日本郵船の企業概要
日本郵船とは、世界有数の大規模船隊と「陸・海・空」に広がる国際輸送網を駆使する総合物流企業です。
坂本龍馬率いる海援隊商法に影響を受けた岩崎弥太郎が東京・大阪・高知間で海上輸送を行う九十九商会(後の三菱商会)を1870年に設立したことが始まりです。
1885年9月29日に競合他社の共同運輸会社と合併したことで日本郵船会社が設立されました。
現在は物流事業だけではなく、不動産業、海洋事業およびLNGバリューチェーンにおける上流から中流のビジネス、次世代ソリューション開発および提供を目指したスタートアップ企業設立など幅広い事業を行っています。
企業名 | 日本郵船株式会社 |
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設立 | 1885年9月29日 (創業 同年10月1日) |
資本金 | 144,319,833,730円 (2023年3月末) |
従業員数 | 正社員35,502名 (2023年3月末) |
日本郵船の事業内容
日本郵船は、100年以上の歴史を持つ世界有数の総合物流企業ですが、現在では物流事業以外に複数の事業を多角的に展開しています。
それぞれの事業内容の詳細について紹介します。
- 定期船事業
- 航空運送事業
- 物流事業
- 不定期専用船事業
- 不動産業
- その他の事業
定期船事業
定期船事業は、コンテナ船部門、ターミナル関連部門の二つに分かれています。
コンテナ船では、食料品や日用品、電化製品などさまざまな商品が輸送されています。
2018年に川崎汽船、商船三井と3社の定期コンテナ事業を統合し、30隻の超大型コンテナ船を含む240隻の船隊を運航し、100ヵ国以上に輸送を行っています。
ターミナル関連部門は、コンテナ船、自動車専用船、客船などのターミナル運営と荷役サービス、船舶代理店、曳船などをサポートする港湾関連サービスを提供しています。
航空運送事業
航空運送事業は、主にグループ企業の日本貨物航空株式会社が担っています。
日本貨物航空は貨物専業会社であり、北米・ヨーロッパ・アジアで国際航空の貨物輸送事業を展開しています。
現在は日本を起点としたサービスが中心ですが、機動力とコスト競争力を武器にグローバル市場、主に欧米向け航空貨物市場の拡大を目指しています。
物流事業
海上・航空貨物輸送と、保管・流通加工、陸上輸送、情報管理を始めとする物流サービスを組み合わせて、顧客の多様化しているニーズに対応しています。
物流事業は、主に郵船ロジスティクス株式会社が担っており、世界40ヵ国600箇所に拠点を保有しています。
北米、ヨーロッパ、中国、アジア地域の物流センターを運用し、仕分けから積込手配まで幅広い物流サービスを展開しています。
不定期専用船事業
不定期専用船事業は、自動車事業部門、ドライバルク事業部門、エネルギー事業部門の3つに分かれています。
自動車事業部門は、完成車輸送、海外生産シフトに伴う三国間輸送、ターミナルにおける完成車のPDI(納品前点検・補修・部品補給など)などの付加価値サービスも提供しています。
ドライバルク事業部門は、鉄鉱石、石炭、木材チップなどの非梱包貨物の輸送を行っています。
エネルギー事業部門は、原油、石油製品、LNGなどの従来型エネルギー輸送や、石油・ガスの上中流関連事業を中心に担う海洋事業に加え、次世代/ゼロエミッション燃料や再生可能エネルギー関連事業開発に注力しています。
不動産業
不動産業は、主に49%の株式を保有する子会社JPプロパティーズ(旧:郵船不動産)が担っています。
日本郵船およびグループ会社が保有する不動産を有効活用するために、事務所ビルや住宅の賃貸などの事業を展開しています。
2021年5月27日に日本郵政グループの日本郵政不動産に株式の51%を売却し、2022年2月7日にJPプロパティーズへ社名を変更しました。
その他の事業
その他の事業の主な例として、郵船クルーズ株式会社によるクルーズ事業と株式会社MTIによる研究開発事業が挙げられます。
郵船クルーズは、日本最大の客船「飛鳥Ⅱ」の運営を行っています。
初代「飛鳥」は日本初の世界一周クルーズを実施した実績があり、2006年に「飛鳥Ⅱ」が就航しました。
MTIは、物流技術全般の最適ソリューションの提供を行っています。
日本郵船の業績推移|売上・営業利益
データ引用:日本郵船HP
上図は、直近4四半期の日本郵船の売上高および営業利益の変化を表した図です。
今期の売上高成長率は、前年同期比-12.7%、前期比+53.1%です。
季節性として1Qが最も弱く、4Qが最も強い傾向にあります。
データ引用:日本郵船HP
データ引用:日本郵船2019年度4Q決算
上図は、2019〜2022年度の年間売上高および営業利益を表した図です。
2021年度から営業利益率が大幅に上昇しています。
営業利益増加の理由は、強い物流需要が継続し、ライナー&ロジスティクス事業(定期船・航空運送・物流事業)の大幅増益、ドライバルクの市況が良かった事、自動車輸送数の増加による影響です。
2023年度の通年売上高ガイダンスは23400億円、通年営業利益ガイダンスは1750億円が示されており、マイナス成長が予想されています。
日本郵船の株価推移|過去5年のチャート
出典:日本郵船HP
データ引用:Trading View
上図は、日本郵船の過去5年間の株価チャートです。5年間での株価のパフォーマンスは+602.6%で、大幅上昇を記録しています。
なぜ、2020年以降に株価が大きく伸びているのかについて解説します。
- 2020〜2021年にかけて株価が高騰
- 2023年に株価が高騰
2020〜2021年にかけて株価が高騰
出典:Trading View
2020年にコロナショックによって株価は年初から44.9%下落しました。
その影響で一時的に売上高は伸び悩むものの、運航便に対する需要は高く、増益が確認され、株価が急激に回復し、2020年の株価パフォーマンスは+24.5%でした。
2021年3月期決算では、売上高はマイナス成長でありながら営業利益は前年比+85.2%と大幅な利益改善が確認されました。
また、2021年8月の決算では通年経常利益ガイダンスを1400億円から5000億円へ大幅上方修正を発表し、通年配当が前年の180円から700円に予想が引き上げられました。
この影響を受けて決算翌日に株価は12.9%上昇し、2020年〜2021年の2年間で株価は387.1%の上昇を記録しました。
2023年に株価が高騰
出典:Trading View
日本郵船は2020年以降堅調に株価が上昇していますが、2023年は株価を更に押し上げました。
2023年の株価パフォーマンスは+50.5%でした。
この要因は、国際運賃指標のバルチック海運指数が9月に上昇したこと、2000億円を上限とした自社株買いの実施、日本株市場の好調などが挙げられます。
バルチック海運指数は、9月5日から12月4日までに215%上昇しており、株価を下支えしました。
また、8月3日の決算で発表された自社株買いは株価を7.3%押し上げました。
日本郵船の株主還元|配当・自社株買い・株主優待
日本郵船は、株主還元の一環として配当、株主優待、自社株買いを行っています。
直近では、配当金の変化や自社株買いに投資家が注目しています。それぞれの具体的な金額や内容について解説します。
- 日本郵船の一株配当・配当利回り推移
- 日本郵船の自社株買い推移
- 日本郵船の株主優待
日本郵船の一株配当・配当利回り推移
出典:日本郵船HP
上図は、2024年2月5日時点の各年度における配当金の推移を表しています。
2022年9月30日に1対3の株式分割を行っているため、過去のデータと数字が異なることに注視てください。
日本郵船は、2020年度以降に経常利益が大きく伸びた影響で、配当を大幅に増やしています。
2023年度は連結配当性向30%を目安にしていますが、前年比で経常利益が落ちていることから年間配当金は520円から130円に減少の見通しです。
2024年3月末の株価基準で配当利回りは3.2%です。
日本郵船の自社株買い推移
出典:日本郵船中期経営計画
2022年5月決算で自社株買いの検討を行い、2022年8月決算で2000億円を上限とする自社株買いを発表しました。
取得した株式は全株消印を予定しており、企業価値を算出する指標の改善が見込まれます。
2024年1月末までに36,915,100株、総額約1420億円の自社株買いが行われており、2024年3月までに最大約580億円分の自社株買いが可能です。
2024年2月決算では、「自己株式取得を含めた機動的な追加株主還元を実施し、TSR(株主総利回り)拡大を図る」と記載されており、継続的な自社株買いが期待できます。
日本郵船の株主優待
出典:日本郵船中期経営計画
2024年4月現在、日本郵船は100株以上の株主を対象に株主優待を行っています。
配布数は上図の通りで、優待券1枚につき、飛鳥クルーズ利用時に10%の割引でサービスを受けられます。
本人以外にも使うことができますが、1クルーズにつき1名1枚までの使用制限があります。
2022年9月に1対3の株式分割に伴い、保有株式数の区切りが3倍に変更されましたが、現在も100株以上で受け取りが可能です。
そのため、保有株式数が100〜300株未満の新規投資家にとって優遇される内容へ変更されました。
日本郵船の株価はなぜ上がるのか理由を解説
2020年以降、業績の改善によって日本郵船の株価は大幅に上昇しています。2023年度の業績は芳しくないのですが、それでも株価は切り上がっています。
日本郵船の株価はなぜ上がるのかについて解説していきます。
- 2020年以降に業績は大幅に伸びている
- 2022年から大規模な自社株買いを行っている
- コロナ以降の海運輸送価格の急騰
2020年以降に業績は大幅に伸びている
まず、前提として2020年以降の業績の伸びを確認していく必要があります。
2019年度の通年売上高は18293億円、営業利益は110億円でした。
それに対して、2022年度の通年売上高は26160億円、営業利益は2963億円でした。
2022年度の売上高は2019年比で+43.0%、営業利益は+2593.6%です。
2021年以降特に営業利益率が伸びており、2019年度の営業利益率が0.6%に対して2022年度は11.3%です。
2023年度は通年予想で売上高が23400億円、営業利益が2450億円(営業利益率:10.5%)と前年と比べて低くなっています。
しかし、2019年度と比べると大きく改善されていることが分かります。株価の上昇には、売上高成長と営業利益率の改善が寄与しています。
2022年から大規模な自社株買いを行っている
2022年8月に発表した2000億円を上限とした自社株買いを2年掛けて行っています。今回の自社株買いは、株主に取って2つの利点があります。
一つは、株式の需給で買い手側が強くなることです。株価はその時の売却値で価格が付きますので、買い手が増えれば株価は上がりやすいです。
もう一つは、取得した株式を全て消印することにより、1株当たり当期純利益が上昇することです。
2024年1月末までに36,915,100株の自社株買いが行われており、全体株式の7.2%に相当します。これは1株当たり純利益を7.8%押し上げる計算で、日本郵船への投資価値を高める施策です。
そのため、2023年に株価を大きく押し上げた一つの要因が自社株買いです。
コロナ以降の海運輸送価格の急騰
2020年のコロナショックで日本郵船も一時的に打撃を受けましたが、供給を絞った効率化により、利益率が上昇しています。
また、サプライチェーン負荷増大、荷動急増に伴う船腹調整、コンテナ在庫不足、港湾混雑悪化など数年に渡るサプライチェーン問題やインフレ問題により、ここ数年海運運賃が急騰していました。
しかし、2023年にはコロナ前の水準に戻ってきたため、業績は前年比でやや落ち込む結果が予想されていますが、荷動きに応じた柔軟な船腹・輸送機材のマネジメントにより利益の最大化が続いています。
コロナ以前と後では輸送に対する効率が変化したことが株価上昇の一因です。
日本郵船の株価に対する投資家の口コミ
日本郵船は、SNSでどのような評価をされているのでしょうか。
知ってる?
信用評価損益率を見ると
今は個人が最高に儲けやすい相場なんだよ
(頂点にいるからいつドスンと落ちるかわからないけど)
ホルダーっていいね
儲かってしようがない
郵船ホルダー最高っ!引用:Yahoo!ファイナンス
最近、特にコロナ前後に株を始めた奴は海運株は強いとおもうだろう。長年、例えば平成の中ごろ前に始めた奴は海運株ごときが、と思うだろう。確かに海運株が低迷していた時期もあった。が、そこ頃は日経平均株価が一万円を割り、為替は1ドル80円を切るような円高不況、というのもあった。今は日経平均も40000円を越え、1ドル150円の時代。そこをどう見るか。
引用:Yahoo!ファイナンス
ここで郵船を買う人が儲かるのにね!!
なぜ安値で売っちゃうんだろう。
中長期の視点で買えば間違いないのにね!
信用取引の人は知りません。
BPS=5343
(今期末は5600円以上かな?)
PBR=0.76
今後数年最低純利益 2000億円 1株益=433円
(前期、前々期より80%以上マイナス水準)
配当性向30% で 年間BPS増加額 300円
(自社株処分を入れてないので、実際はさらに上振れ)
ということは、再度自社株買い、配当増加、株価上昇 が見込まれるでしょ!!
あ、コロナ前とはBPSが全く違うので、比較する必要なしです。
機関投資家がPBR1倍以下とその他指標で基準以下の場合、代表取締役の選任に反対する方向で各社動いているので、今後、会社として株価を上げに動きますよ。引用:Yahoo!ファイナンス
この視点は正しくて、多くの人が潰れない、働きたいと思ってるまともな会社の株価が低いのはチャンスでしかない 僕は日本郵船の株価が200円(今の株価換算だと700円…700円!?)の時代に仕込んで300万ほど儲けさせてもらいました
引用:X
日本郵船は意外と株価は適正水準
と思ってる。引用:X
現在の株価水準に対して、割安か割高かの議論が目立ちます。
直近の業績変動から適正水準と考えている個人投資家が多い印象です。
日本郵船の株価は今後どうなる?将来性を解説
コロナ後の業績変動やサプライチェーン問題からの脱却などを超えて、日本郵船の株価は今後どうなるのでしょうか?
株価が大きく動くシナリオについていくつか解説していきます。
- 世界経済の動向と業績の変化に注目
- 自社株買いと増配が継続できるかに注目
世界経済の動向と業績の変化に注目
株価が大きく伸びた要因の一つは、2021年以降の利益率を始めとして業績が大きく伸びたことが挙げられます。
2023年度はCovid後に急騰した運賃価格が元の水準に戻ったことを要因に、前年比で売上高および営業利益どちらもマイナスが示唆されています。
サプライチェーン問題による逼迫は既に解決しており、景況感変化に伴う需給が大きな影響を及ぼすと考えられます。
世界経済が順調に成長すれば業績改善の可能性があり、反対に景気鈍化が見られれば株価が低迷する可能性が高いです。
自社株買いと増配が継続できるかに注目
2023年の株価を支えた一番の要因は、2000億円規模の自社株買いと推測されます。
利益が減少した場合においても自社株買いによって一株当たり純利益がある程度維持できます。
これにより、株価に対する割高感が減り、需給バランスを保つことができました。
しかし、2024年3月で自社株買いの承認期間が終了するため、次回決算で再度承認されることが株価を押し上げる一つのポイントです。
また、配当の金額にも注目が集まります。
2019年度〜2022年度は業績が右肩上がりだったことから配当が急激に増えていましたが、2023年度は減配の見通しです。
配当がさらに減配すると下落傾向に転じる可能性もあるため、配当が維持または増配できるか確認が必要です。
日本郵船の業績・株価・配当についてまとめ
日本郵船は2020年以降の急激な業績の成長により、株価が大きく上昇しました。
営業利益が大きく増加したことにより、2022年度の年間配当は2019年度40円から1510円に増えています。(株式分割前を基準)
2023年度は運賃価格が落ち着いたことなどを理由に業績が低迷していますが、大規模な自社株買いにより株価は50.5%と大きく上昇しました。
2024年は年初から株価が軟調ですが、業績回復や自社株買いによって株価が伸ばせるかに注目しています。
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