JR東日本の企業概要

JR東日本の企業概要

JR東日本とは、日本国有鉄道(国鉄)が6つに分割、民営化されてできた鉄道会社の内の1つです。他5つは北海道、東海、西日本、四国、九州、日本貨物となります。鉄道事業だけでなく、駅周辺の都市開発や不動産、鉄道運行に必要となるシステム等、様々な事業を営んでいます。

企業概要は下表の通りです。

(2023年4月1日時)

企業名東日本旅客鉄道株式会社
East Japan Railway Company
設立1987年4月1日
資本金2,000億円
従業員数46,051人(単体)

JR東日本の事業内容

JR東日本の事業内容

JR東日本の事業は非常に多岐にわたるため、個々の詳細を説明することは難しいですが、セグメント別売上で主たるものは、運輸事業、不動産・ホテル事業、流通サービス事業の3つです。

JR東日本の事業内容

運輸事業は売上の約67%を占め、鉄道やバスの運行に関わるものです。中でも山手線は1日の利用者が多い上位3駅である新宿、渋谷、池袋を通り、稼ぎ頭となっています。

不動産・ホテル事業は売上の約16%であり、民営化した際に国が保有していた不動産も引き継いだことから、その資産を活用して駅やその周辺の都市開発、首都圏や観光地のホテル事業を運営しています。

流通・サービス事業は売上の約14%であり、その事業内容は「グランスタ東京」や主要駅にある「ecute」等の商業施設の運営です。

上記3事業含め、 JR東日本は以下のように非常に多くの事業を推進しています。

  • 旅客鉄道事業
  • 貨物鉄道事業
  • 旅客自動車運送事業
  • 索道業
  • 旅行業
  • 倉庫業
  • 駐車場業
  • 広告業
  • 図書・雑誌の出版業
  • 金融業
  • 前払式支払手段の販売業及びゴルフクラブ会員権、テニスクラブ等のスポーツ施設利用権等の販売業
  • 電気通信事業
  • 情報処理及び情報提供サービス業
  • 損害保険代理業その他の保険媒介代理業
  • 自動車整備業及び石油、ガス等の燃料、自動車用品の販売業
  • 旅行用品、飲食料品、酒類、医薬品、化粧品、日用品雑貨等の小売業
  • 旅館業及び飲食店業
  • 一般土木・建築の設計、工事監理及び工事業
  • 設備工事業
  • 電気供給事業
  • 動産の賃貸業及びイベントに関するチケット販売、クリーニング、写真現像等の取次業
  • 不動産の売買、賃貸、仲介、鑑定及び管理業
  • 輸送用機械器具製造業
  • 精密機械器具及び一般産業用機械器具製造業
  • 看板・標識案内板等の製造・販売業
  • 遊園地、体育施設、文化施設、学習塾等の教育施設、映画館等の経営
  • 清涼飲料水、酒類の製造及び水産物の加工・販売業
  • 骨材・石工品及びコンクリート杭・ブロック等の製造・販売業

JR東日本の業績推移|売上・営業利益

JR東日本の業績推移

JR東日本は巨大なインフラ事業であることから、新幹線開業等のビッグイベントがない限りは安定した業績を維持します。下の営業収益(売上)と営業利益のグラフでは2020年3月期に微減していますが、2010年代は毎年微増傾向を示しています。

JR東日本の業績推移

そのような安定した業績を覆すほどのインパクトを与えたのが新型コロナウイルスの蔓延でした。営業利益は2021年3月期にマイナスに陥り、民営化以降で最大の赤字となりました。

インフラ事業は安定している反面、設備や人件費等の固定費が大きいという特徴があります。外出自粛による移動制限による収益の落ち込みに対し、費用の圧縮が難しいことは利益の減少に大きく影響を与えました。

JR東日本の株価推移|過去15年のチャート

JR東日本の株価推移

JR東日本の株価をチャートから確認します。鉄道のようなインフラを担う銘柄は、電気・水道等ともに不況に強いディフェンシブ銘柄として人気がありました。

ディフェンシブ銘柄は一般的に株価の変動幅は少ないものですが、過去15年の中では東日本大震災と新型コロナウイルスがJR東日本の株価に影響を与えています。

ポイント

  • 2009〜2020年にかけて株価が上昇
  • 2020年〜2024年にかけて株価が低迷

2009〜2020年にかけて株価が上昇

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、日本全体に大きな影響をもたらしました。東京電力だけでなく、震源地となった東北地方を事業エリアとするJR東日本の株価もストップ安を記録する事態となりました。

震災による株価の落ち込みは認められるものの、長期的に見ればJR東日本株はその後上昇傾向を示しました。

JR東日本の株価推移

上昇の背景にあるのは業績の改善です。復興費用は発生したものの、2014年にJR北海道が発表した北海道新幹線により東京と旭川が結ばれる等のポジティブなニュースもあり、売上が改善したことから株価も上昇しました。

2020年〜2024年にかけて株価が低迷

2020年以降は、新型コロナウイルスにより影響を受けています。運輸事業は、移動自粛により鉄道やバスの利用が大幅に減少し、収益獲得が難しくなりました。新型コロナウイルスの収束後も、リモートワークの定着により定期利用は以前の水準には戻っていません。

不動産事業についても、海外からの旅行客が減少したことでインバウンド消費がなくなり、ダメージを受けました。

JR東日本の株価推移

もう1点2020年以降の特徴として挙げられるのが、下のチャートが示す通り日経平均全体(ピンク線)の伸びに劣っていることです。日本企業株の上昇は2024年に入ってから顕著ですが、それ以前を含めて観察しても、JR東日本(青線)の低迷が見て取れます。この理由は後述します。

JR東日本の株価推移

JR東日本の株主還元|配当・自社株買い・株主優待

JR東日本の株主還元

次にJR東日本の株主還元施策として、配当、自社株買い、株主優待を確認します。 JR東日本は、還元施策が手厚い銘柄として投資家の間では人気があると言われていますが、実態はどうでしょうか。

ポイント

  • JR東日本の一株配当・配当利回り推移
  • JR東日本の自社株買い推移
  • JR東日本の株主優待

JR東日本の一株配当・配当利回り推移

JR東日本の一株配当・配当利回り推移

配当利回りの推移は下の表の通りです。プライム市場の配当利回り平均が2%強なので、それに比較すると低い数値となっています。配当狙いではなく安定性を重視する投資家向けと言えそうです。

JR東日本の一株配当・配当利回り推移

出典:IRBANK

JR東日本の自社株買い推移

自社株買いについては、前掲の通り(下のグラフ黄色バー)2019年3月期まで毎期実施しており、それ以降は行なっていません。

JR東日本の自社株買い推移

PBRは1.27倍(出典:Yahoo!ファイナンス)となっており、日本取引所グループが提言する「資本コストを意識した経営」の水準は維持しています。

投資家としては自社株買いの再開を期待するところですが、2023年から2027年のキャッシュの使途について、業績も踏まえ増配と自社株買いを行う可能性があることを公表しています(出典:JR東日本 財務・投資戦略)。

JR東日本の株主優待

JR東日本の株主優待はいくつか種類があります。1つ目はJR東日本管轄内の路線でに4割引で乗車できる割引券です。所有株式数に応じて取得できる割引券の発行枚数が異なりますので、下の表をご確認ください。なお、優待内容は2024年1月31日付の株式分割の発表と合わせて改訂されています。

JR東日本の株主優待

また、2年以上の長期保有をしている投資家に対し、JR東日本関連する施設における割引やサービスを受けられる優待も出しています。下の表の施設が対象となりますが、優待内容は施設毎に異なりますので、個別に確認が必要です。更に、1,000株以上保有する株主には、JR東京総合病院 人間ドック料金割引券も​提供されます​。

JR東日本の株主サービス券

JR東日本の株価がなぜ上がらないのか理由を解説

JR東日本の株価が上がらない理由

JR東日本の株価はなぜ上がらないかということについて、いくつかの観点で考察します。2020年以降の株価を観察すると、持ち直し傾向はあるものの日経平均と比べても株価の上昇率が低い理由を探ってみます。

ポイント

  • 新型コロナウイルスによる収益減少の影響が大きい
  • キャッシュフローの減少が顕著で投資余力が減少した
  • 費用削減施策に国土交通省の認可が必要で時間かかる

新型コロナウイルスによる収益減少の影響が大きい

最も大きい影響はやはり新型コロナウイルスによるものです。外食業、小売業、観光業と並び鉄道事業へのマイナスのインパクトは非常に大きく、また2022年頃までは収束の見通しも立ちにくかったことから、その影響は長引きました。

新型コロナウイルスが、インフルエンザと同じ「5類」扱いになったのは2023年5月8日です。コロナ収束に向けた動きは進むものの、通勤・通学客の減少やリモートワークの定着や、海外からの観光客によるインバウンド消費の戻りが遅いこともあって投資家にとっては積極的な買い材料がないことが株価の低迷に繋がりました。

キャッシュフローの減少が顕著で投資余力が減少した

鉄道事業は、乗客や貨物が少なく空気しか運んでいないとしても、発生する費用は巨額です。何より安全が重視される事業であることから、修繕費、人件費、設備投資費は削減が難しく、キャッシュ・フローが悪化しました。

事実、2022年3月期の決算説明会資料を参照すると、2021年3月のフリー・キャッシュ・フローは9,393億円という巨額のマイナスを計上しています。

JR東日本 連結キャッシュフロー

キャッシュ・フローの悪化は、将来的な成長事業への投資を阻害する可能性があるため、投資家からは成長余地が少ないと認識され、株価が上昇しない要因となりました。

費用削減施策に国土交通省の認可が必要で時間かかる

JR東日本は、業績悪化やフリー・キャッシュ・フローの悪化に対し、事業経費を落とすことを試みています。例えば、終電の時刻繰り上げです。これにより夜間における保守や点検の時間を確保することで作業を効率化し、数十億円の費用を抑えることが可能となります。

他にもダイヤ改正による運行本数の減少やダイナミック・プライシング(通勤・通学で乗客が多い時間帯の運賃を上げ、日中の乗客が少ない時間帯の運賃を安くする方式)の導入が検討されています。

しかし、いずれの施策も国土交通省の認可が必要となるため導入まで時間がかかることから、すぐにその効果が顕在化しません。こうしたスピード感も株価低迷の要因の1つでしょう。

注目ファンド

詳細な投資分析によるバリュー投資を中心に実践しており、短期的な利益追求ではなく安全性を追求しながら中長期的な利益を求めているヘッジファンド。

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JR東日本の株価に対する投資家の口コミ

JR東日本の株価に対する投資家の口コミ

次に、実際にJR東日本株を保有する投資家の声を、口コミで確認します。

木曜朝新青森から東京に戻ろうとしたら、はやぶさの指定席が既に夜まで売り切れ。しかたなく、仙台でやまびこに乗り換えました。驚いた。皆さん旅行に戻ってきてるんですね。

引用:Yahoo!ファイナンス

JR東日本は、鉄道会社なんだから、本業に力を入れるべし。

駅ナカショップは、特にNewDaysはファミリーマートの二番煎じ。
駅ナカ事業は賃貸に限定し、他社の優秀な店舗を入れた方が良い。

引用:Yahoo!ファイナンス

内需関連物色なら、上昇余地大いにあり、コロナ前
の損益外人の利用とは、関係なかった、それでもあれだけ。
為替の10円、20円あまり関係ないでしょう。インバウンド
より国内の旅行ブームさらに盛り上がりそう。北陸への新幹線
延長の収穫期では?

引用:Yahoo!ファイナンス

な、なんだってええ!
JR東日本が株式分割とな

3分割されるので8800円→約3000円で購入できますね!

増配らしいですし東日本は全く乗らないのですが投資しようかな〜

引用:X

JR東日本が株式分割すると発表。隠れポイントは「継続保有期間"2年"以上」という先進的な取り組み。株主数が多い企業の取り組みとしては非常に有益なものであるし、日本の大企業で株主優待を継続するなら、長期保有前提で5年以上とかの優待にしてもいいくらいと思ってしまう。

引用:X

掲示板全体を通して、2024年1月31日に発表された株式分割(出典:JR東日本 HP)に関する投稿が多く見受けられました。株式は1株→3株に分割されるため、投資家にとっては買いやすくなります。投資が活発化するので、投資家にとっては良いニュースでしょう。

また、増配の発表もあったことから2024年に入ってからJR東日本の掲示板はポジティブな投稿が多い印象です。株主還元施策の推進と合わせ、今後は株価の持ち直しを期待させる展開であることから、今後買いが増える可能性も口コミから読み取れます。

逆に投資を尻込みする投資家の投稿もあり、その要因は事故です。確かに大きな電車事故が発生してしまった場合は被害が甚大になることを懸念しているようです。

JR東日本の株価は今後どうなる?将来性を解説

JR東日本の今後の株価

JR東日本の株価は今後どうなるかということについて、外的要因と内的要因の面から考察します。新型コロナウイルスで低迷した業績を持ち直す材料があるかという点がポイントになります。

ポイント

  • 内需産業なので日本経済の持ち直しともに株価上昇期待
  • 有形無形資産を活用した成長事業の推進

内需産業なので日本経済の持ち直しともに株価上昇期待

JR東日本の主事業である鉄道運輸は、典型的な内需産業と言われています。つまり、日本経済が持ち直して活発化することで、JR東日本も業績が上向きます。ここで、鉄道の乗客数を見てみると、下の表の通り前年同月比では約109%となっており、鉄道利用者が増えていることが分かります。

新型コロナウイルス蔓延前の2019年と比較するとまだ戻りは8割ですが、今後は乗客数の増加に伴いJR東日本の収益も増えるでしょう。一時よりもオフィス回帰の動きがあることもプラス材料です。また、インバウンドによるホテル事業の回復も見込まれることから、今後の株価上昇が期待されます。

国土交通省資料

有形無形資産を活用した成長事業の推進

JR東日本は不動産だけでなく有形無形の資産を多く保有しています。特に​無形資産活用は大きな武器になり得ます。例えば、 Suicaやビューカードという決済手段を持つことは強みであり、JREポイントも活用した駅ナカ経済圏は、他企業の追随を許さない独占市場です。

また、 Suicaを通じて集めた消費行動の情報はマーケティングに大いに活用可能であり、消費者の囲い込みに力を発揮するでしょう。

JR東日本は現在、不動産の含み益を抱えていることから、この益を成長事業への投資に充てることができれば収益獲得機会は拡大すると予想されます。また、不動産をREITという形で不動産ファンド事業として活用することも進めています。

JR東日本の持つ有形無形資産の活用が効果的に進めば、株価の上昇が期待できるでしょう。

JR東日本の業績・株価・配当についてまとめ

JR東日本の株価について、業績や株主還元施策等から考察をしました。現在株価は低迷していますが、今後の成長には期待を抱かせる材料もあるため、購入しても良い銘柄ではないでしょうか。

同じJRでは、JR東海が進めるリニア中央新幹線は興味深い事業ですが、いまだに静岡県と揉めており工期が長引いていることから直近はお勧めしにくい銘柄です。その点も含め、JR東日本の株は安定を志向する投資家向けの銘柄と言えます。

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