜けることさえ考えられます。
今井社長は記者会見で、同社の八幡製鉄所と兵庫県姫路市での広畑製鉄所の電炉に脱炭素の要素を組み込むことを発表しています。
日本製鉄の株価に対する投資家の口コミ
日本製鉄が株式関連のSNSでどのような評価をされているでしょうか。
JTは株価持ち直したタイミングで買ったら2ヶ月後の増配発表で一気に跳ねました。
日本製鉄は誰も見向きもしなかった時に自分の勘を信じて買ったら跳ねました。
全銘柄が海外でも稼げる中長期で安定した大型株で、配当下限や累進配当宣言銘柄が多いので、今後の配当金収入も期待できます。引用:X
株価のチェックはしてたけど投資するにはいたってなかったがどうなるか
ちなみに新社長は好感持てる顔してて好きw
日本製鉄の新社長に今井正副社長が就任へ…橋本英二氏は会長に(読売新聞オンライン)引用:X
取り敢えず今月の残りは厳し目にいこう。
理論株価の真ん中よりも低めの株を中心にせめて行こう。
日本製鉄、INPEXが有力候補。
JSRも狙い目ではある。引用:X
USSteel買収は環境課題もセットだな。
還元剤としての石炭(コークス)を如何に減らすか、直接還元鉄DRIなどが対応策。
US Steelの株価は足踏み。
日本製鉄がUSスチール買収、鉄鋼業界の脱炭素化を足止めか(オルタナ)引用:X
さて #日本製鉄 の異様に低いPER(超割安状態)は以前からの話なのか?
図は日本製鉄の株価とPERを示しています(2015/10-2023)
2017年までは普通にPER15前後まで買われていました。しかしコロナ後PERは低いまま推移しています。
株価は業績次第ですが低PERはこの業界の特徴ではありません。引用:X
堅調な株価や業績に加えて、同業であるUSスチールの買収に対するコメントが目立ちます。
これまでと同じ方針で運営し連結に加えていくのか、脱炭素などのサステナビリティの看板取組みとするのか注目されます。
日本製鉄の株価は今後どうなる?将来性を解説
日本製鉄の株価は今後どうなるのでしょうか。将来性を解説していきます。
短期的には今井新社長の描くこれからの同社の将来図、長期的には脱炭素への取り組みが大きなポイントといえるでしょう。
- 今井新社長の所信表明はいつになるか
- 脱炭素の取組みと実行のスピード感に注目
今井新社長の所信表明はいつになるか
4月に就任する今井新社長への期待値はとても大きいといえます。
構造改革が奏功したあとの就任のため、再度大きな赤字に陥らないようにどのような施策を打っていくか、株式相場も期待していることがわかります。
まずは就任後の所信表明です。どの分野に力を入れて、中心に据えていくのか。幹部人事とともに、大きく注目されています。
またここまで同社を牽引した橋本会長が会長職、およびCEOとして残るため、両者の連携にも期待したいところです。
脱炭素の取組みと実行のスピード感に注目
別箇所で言及した通り、今井新社長には脱炭素の取組みが期待されます。とはいえ製鉄業、鉄鋼業という特性上、数年の短期で結果が出る可能性は高くはありません。
恐いのは取組みのスピードが遅いと判断され、欧米の機関投資家に売られることです。
そのため今井社長や経営陣には、どのような理念を以ってサステナビリティに取り組んでいるか、いわゆる経過報告を魅力的なプレゼンテーションで取り組むことが、引き続き株価を伸長させるためのポイントといえるでしょう。
日本製鉄の業績・株価・配当についてまとめ
日本製鉄の株価についてまとめました。大赤字からの業績回復と、手厚い株主還元により著しく市場評価が高まっている銘柄です。
一方で製鉄業界の大きな課題となる脱炭素などのサステナビリティは、企業規模の大きい日本製鉄にとってはとても大きな課題です。
社長交代も含め、どのような姿勢で取り組んでいると市場に評価されていくかによって、同社の株価も大きく左右されることでしょう。
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