ソフトバンクグループとソフトバンクは異なる企業

ソフトバンクグループの社債(劣後債)

ソフトバンクはCMなどでも有名な携帯キャリア会社です。NTTdocomo、AU(KDDI)と並び、日本三大キャリア会社の一角を占めています。もともとの祖業はパソコンの卸業でしたが、2004年にVodafone(ボーダフォン)を運営していた日本テレコム社を買収し、携帯キャリア領域に登場しました。

一方のソフトバンクグループはインターネットカルチャーの領域ながらも、戦略的に世界中のIT事業会社などに投資する投資会社の側面が強くなっています。ソフトバンク社の業績は事業会社のしての売上や利益により算出される一方、ソフトバンクグループは投資行動により確定損益や評価損益が業績を左右します。

ソフトバンクグループの社債(劣後債)の概要

ソフトバンクグループの社債(劣後債)

ソフトバンクグループの社債(劣後債)の特徴です。劣後債とは一般社債と比較したときに元本および支払順位が低い分、利回りの高い債券を指します。あくまで同一社の発行債券間の話のため、経営が安定している上場企業においては高い利回りを期待できる債権として注目されています。

商品ソフトバンクグループ株式会社 第58買い無担保社債
愛称福岡ソフトバンクホールド
発行体ソフトバンクグループ株式会社
期間約7年
利率(税引前)年率2.84%
(税引後)年率2.263% ※単利
申し込み単位100万円以上、100万単位
発行価格・償還価格額面金額の100%(発行価格と償還価格が同額)
発行日2022年12月16日
満期償還日2020年12月14日
発行額3850億円

ポイント

  • ソフトバンクグループの社債(劣後債)の利回り
  • ソフトバンクグループの社債(劣後債)の諸条件
  • ソフトバンクグループの社債(劣後債)の償還

ソフトバンクグループの社債(劣後債)の利回り

2019年9月にソフトバンクグループは年1.38%で4000億円の社債を発行しています(劣後債ではありません)。今回は税引前で2.84%のため、2倍弱近くに利回りが上昇したことになります。上記の通りソフトバンクグループは投資会社のため、投資家は同社の投資の確定益を期待して購入する債権ということになります。

世界的な利上げを背景として、十分な資金調達を実現するには高い利回り設定が必要とされています。知名度の高いソフトバンクグループにとっても例外では無く、返済リスクを受け入れて利回りの高い劣後債を出したといえるでしょう。

仮に企業が経営破綻した場合、財産の弁済順位は普通社債→劣後社債→株式となっています。株式ほど値上がり期待値があるわけではないですが、劣後債の持つ(特に普通社債と比較した際の)利回りの高さが伺えます。

ソフトバンクグループの社債(劣後債)の諸条件

ソフトバンクグループの今回の劣後債は償還までの年限は7年、満期一括償還です。いつでも買入消却が可能と設定されているため、ソフトバンクグループ側のキャッシュ次第で次策を取ることのできる印象を残しました。国内販売で担保なしです。

ソフトバンクグループの格付けはS&PでBB+、日本格付け研究所でA−です(どちらも長期債の場合)。期限前償還条件付きとは満期償還よりも利率が高い傾向です。また無担保社債とは、発行社が債務不履行となった時に額面金額や利払いは保証されないもので、現在の債権は(一般社債も劣後債もともに)無担保が主流です。

前述の通りソフトバンクグループは投資会社の側面が強いため、価格変動のボラティリティが高い傾向にあります。そのなかで利回りを期待できることから、販売直後に売り切れるような人気を博していると考えられます。

ソフトバンクグループの社債(劣後債)の償還

今回の劣後債は、発行価格と償還価格が同額と設定されています。債権には金利変動と価格変動があり、片方が上がれば片方が下がるシーソーの動きをします。今回の劣後債の場合、高めの金利が設定されている一方で、債権価格の元本は保証されているという見方ができます(額面価格として)。

この両面から考えると、少なくとも満期まで所有する前提のもとでは損失を出す可能性は低い債券運用と見ることができるでしょう。残るリスクは経営難リスクですが、毀誉褒貶は激しい企業ながらも短期間で日本を代表する企業に成長したことは、この購入人気を裏付けしているといえます。

残るは途中解約による元本割れリスクですが、この部分に関しては価格変動が大きい分、残存リスクの考慮対象といえるでしょう。

【参考】2023年2月にソフトバンクも個人向け社債を発行

ソフトバンクグループの社債(劣後債)

2023年2月にはソフトグループではなく、通信会社であるソフトバンク社も社債を発行しています。ソフトバンク社が個人投資家向けに社債を発行するのは2018年12月の上場以来はじめてです。

第19回無担保社債(ソフトバンクみらい創出ボンド)

発行年限5年
発行額1,200億円
各社債の金額10万円
利率0.98%
条件決定日2023年2月22日
申込期間2023年2月24日から3月9日
払込期日2023年3月10日
償還期限2028年3月10日
利払日毎年3月10日および9月10日
資金使途みらい創出のための事業に係る設備投資資金
取得格付けAA−(日本格付研究所)、A+(格付投資情報センター)
主幹事証券会社大和証券、みずほ証券、SMBC日興証券、三菱UFJモルガン・スタンレー、野村證券、SBI証券、岡三証券、東海東京証券

ソフトバンクグループの社債のリスク・危険性

ソフトバンクグループの社債(劣後債)

ソフトバンクグループの社債の特徴は、投資会社のため投資先の決算発表や事業関連ニュースにより途中売却時の価格逓減リスクが強いことです。満期の償還価格は確保されているものの、売却のタイミング次第では元本割れの危険性があります。

ポイント

  • ソフトバンクグループの社債の流動性とリスク
  • ソフトバンクグループの社債の元本割れリスク
  • ソフトバンクグループ投資先の倒産や株価急落リスクは

ソフトバンクグループの社債の流動性とリスク

ソフトバンクグループは投資会社のため、債権の流動性とともなうリスクも高めです。通常の事業会社であれば、新規事業を展開する場合も研究機関や準備期間があり、中途解約ニーズと中途購入ニーズが均等化される傾向があります。

ソフトバンクグループの場合、「〇〇に投資した」とアナウンスされる場合もあれば、第三者のメディアによって△△円の評価益、××円の評価損と報じられる場合もあります。業績のニュースはインパクトを持って伝えられますが、あまり流されて短期的な売買行為に走らず、ポートフォリオを優先して考えていきましょう。

ソフトバンクグループの社債の元本割れリスク

今回の劣後債は発行価格と償還価格が同額のため、満期まで所有すれば税金などの費用を除くと元本割れリスクはありません。途中で解約した場合はその時の価格により元本割れのリスクも生じます。

投資会社の傾向が強いソフトバンクグループは中途解約時の価格変動リスクが高いため、中途解約前提で購入せず、あくまで満期の利益確定を狙っていくようにしましょう。ほかの資産ポートフォリオとの関連でいうと、単元株や投資信託とのあいだで分散投資の一部分として同社の債権を購入しているケースもあると考えられます。

ボラティリティが高いため、その特徴を活かした資産構成としていくことがポイントです。

ソフトバンクグループ投資先の倒産や株価急落リスクは

ソフトバンクグループは投資会社です。投資会社としてポートフォリオを有しており、随時評価損益が報じられます。知名度の高いビジョンファンドなどは世界中のベンチャー企業やスタートアップを投資対象としているため、成長株を発見しやすい一方、急落株やカントリーリスクの影響力が高いファンドを所有しています。

株式の評価額と債権価格は同一ではないですが、影響は否定できないでしょう。2022年からアメリカを中心にスタートアップへの資金調達が抑制傾向になっているため、今後もソフトバンク投資先の業績によって影響が想定されます(良い影響、悪い影響ともに)。

同社の債権購入にあたっては、リアルタイムでソフトバンクグループがどのような投資株を保有しているのか、確認してからの意思決定の方が投資家としてのリスクヘッジに繋がります。

ソフトバンクグループの経営状態のリスク・危険性

ソフトバンクグループの社債(劣後債)

ソフトバンクグループの最新の経営状況はどのような状況なのでしょうか。顕在化しているリスクや危険性とともに分析します。巨額損失が報じられることの印象が強いソフトバンクグループですが、2023年2月にも巨額の投資損失が報じられました。

ポイント

  • ソフトバンクグループの業績
  • ソフトバンクビジョンファンドの投資損益
  • ソフトバンクビジョンファンドのバランスシート
  • ソフトバンクグループの今後の見通し

ソフトバンクグループの業績

2023年2月7日に発表された9カ月決算は、最終損益が9125億円の赤字となりました。収益の柱としてきた傘下の投資ファンドが9カ月で5兆68億円の評価損失、加え円安による為替リスクで7280億円の損失を計上しています。

積極的に投資を拡大してきたAIや人工知能関連の投資が、株価低迷により巨額損失を計上した格好です。今後もアメリカの利上げに加え、シリコンバレーを拠点としていた銀行が倒産するなど(2023年3月時点)、ソフトバンクグループが投資しているスタートアップには冬の時代が続きます。

これまでにない新たな国の投資による業績再建が期待されます。

ソフトバンクビジョンファンドの投資損益

ソフトバンクグループの投資事業の中心を担っているのがソフトバンクビジョンファンドです。2022年よりビジョンファンドは巨額の損失計上が続いています。2022年4-6月期(第一四半期)の純損益は3兆1627億円で、創業来最大の赤字に転落しました。

世界的なIT領域の冷え込みが主な原因です。1号ファンドで所有していた米配車サービス大手のウーバー・テクノロジーズの保有株式を売却するなど現金化も進めていますが、投資先評価額の冷え込みが上回っている印象を受けます。

投資会社のポートフォリオは金額規模も巨額のため、個人投資家のような損切りは難しいものです。

ソフトバンクビジョンファンドのバランスシート

ソフトバンクグループの最新決算から、バランスシートを分析します。2022年3月31日現在における流動資産は10兆285億円、資産合計は47億5446億円です。負債合計が35億8369億円のため債務超過は逃れているものの、チャレンジングな会社経営をしていることが見てとれます。

今回のような社債発行も利回りは高いがために人気を博しているものの、健全な成長経営かという視点では、首をかしげる投資家も多いような印象です。たとえるなら「博打感」の強い事業会社といえるでしょうか。

所有していたアリババ社やT-モバイル社の売却でキャッシュは確保しているものの、安心して長期投資をするよりはインパクトのある仕掛けを期待して所有する株という印象は以前から変わりません。

ソフトバンクグループの今後の見通し

投資会社である以上、同社の今後の見通しを読むのはとても難しいです。ただ、世界的な成長会社やスタートアップの先行きは非常に不透明といわれているため、同社の評価額ベースの資産は今後も留意しなければならないでしょう。

そもそも稀代の起業家と呼ばれる孫正義会長が毎年の決算を見て投資戦略を仕掛けているのか、それとも我らが想定していない数年先の巨額リターンを期待しているのかはわかりません。グループ全体としても、何年先を見ているかによって評価の分かれてくる会社の代表格といえます。

合わせて孫会長の年齢も重要なポイントです。2023年現在まだ65歳とはいえ、後継者として迎えた人材を手放すケースも目立ってきました。いわゆる後継者問題も、同社の今後を見通すうえで目を離せません。

注目ファンド

詳細な投資分析によるバリュー投資を中心に実践しており、短期的な利益追求ではなく安全性を追求しながら中長期的な利益を求めているヘッジファンド。

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ソフトバンクグループの社債の評判・口コミ

ソフトバンクグループの社債(劣後債)

ソフトバンクグループの社債の口コミです。インターネットの世界で同社の社債は、どのような評価を得ているのでしょうか。

ソフトバンクグループ社債!このゼロ金利環境で、なんて魅力的な利率なんだ!

引用:Twitter


私はソフトバンク社債2〜3%を3000万くらい買いました。これだと、繰上よりは金利差儲かります。ソフトバンクが倒産したら、日本が終わる時だろうと思ってます

引用:Twitter


うーん、一時期は年利2%とかで個人投資家から資金調達していたけど、最新のソフトバンクの社債の格付けや抑制された金利を見ると、大丈夫なんじゃないかなーって気がします。

引用:Twitter


まぁ、ここがやってるのは、フルレバ二階建てみたいなもんやしな、、ソフトバンク配当とアリババおわったらなにもない、、

引用:Yahoo!ファイナンス


当たれば逆転満塁大ホームランだがその確率はよくて1割にすぎないだろう

引用:Yahoo!ファイナンス

口コミを見ていると、良くも悪くも達観した印象の投資家が多いように見受けられます。それほどソフトバンクグループは投資家の「夢」を載せているのでしょうか。社債の購入者は株式よりは堅実ですが、傾向は似ているようです。

ソフトバンクグループ社債への投資リスク・リターンは見合っているか?

ソフトバンクグループの社債(劣後債)

ソフトバンクグループの社債購入は株式と違い、投資リスクとリターンが可視化されています。今回の同社の劣後債は利回りが高く、満期償還時の額面回収も約束されているので、ローリスクといえるでしょう。リターンも高い部類に含まれるのではないかと考えられます。

同社のバランスシートを見ると、今後も定期的に劣後債(もしくは一般社債)が発売される可能性が高いです。情報をキャッチアップして、良い条件の再建を投資家自身のポートフォリオに組み込めるように、準備していきたいものです。

一方で投資会社として市場の冷却状態を跳ね返していけるかとの見立てには専門家の意見も分かれるかもしれません。投資においては、ファンドの最新の投資先も入念に調べて意思決定していきましょう。

ソフトバンクグループ社債・劣後債への危険性・リスクをおさらい

ソフトバンググループの社債(劣後債)の持つ性質と、危険性やリスクを分析しました。投資会社のため、投資先の評価損益や市場の状況に強い影響を受ける同社ですが、社債はリスクとリターンが限定的なものです。

債務超過の可能性はゼロではないものの、あまり恐れることなく、自身の資産ポートフォリオにとって最善の意思決定をしていくことをお勧めします。

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