1.財政規律派の主張

1.財政規律派の主張

財政規律を考えている人(財政規律派)の主張は、「健全財政なくして国の発展なし」という点です。財政規律派の具体的な主張・政策・メリット・デメリットについて、詳しく紹介します。

財政規律派の具体的な主張

財政規律派の考えは、歳入を増やし歳出を減らすことによって赤字を解消し、財政健全化を図るということです。財政赤字がこのまま累積していくと、財政破綻のリスクが発生し、ひいては国際的な信用力も失ってしまうため、早急な財政健全化が求められています。

また、財政規律派は、健全な財政を基盤とすることにより、持続可能な社会の構築を目指しています。

財政規律派の主な政策

財政規律派の政策は、主に以下の3点です。

  • 歳出削減
  • 増税
  • プライマリーバランスの黒字化

それぞれの政策について、詳しくみていきましょう。

歳出削減

歳出の削減としては、「行政のムダの排除」「公務員の人件費削減」「社会保障費の圧縮」の3つの政策があります。

行政のムダの排除には、各省の業務の重複部分の統合などがあります。行政改革の一環として各省庁の統廃合が行われましたが、まだ行政のムダは散見されている状況です。

公務員の人件費削減は、文字通り公務員の給与・賞与などの削減のことです。しかし、給与・賞与を削減しすぎてしまうと、公務員を目指す応募者が減少し、公務員の質が低下してしまう懸念があります。

現在の財政において、社会保障費(年金・医療・介護・子育てなど)の負担が顕著となっています。そのため、社会保障費の圧縮も政策の1つとして挙げられています。

増税

財政再建のためには、歳入を増やす政策も必要です。歳入を増やすために検討されている政策が消費税の増税です。

消費税は、幅広い年代の国民が負担対象となります。そのため、増税の不公平感が少なく、また景気が悪くても、生活に最低限必要な商品・サービスは需要が期待できるため、安定して歳入を確保できるという利点があります。

プライマリーバランスの黒字化

プライマリーバランスとは、日本語で「基礎的財政収支」のことです。税収・副収入といった歳入から、国債の返済費や利払い費を除く歳出を差し引き、その結果を黒字化することを指します。つまり、新たな赤字国債の発行を抑制することにより、これ以上借金を増やさないという政策目標です。

プライマリーバランスの黒字化により、次世代に対してこれ以上負担を増やさないことが可能となります。

1.財政規律派の主張

財政規律派の主張【メリット】

財政規律派が目指している財政政策を採用することによって、財政健全化の実現が期待でき、財政の安定と信頼を国内外にアピールが可能です。また、次世代の税や社会保障費の負担の軽減が図れるといったメリットもあります。

財政規律派の主張【デメリット】

デメリットとしては、「経済活動の停滞」「社会保障縮小の可能性」の2点です。

歳出を削減することによって、公共工事が減少となってしまい、公共事業への依存が高い業界・業種の売上が落ちることが予想されます。その結果、経済活動が停滞を来たし、景気の悪化を招くおそれがあります。

また、歳出削減対象としては、社会保障費も含まれる可能性が高いです。そのため、健康保険料・国民年金保険料の負担額のアップや、高齢者の保険料自己負担額の増大・国民年金受給額の減少などのリスクがあります。

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2.積極財政派の主張

2.積極財政派の主張

積極財政を考えている人(積極財政派)の主張は、「投資なくして未来なし」という点です。積極財政派の具体的な主張・政策・メリット・デメリットについて、詳しく紹介します。

積極財政派の具体的な主張

積極財政派の人々は、公共事業への投資促進や社会保障の充実化などによって政府の財政出動を増やし、景気を下支えすることで経済成長を促します。経済成長することにより、税収を増やして国債の発行量を削減し、財政健全化を達成する考え方です。

そして、活力ある経済と豊かな国民生活の実現を図ります。

積極財政派の主な政策

積極財政派の政策は、主に以下の3点です。

  • 公共事業への投資
  • 社会保障の充実
  • 減税

それぞれの政策について、詳しくみていきましょう。

公共事業への投資

公共事業工事への投資を進めることにより、公共事業工事が主要事業であり企業の売上がアップします。工事には多くの業界・業種・企業が関与するため、幅広い範囲に財政出動の好影響が及びます。

公共事業の代表的なものは、社会インフラの整備です。現在のインフラは高度成長期に構築されたものが多く、経年劣化による危険性のリスクがあります。特に、橋梁や道路・下水道などの老朽化が顕著であるため、これらの事業に投資を行うことが考えられます。

社会保障の充実

社会保障の充実は、大きく「子育て支援」「教育・医療の充実」の2つの政策です。

子育て支援としては、主に以下の2つの政策があります。

  • 児童手当の支給
  • 子どもの医療費無償化

また、教育・医療の充実としては、以下のような政策が挙げられます。

  • 少人数学級の実現
  • 教職員の増員
  • 再生医療の実用化

減税

減税も積極財政派の政策として有効です。減税を行うことにより、国民の可処分所得を増やし、家計の負担軽減が期待できます。また、国民の消費が喚起されることにより、企業の設備投資を促し経済成長につながるでしょう。

具体的な政策としては、所得税や住民税の定額減税があります。

2.積極財政派の主張

積極財政派の主張【メリット】

積極財政のメリットとしては、「経済成長に伴う税収増と雇用創出」があります。公共事業への投資および減税によって経済成長が実現し、結果的に所得税・住民税・法人税などの税収増が期待できるでしょう。

また、経済成長により景気も良くなるため、新たな雇用創出も実現可能となるでしょう。

積極財政派の主張【デメリット】

デメリットとしては、「財政赤字の拡大」「インフレリスク」があります。積極財政の政策を実行することにより、将来的には経済成長が実現し好景気となります。しかし、政府の財政出動が行われ、経済成長効果が出るまでにはある程度の時間が必要です。

経済成長効果が出るまでの間は、歳出が多くなることから財政赤字が拡大するリスクがあります。

経済成長が達成されると、商品・サービスの供給に対して需要が増えることから、物価の上昇(インフレ)リスクの懸念もあります。

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ここまで、財政規律と積極財政について、概要・政策・メリット・デメリットを紹介してきました。財政規律を推進しても積極財政を推進しても、それぞれメリット・デメリットがあります。そのため、財政規律と積極財政の政策をバランスよく推進していくことがよいでしょう。

また、近年は国際的にもSDGsの取り組みが広まっています。SDGsとは、現在の生活レベルを維持しつつ、将来の世代が必要とする地球環境や自然を損なわずに成長することを目指す活動です。日本語では「持続可能な社会の実現」と訳されています。具体的には、地球温暖化の抑止などが有名です。

我が国でも、SDGsの活動を意識した持続可能な社会の実現を伴う、経済成長を目指すことが求められています。また、現役世代のことだけを考えずに次世代に負担を先送りしないような財政政策も必要となるでしょう。

そのためには、現役世代の国民一人ひとりの意識改革や財政問題への関心および理解が必要です。

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本記事では、我が国の財政を健全化させるための政策として、「財政規律」「積極財政」の主張や特徴・政策・メリット・デメリットを紹介してきました。財政規律・積極財政とも一長一短があるとわかったのではないでしょうか。

また、我が国の財政問題と私たちの暮らしには、密接な関係があることがわかったのではないでしょうか。そのため、財政問題を他人事と捉えずに自らの問題であるといった意識改革が必要となるでしょう。

また、財政再建政策を推進していく際には、現役世代のことだけ考えるのではなく、次世代のことも考慮しなるべく負の遺産を残さないことを念頭に置く必要があります。そのため、バランスの取れた財政再建策を検討し・推進していく必要があるでしょう。

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