エニーカラーの企業概要

エニーカラーの企業概要

エニーカラーとは、VTuber(バーチャルユーチューバー)事業を手掛ける会社です。VTuberとは、二次元のキャラクターがYouTube配信を行うことを指し、生身の人間が配信する「ユーチューバー」とは区別されます。

企業としての特徴は、設立が2017年と比較的最近であること、従業員の平均年齢が30.4歳と若いことが挙げられます。

企業概要は下表の通りです。

(2023年3月末時)

企業名ANYCOLOR株式会社
設立2017年5月2日
資本金225(百万円)(2023/4現在)日本基準
従業員数323人

エニーカラーの事業内容

エニーカラーの事業内容

耳慣れないVTuber事業とはどのようなものか、エニーカラーの事業内容を確認します。独自の事業モデルを築いたことで大きな成長を遂げたことを、個別事業単位で観察してみます。

ポイント

  • にじさんじプロジェクト
  • 海外VTuber事業
  • メディアミックスプロジェクト

にじさんじプロジェクト

エニーカラーのメイン事業であるにじさんじプロジェクトでは、VTuberと呼ばれる架空のキャラクターが映像や音楽の動画配信をYouTube等の動画配信プラットフォームを通じて行ったり、キャラクターの関連グッズ販売を行います。

YouTube配信関連事業を行う企業はUUUM等がありますが、にじさんじプロジェクトの特徴はキャラクターが配信することと、エニーカラーが配信内容の企画からVTuberの選抜まで一貫して手掛けることです。既に存在する配信者を発掘するのではなく、1から作るのです。ライブ配信を行うVTuberはライバーとも呼ばれ、にじさんじプロジェクトには約150名のライバーが所属しています。

にじさんじプロジェクト

海外VTuber事業

日本の漫画やアニメは、エンターテイメントコンテンツとして世界でも影響を持っています。エニーカラーはVTuberの一部は、英語や中国語でゲーム実況の動画配信等を行っており、グローバルでファンを獲得しています。

製造業がグローバル展開しようとすると、現地での用地取得から設備投資まで多額の投資と期間が必要となりますが、コンテンツ配信はその障壁が低く、海外展開しやすい事業と言えます。また、動画配信だけでなくSNS投稿を通じてインフルエンサーとしての影響力を強化しています。

メディアミックスプロジェクト

メディアミックスプロジェクトでは、VTuberのキャラクターを活用した映像やコミック、小説を制作しています。「Lie:verse Liars / リーバース・ライアーズ」というプロジェクトでは、ライブ配信だけでなくX(旧Twitter)でも情報発信を行い、物語に合わせてVTuberが投稿を行っています。

X(旧Twitter)では、VTuberの声優も投稿しており、利用者の趣味趣向に合えば没入できるような工夫がされています。

エニーカラーの業績推移|売上・営業利益

エニーカラーの業績推移

エニーカラーの業績を確認しましょう。下グラフの通り売上、営業利益ともに急成長を遂げていることが分かります。通期でも数値は拡大していますが、前年同期と比較しても伸びていることから、事業拡大が認められます。

エニーカラーの業績推移

また、エンターテイメント事業はコンテンツの制作にかかる費用が他業態に比べて低く、またデジタルコンテンツは複製が容易である特徴があるため、営業利益率が高くなります。事実、下グラフの通りエニーカラーの営業利益率は直近で37.1%となっており、製造業の平均4%(出典:経済産業省 商工業実態基本調査)を大きく上回ります。

エニーカラーの業績推移

エニーカラーの株価推移|過去1.5年のチャート

エニーカラーの株価推移

エニーカラーは2022年6月8日にIPO(新規上場)しているため、株価は約1. 5年分しかありません。中長期の分析はできませんが、短期でも株価チャートには特徴的な動きが見受けられるため、その要因を探ってみます。

ポイント

  • 2022年(新規上場)〜2022年末にかけて株価が上昇
  • 2022年末〜2023年にかけて株価が暴落

2022年(新規上場)〜2022年末にかけて株価が上昇

新規上場時点から株価は約2倍に急上昇しています。日本でVTuber事業を展開する企業はまだ少なく、またコンテンツの企画から手掛けるビジネスモデルに対する期待を受けたことが背景です。

また、業績推移の章で確認した通り売上、利益ともに​拡大したことからも、上場時点から成長マーケットであると認識されていたことが分かります。

エニーカラーの株価推移

また、決算説明会の資料からも VTuberを柱としてグッズやイベント、海外展開等の将来的な事業拡大が期待され、株価上昇につながりました。

エニーカラー

2022年末〜2023年にかけて株価が暴落

株価チャートが示す通り、2022年末にエニーカラーの株価が暴落しています。この暴落理由は後ほどの高で詳細を説明しますが、それ以降株価は低迷しています。

エニーカラーの株価推移

下のチャートは同じ時期で日経平均(ピンク線)と比較したものですが、エニーカラー(青線)は、2024年に入ってからの日本株全体の価格上昇に反して下落傾向を示しています。好調な日本株の動きに乗れていないことは、銘柄個別理由により投資家から避けられている可能性があります。

エニーカラーの株価推移

エニーカラーの株主還元|配当・自社株買い

エニーカラーの株主還元

エニーカラーの株主還元施策について、配当及び自社株買いの動きを確認します。エニーカラーは小型株ですが、プライム市場に上場しているため、自社株買いによる効果が期待できます。

ポイント

  • エニーカラーの一株配当・配当利回り推移
  • エニーカラーの自社株買い推移

エニーカラーの一株配当・配当利回り推移

エニーカラーは過去に配当を実施したことはなく、現在も配当を行っていません。

日本の企業は一般的に株主還元施策として配当を重視してきたと言われています。アメリカのマーケットでは配当に関して二極化しており、初期成長フェーズにある企業は無配であることが多く、一定程度成長すると高配当の施策を取るように方針変更をすることがあります。

エニーカラーは初期成長フェーズのため、配当ではなく企業価値向上による株価上昇を狙っていると想定されます。

エニーカラーの自社株買い推移

エニーカラーは、2023年12月18日に25億円の自社株買いを発表しました。発行済み株式総数の1.43%にあたり、90万株を上限としています。

一般的に自社株買いは株価を上げる効果があり、市場に出回る発行済株式総数が減少することで1株あたりの利益が増えることによりEPS(1株あたり純利益)等の指標が改善し、投資家に歓迎されます。

実際、自社株買い発表翌日12月19日の株価は、前日比5.4%高となりました。

エニーカラーの自社株買い推移

エニーカラーの株価が下落した理由を解説

エニーカラーの株価が下落した理由

エニーカラーの株価は2022年末に大きく下落しました。その理由について解説します。株価の下落は外的要因もありますが、エニーカラーの事業に関しても理由を探ってみます。

ポイント

  • 大株主が大量に株を売り出したこと
  • 投資家からの継続的な成長期待と業績が合致しなかった
  • VTuberマーケットの拡大に懸念があった

大株主が大量に株を売り出したこと

株価急落の原因の1つは、大株主が大量に株式を売り出したことです。その規模は100万株で、大量放出前に市場に流通していた株式は134万株であったことから、そのインパクトはとても大きいものでした。

上場後一定期間は大株主が株式を売り出すことを​禁止(「ロックアップ」と言います)されていますが、2022年末がその期間が切れる時期であったことから、そのタイミングに短期間で放出された大量の株式が株価を大きく下げることにつながりました。

上場して間もなく、期待を集めた段階での大幅な株価下落のため、損失を抱えてしまった投資家も多いと言われています。

投資家からの継続的な成長期待と業績が合致しなかった

2022年末の時点でエニーカラーに何が起きていたかを確認すると、2022年12月15日付のニュースリリースにおいて、下の表の通り業績の上方修正の発表がされています。これだけを見ると良いニュースでむしろ株価は上昇を示すはずです。

エニーカラーの業績予想

しかし、同時に売上の四半期推移を見ると違った側面が浮き上がります。下のグラフにおいて、2023年4月期のQ1(5,931百万円)とQ2(6,042百万円)を足すと半期で約12,000百万円の売上を計上しています。

上方修正した通期の売上が22,500なので、半期で既に半分以上の売上を稼いでしまったことになります。つまり、Q3、Q4における業績の拡大が見込めないという見方もできます。VTuber事業という新しい領域で業績拡大が継続することを期待する投資家にとってはネガティブなニュースとなり、株価下落に繋がったと考えられます。

エニーカラーの売上高推移

VTuberマーケットの拡大に懸念があった

もう1点、同じ決算説明会資料において気になる点があります。下のグラフは、左は所属VTuber数を示し、四半期ごとに増加を示していることからポジティブな情報ですが、右のYouTube​再生時間は​2023年期に入ってから頭打ちとなっています。

エニーカラー

このことが示すのは、ライバーと呼ばれるVTuberの数は増えても1人あたりの試聴される時間は減っていることを示します。

決算説明会資料の情報は2023年3月に発表されたものですので、2022年末の株価下落に直接的に関わるものではありませんが、投資家が再生時間の伸び悩みについてもその時点で情報を得ていれば、上述の業績拡大への失望と合わせ、株式の売却につながったのではないでしょうか。

注目ファンド

詳細な投資分析によるバリュー投資を中心に実践しており、短期的な利益追求ではなく安全性を追求しながら中長期的な利益を求めているヘッジファンド。

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エニーカラーの株価に対する投資家の口コミ

エニーカラーの株価に対する投資家の口コミ

ここからは実際にエニーカラーの株式を保有する投資家の声を口コミから確認してみます。

ここはほんとに他に例がないくらい稼いでる。一人あたりの売上とかすごすぎる。しかも第四半期が今期最大の利益みたいだからまさに今仕込んでおかないとね。数カ月内に4000円台は回復すると見ている。気づいたらだいぶ信用倍率も良化してるしね。あとは事業の多角化をしていけば5桁も見えてくるだろう。また自社株買いくるかもね余剰金みてると。

引用:Yahoo!ファイナンス

VTuber事業ってどうしてもコツコツ積み重ねる形のビジネスになるから
IRやニュースで決算期待値がどっかーんみたいなのが期待できないのが辛いな

大規模になるとリスクの割に堅実なビジネススタイルになるなーって感じるわ

引用:Yahoo!ファイナンス

コンセンサス予想強気ですよね

エニーカラーには期待に応えてもろて!
頑張って欲しいな

引用:Yahoo!ファイナンス

みんな難しい話で体当たりしてるけど、もっと気楽に考えようよ。
わいは久々に推しの歌ってみた聞いて『あぁ〜〜〜、推しの声と歌い方が好きなんじゃぁァァァァァア』ってニッコリしました☺️。

引用:Yahoo!ファイナンス

もうそろそろ1年ボックス圏相場
1年前に比べ業績も大分上がったのに反応が悪い
決算後の上昇でボックスを打ち破ってほしい
頑張れ

引用:Yahoo!ファイナンス

口コミ全般を通しての印象は、事業内容やその見通しに関する言及が他の銘柄と比べて少なく、株価の動きに注目する投稿が多いです。テクニカル分析やローソク足等のトピックについてのやり取りが散見されます。

設立が2017年、上場が2022年と、歴史が浅いことから分析観点が比較的少ないことが理由かもしれません。

また、特定のVTuberを「推す」ファンがエニーカラーの株式を購入していることもあるようです。実際にサービスを利用している人は、銘柄の特色を掴みやすいでしょう。

エニーカラーの株価は今後どうなる?将来性を解説

エニーカラーの今後の株価

株価が低迷するエニーカラーですが、今後の株価はどうなるでしょうか。2024年に入ってからの日本株全体の上昇にも取り残されています。いくつかの観点から将来的な見通しについて考察を行ってみます。

ポイント

  • 海外マーケットの拡大が成功すれば株価上昇
  • メタバース等のデジタル技術との連携による事業拡大

海外マーケットの拡大が成功すれば株価上昇

エニーカラーはいち早く海外に進出しています。海外マーケットでの展開が順調に拡大すれば、今後株価は持ち直す可能性があります。

下のグラフが示す通り、エニーカラーの売上構成において最も貢献しているのはコマース、つまりグッズ等の販売によるものです。コマース領域における海外売上は拡大していることから、今後も注力していくことが予想されます。

エニーカラー

エニーカラーが展開するのは知的財産を使ったIPビジネスであり、海外での成長余地はあるでしょう。現在、海外ではアメリカがメイン市場ですが、アジア等の他国に広げていくことも想定されます。

メタバース等のデジタル技術との連携による事業拡大

世の中のデジタル化が進み、サービスや決済等はオンライン化、デジタル化されています。エニーカラーはYouTube上でのオンライン配信や、コマース事業、イベントを行っていますが、今後メタバースの世界が広がることで、エニーカラーの事業領域は更に大きくなるでしょう。

当然、メタバースのような最新技術が浸透するかどうかは未知数ですが、投資家がこうした技術の発展に対しベットする判断をする場合、有望な銘柄候補の1つとなり得るでしょう。

エニーカラーの業績・株価・配当についてまとめ

エニーカラーの株価について、業績や株主還元施策等から考察しました。将来性解説の章では楽観的な見通しを挙げましたが、動きの早いマーケットであることから無視できないリスクも存在します。例えば海外事業の不調、競合の参入、所属VTuberによる不祥事等です。

所属VTuberによる不祥事は既に発生していることから、今後はVTuberのマネジメント強化も課題でしょう。VTuberマーケットの特性上、急激な成長と急激な衰退の両面があるため、過度な期待が上乗せされた株価となっていないかという点も注意が必要です。

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