個別株とはどのような取引のことか

個別株とはどのような取引のことか
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個別株とは個々の企業が発行する株式のことで、個人投資家は東京証券取引所等の取引所に上場する個別株の売買を行うことが可能です。まずは証券会社に口座を開設し、審査を通過すると取引ができるようになります。

個別株を保有することで、投資家は2種類のリターンを狙うことになります。1つは株式の値上がり益で、日々変動する株価を観察し、買った値段より高く売り抜ければ利益を得る(キャピタルゲインと言います)ことが可能です。当然ながら、株価が落ち込んで買った値段より下がれば損をしてしまうこともあります。

もう1つは、配当金や株主優待等、長く保有することで得られる特典(インカムゲインと言います)です。

個別株投資では、保有する期間や売却のタイミングがとても重要で、その良し悪しが投資成果となって現れます。

個別株が難しい理由やリスク

個別株が難しい理由やリスク

個別株への投資での失敗とは、元本を毀損する、買った値段より下がってしまうことです。高値で売り抜けないことも失敗の1つでしょう。難しいのは、どの株が儲かるかを予測することで、多くの投資家が苦労しています。また、個別株は様々なリスクに晒されていることも意識すべきでしょう。ここではその難しさをご説明します。

ポイント

  • 膨大な情報の収集や分析
  • 売買タイミングの見極め
  • 市場の不確実性による価格変動
  • ポートフォリオに対する適切なリスク管理
  • 恐怖や感情的なモメンタムによる変動

個別株の難しさ1. 膨大な情報の収集や分析

今後業績が上がる企業が分かっていれば、その企業の株式に投資すれば儲けられる可能性が高いでしょう。しかし、そのためには多くの情報収集や分析が必要となり、証券会社等の金融機関のプロでも難しいと言えます。

上場企業は、財務情報だけでなく経営方針や事業戦略等の様々な情報を発信しています。投資家はそういった情報から今後の企業の業績が伸びるのか判断することになりますが、情報量は膨大で収集するだけでも一苦労です。

更に、2023年7月末時点で東京証券取引所のプライム市場に上場している企業だけでも1,800社を超えます。この中から有望な銘柄を探すのは困難な作業と言えるでしょう。

企業の経済環境や業績予測から株価を予測することをファンダメンタルズ分析と呼びますが、株価を効率的に分析するためにテクニカルな手法もいくつか存在します。但し、その手法をもってしても正確に株価を予測することは難しく、それが株式投資はギャンブルと言われる所以でしょう。

個別株の難しさ2. 売買タイミングの見極め

「これは!」という銘柄が見つかったとしましょう。しかし、その銘柄を買うタイミングや売るタイミングは、銘柄を選別することと同じくらい難しいことです。

なぜなら、上場株式は日々刻々と価格変動リスクに晒されているからです。投資家は、なるべく安いタイミングで株式を購入し、なるべく高いタイミングで売り抜きたいものですが、そのタイミングかを見極めるのは未来を予測するような作業です。

購入を狙っていた株価が急に高騰して機を逸することもあるでしょうし、高値で売却をしようとしていた銘柄が突然暴落することもあるでしょう。売買の適切なタイミングが予め分かっていれば大金持ちになることも夢ではないのですが、多くの人が失敗を経験しているのが実態です。

個別株の難しさ3. 市場の不確実性による価格変動

株価は個々の企業業績に影響を受けますが、それ以上に市場全体の影響を受けています。市場はグローバルの経済、政治、紛争等、様々な要因で変動します。

直近では、コロナやロシアのウクライナ侵攻が挙げられます。例えばコロナを背景に、旅行や交通、サービス業を展開する企業は大打撃を受けました。同時に、巣ごもり消費需要からゲームや小売といった銘柄は業績を上げました。

ロシアのウクライナ侵攻では、株式市場全体に値下げ圧力がかかりましたが、その中でも軍事や防衛に関連する銘柄は伸びを見せ、現在は復興を見据えた銘柄が物色されている状況です。

このように、程度の差はあれど株式市場に大きく影響を及ぼす不確実な事象の影響内容や影響度は読み切ることは困難です。

個別株の難しさ4. ポートフォリオに対する適切なリスク管理

投資家は通常、複数の資産や銘柄に投資してポートフォリオを組んでいます。前述の通り、株価は色々な要因でリスクに晒されているため、適切なリスク管理を図る必要があります。

投資家が保有する銘柄には、市場や企業業績による価格変動リスクだけでなく、流動性リスクや、海外銘柄にも手を出していれば為替のリスクもあるでしょう。

投資家はそれらのリスクを考慮してポートフォリオを組む必要があります。先ほどのコロナの例で言えば、旅行や交通系の銘柄ばかり保有していた場合には損失が大きく膨らむことになるので、様々な業種の銘柄に分散投資をすることで損失を抑えることができます。

適切なリスク管理として分散投資は1つの手法ですが、どのように分散させるかという点にまた難しさがあるので、失敗につながることもあるでしょう。

個別株の難しさ5. 恐怖や感情的なモメンタムによる変動

株価は様々な要因で変動することを述べてきましたが、マクロ経済や企業業績をいくら詳細に分析しても説明がつかない動きをすることがあります。それは感情が絡むもので、市場レベルでも個人の投資家レベルでも起こり得ます。

世界恐慌時には、売りが売りを呼ぶ展開で株価が大暴落しました。あるきっかけで市場全体が恐怖に駆られ、われ先にと売りを急いだ結果、当時の実体経済の強さ以上に株価が下落しました。2015年のパリ同時多発テロや、大規模災害といったことでも株価は影響を受けます。

また個人レベルでも、根拠なく「この企業はまだ頑張れるはずだ」と考えてたり、「この企業を応援したい」といった気持ちが混ざることがあるでしょう。

感情的な動きは予想ができないため、株式投資の難しさの1つと言えるでしょう。

個別株はやめとけ!【投資失敗例】

個別株の投資失敗例

個別株への投資はやめとけと言われるのは、数多くの投資失敗例があるからです。当然、投資経験を積み知識をつけることで勝つ可能性を高めることは可能ですが、それでも損をしてしまうことがあるのが個別株投資です。ここでは、失敗例をいくつか見てみましょう。

ポイント

  • メディアで話題の銘柄を購入する
  • 先進技術に関連する銘柄への投資
  • テクニカル分析を過信してしまう

個別株の失敗例1. メディアで話題の銘柄を購入する

株式投資に関する情報は世の中に溢れています。メディアも、雑誌、SNS、ブログ等様々です。中には「これから儲かる株はこれだ!」といった前のめりな表現で煽るような記事もあります。

媒体で紹介される銘柄は、既に大勢の人が目をつけているものですので、買い漁られた後で高値になっている可能性があります。当然、中長期的な業績拡大が見込まれる場合は、メディアで取り上げられた後も株価上昇することはありますが、株価は通常将来的な成長も今の値に盛り込まれているものです。

こうした情報に流されて購入すると高値で掴まされることになり、売り時が難しくなることもあるでしょう。予想者は自分なりの根拠で好き勝手なことを述べていますが、そこに絶対はないので、あくまで投資家の自己責任で投資するしかありません。

個別株の失敗例2. 先進技術に関連する銘柄への投資

先進技術に関連する銘柄への投資は魅力的です。なぜなら、将来その技術が広く普及することで、株価が跳ね上がることもあり得るからです。最近では、「AI」「DX」「量子コンピュータ」といったものが関連キーワードとして挙げられます。

但し、その技術の行く末はその分野の専門家でも予想がつきません。対面で販売する証券マンが盛んにテクノロジー銘柄として推してくることがありますが、当然証券会社の人もその技術が発展し普及するかなど分かるはずがありません。

直近では、DX関連株で名案が分かれました。例えばビデオ会議で有名なZoomがありますが、コロナ下における有望銘柄として急騰しましたが、その後急落しています。タイミングの問題という点もありますが、先進技術はその先行きが読みにくいというケースです。

個別株の失敗例3. テクニカル分析を過信してしまう

これは熟練者に多い失敗例ですが、チャートや各種指標を分析して売買の経験を積むと自分なりの勝ちパターンというのが見えてきます。テクニカル分析も多くの指標があり、市場全体のトレンドを読むものや、そのトレンドの大きさや兆しをキャッチするもの、特徴的なパターンから将来株価を予測するもの等があります。

テクニカル分析を過信し、それのみで投資行動を行うと失敗することがあります。例えば先ほどの突発的な事象はチャートからでは当然予測はできませんが、日頃から経済動向のニュースにも気を配っていれば避けられるリスクもあります。

つまり、個別株投資には「こうしたら勝てる」というものがないので、日々各種の情報を広く収集し、分析することが重要です。それにより大きな損失を被ることや、利益を得る機会を逃すことを防げるでしょう。

個別株を投資初心者におすすめしない理由

個別株をおすすめしない理由

個別株は、投資初心者にはおすすめしない金融商品です。個別株は、投資に関わる多くの判断や作業を投資家自身が行うことが金融商品としての特徴です。他の金融商品であれば金融機関に任せられるようなことを、投資家が自力で行う必要があるので、投資初心者にはハードルが高くなります。投資初心者におすすめしない理由をいくつか挙げてみます。

ポイント

  • 情報収集と分析の量が膨大で買うべき銘柄が分からない
  • ポートフォリオの分散投資を図ることが難しい
  • 毎日の情報収集やニュースのチェックが大変

情報収集と分析の量が膨大で買うべき銘柄が分からない

特定の銘柄の価値が将来上がるかどうかを予測することは大変難しいです。もちろん、自分なりの根拠を持って予測することはできますし、有名な大企業であれば財務基盤も堅実である場合が多く安心感があり、成長する期待も持てます。

但し、「個別株が難しい理由やリスク」の章でも述べたように、どんな優良企業、大企業であってもその株価は市場に翻弄されます。東京証券取引所のプライム企業だけでも1,800強ある中から、儲かる可能性がある銘柄を選択し、買うタイミングを選ぶためには、膨大な情報収集と分析が必要であり初心者にとっては至難の技です。

通常、企業分析をする際には決算書を参照することが多いですが、財務諸表を読む能力も必要となります。複数企業の財務状況を横並びで比較して良し悪しを判断するには、相当な知識と経験が必要なため、ハードルが高いでしょう。

ポートフォリオの分散投資を図ることが難しい

一般に分散投資と言えば、複数の金融商品に分散して投資を行いリスクの平準化を図るものです。しかし、個別株に投資する場合にも分散は意識した方が良いです。

複数銘柄を保有する場合に業種に偏りがあると、先のコロナやウクライナ侵攻のような事象が発生した場合に、大きく損失を抱える可能性があります。また、最近の異常気象を見れば、地理的な要因も考慮する必要があります。ある企業の工場が洪水等の被害を受ければ、企業業績への影響は必至です。個別株の対象を海外にも広げた場合には、為替リスクの分散も検討する必要があるでしょう。

有望な銘柄を選別するだけでも大変ですが、分散投資まで考えれば更に負荷が大きくなることも、初心者に向かない理由の1つです。

毎日の情報収集やニュースのチェックが大変

個別株は買って終わりではありません。毎日その値動きをチェックする必要があります。日々の値動きで一喜一憂する必要はありませんが、市場で何か起きていないか、保有する銘柄固有で特徴的な動きをしていないか等を注意深く観察する必要があります。

また、値動きやチャートだけでなく、新聞やニュースから経済全体の動きや事件、個別の企業の業績に関わる出来事を拾い集め、今後の株価にどのような影響があるか予測します。

働きながら調査・分析の時間を確保することはなかなか容易ではありません。そのような場合には、日夜株価を見続けるデイトレーダーのような投資の仕方ではなく、中長期でリターンを狙う戦略が良いでしょう。

個別株が向いている人・向いていない人

個別株が向いている人・向いていない人
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個別株は投資初心者にはおすすめしないという話をしてきましたが、金融商品として魅力がないかと言うと、そんなことはありません。株主優待のように、他の金融商品にはない面白みもあるので、それを目当てにする人もいます。

ここでは、個別株投資に向いている人と向いていない人の特徴を挙げてみます。

ポイント

  • 個別株が向いている人
  • 個別株が向いていない人

個別株が向いている人

個別株に向いているのは、これまで述べてきたような大変さを乗り切れるような人です。特徴としては以下が挙げられます。

  • 情報収集を厭わない
  • 判断力がある
  • 流されない

情報収集を厭わないという点は重要です。これを怠ると、投資ではなくギャンブルになってしまいます。最初のうちは情報量の多さに苦労するでしょうが、成功と失敗の経験を積むことで、ポイントが掴めてきます。好奇心と忍耐力を持って、継続することが必要です。

同時に、集めた情報を元に的確な判断をしていくことになります。特に難しいと言われるのが、損切りの判断です。個別株投資では、買った値段より株価が下がることは珍しくありません。これ以上傷口を広げないという判断をするか、株価が戻るのを待つのかは、個別株投資において重要ポイントです。

また、流されないことも重要です。過去のケースを振り返れば、一時の根拠なき熱狂と呼べるような値動きもありました。波に乗り遅れまいと焦って売買するとうまくいかないこともありますので、冷静に市場を見守ることが必要です。

これ以外にも、株主優待に強く興味がある方や、応援したい企業がある方は、損得抜きで個別株投資をしても良いと思います。

個別株が向いていない人

一方、個別株投資が向いていない人もいます。

  • めんどくさがり
  • 無関心
  • ギャンブル好き

個別株投資に必勝法はありません。しかし、情報収集や研究を積み重ねることで、勝つ可能性を高めることは可能です。そのような努力が難しい人や時間が取れない人には向かないと言えます。

また、購入してほったらかしというのも良くありません。常に関心を持ち、人の意見に流されることなく投資行動を継続していく必要があります。投資に限った話ではないかもしれませんが、世の中の動きにアンテナを高く張っていれば、必要な情報の収集と適切な判断の支えになるでしょう。

個別株投資はギャンブルではありません。ギャンブルでは一発逆転を狙うことがありますが、個別株投資にそのような行動はないからです。ハイリスク・ハイリターンの原則はありますが、投資は適切なリスク管理を行ってリターンを狙う行動です。

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詳細な投資分析によるバリュー投資を中心に実践しており、短期的な利益追求ではなく安全性を追求しながら中長期的な利益を求めているヘッジファンド。

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個別株よりETF(インデックスなど)やアクティブ投信の方が良い?

個別株とETFやアクティブ投信はどちらが良いか

投資初心者には、個別株よりもETF(インデックスなど)や投資信託の方が向いていると言えます。その理由は、手数料はかかりますが個人では難しい情報収集やリスク管理を、金融機関側で一部行ってくれるからです。それぞれの金融商品について簡単にご説明します。

ポイント

  • ETF(インデックス)は分散投資ができる
  • アクティブ投信は金融機関が調査・分析を行ってくれる

ETF(インデックス)は分散投資ができる

ETFとは、特定の指数(インデックス)等に連動するように設計された投資信託です。指数とは、日本株であれば日経平均やTOPIXが該当し、その指数に組み込まれた銘柄全てに時価に応じて投資できることが特徴です。

個別株投資よりおすすめするポイントは、個別の株式の値動きに捉われる必要がないことと、分散投資ができることです。ETFは、個別株と同じく取引所で売買できる1つの金融商品であり指数と同じ値動きをするので、当然日々動きを見る必要はありますが、数多くの銘柄のチェックをする手間がかかりません。

また、指数に含まれる銘柄全てに投資することになるので、業種の偏りは少なくなり上場株式の中で分散投資が図れることになります。

アクティブ投信は金融機関が調査・分析を行ってくれる

個別株は急に値上がりすることがあることも魅力の1つです。積極的にリターンを狙いにいきたければ、アクティブ投信も1つの選択肢です。アクティブ投信は投資信託ですが、先ほどのETFとは違い指数を上回る成果を目指すものです。

投資信託はアセットマネジメントという金融機関が組成しますが、金融機関が調査・分析して選定したリターンを狙える優良銘柄を組み合わせているのがアクティブ投信です。専門家が調査や分析をするので、その分手数料はETFより高くなります。

こちらは、投資家自身で調査・分析を行う必要がないというのがメリットです。但し、専門家が調査・分析したとしても必ず良いパフォーマンスが得られるわけではない点には注意が必要です。

個別株が「難しい」「やめとけ」と言われる理由をおさらい

個別株は難しい点があることや、やめとけと言われる理由を述べてきました。自力で膨大な情報収集や分析、分散を図ることが難しいことや、日々のチェックが大変なことが主な理由でした。

但しそれは、初心者にとってハードルが高い点があるということであり、自身で調査・分析して勝ちパターンを見出すことが好きな人には、研究しがいのある金融商品でしょう。

自分が見出した企業の事業や技術が将来世の中に認められ大きく羽ばたき、それにより購入した株価が高騰すれば、大きな喜びを得られるはずです。

重要なのは、自身の投資戦略や投資スタイルに合わせて投資する金融商品を決めることです。そのためには、ある程度の情報収集や勉強が必要になりますし、自身の性格等も考慮しながら投資を実行すると良いでしょう。

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