住友化学の企業概要
住友化学とは1913年、愛媛県新居浜の別子銅山で銅の製錬の際に生じる排ガスの煙害を解決するため、ガスの原因である亜硫酸ガスから肥料を製造することを目的に設立されました。
その背景が関係しているのか、原材料寄りの製造・加工製品に強い特長があります。現在の会長である十倉雅和氏は経団連(経済団体連合会)の会長として、2021年から日本財界のトップを担っています。
会社名 | 住友化学株式会社 |
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設立 | 1925年6月1日 |
本社所在地 | (東京) 東京都中央区日本橋2丁目7-1 東京日本橋タワー7階 (大阪) 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5-33 住友ビル |
代表者 | 代表取締役社長 社長執行役員 岩田 圭一 |
従業員数 | 単体:6,637名・連結・33,572名 (2023年3月31日現在) |
住友化学の事業内容
- エッセンシャルケミカルズ部門
- エネルギー・機能材料部門
- 情報電子化学部門
- 健康・農業関連事業部門
- 医薬品部門
エッセンシャルケミカルズ部門
自動車などの断熱材やクッション材に使われるポリウレタン、医薬品や化粧品に使われるプロピレングリコールの材料となるプロピレンオキサイドが主力です。また軽量で加工性に優れているポリプロピレンにおいても高いシェアを発揮しています。柔軟性のあるポリエチレンは、一般消費者へも馴染み深い素材です。繊維系の樹脂やエネルギー材料に強いことがわかります。
エネルギー・機能材料部門
化成品事業部(アルミニウムやラバーケミカル)と、機能樹脂事業部(機能性ポリマーや剛性ゴムなど)に分かれます。樹脂系の高い開発ノウハウを生かして、高耐熱性の高い間接素材も得意分野です。研究開発の蓄積を前提とし、今日の収益部署として支えている事業部といえるでしょう。
情報電子化学部門
光学領域のフィルムや車載用偏光板、また半導体領域の電子材料を軸とした事業部です。カラーフィルターの製造に使用されるフラットパネルディスプレイにおいても高い技術を誇っています。半導体やプリント基板に使われる感光性樹脂であるスミレジストは、同社の得意とする樹脂領域からの電子材料への応用技術といえるでしょう。
健康・農業関連事業部門
殺菌剤や除草剤、殺菌剤、防虫剤、害虫駆除剤などでシェアを発揮しています。消費者市場にて広く知られている商品の原素材として提供している材料も多いと考えられます。また飼料向けの添加物も得意分野です。日本や世界の好技術の一次産業を支える、縁の下の力持ちといえるでしょう。
医薬品部門
医療用医薬品を提供する住友ファーマと、診断用医薬品を提供する日本メジフィジックスの子会社2社で展開しています。日本メジ社では前立腺がんの治療や認知症の診断、またはFDG、PET検査といった高品質の検査ノウハウを提供しています。PET検査薬はこれまでより簡易的なプロセスのがんの罹患可能性を検査する画期的な技術で、人間ドックなどを通して利用者が増えています。
住友化学の業績推移|売上・営業利益
2017年から2021年までは目減りしていましたが、2022年にマイナス方向に大きく転換しています。営業利益ベースから約309億円の赤字を計上、約465億円の当期損失となりました。過去最高の赤字額です。同業の化学大手(三菱ケミカル・三井化学・旭化成)各社は800億円前後の最終利益を維持したものの、住友化学のみ大きく水を空けられた印象です。
事業レポートを分析すると、特定の領域が悪いわけではないことがわかります。エッセンシャルケミカルズ事業、医薬品事業ともども数百億円の損失を計上し、会社全体では通期内において下方修正に追い込まれました。要因としては特許切れ、市況変動の影響など単一的ではないため、多方面へのテコ入れが不可欠な状況です。
住友化学の株価推移|過去3年のチャート
住友化学のチャートから、最新の株価を見ていきましょう。2年間の下記チャートを見ると、一方向的な右肩下がりのチャートが目に入ります。財務諸表上の下落は2022年になってからですが、それまで株価が安定していたわけではなく、目減りする業績とともに株価推移も下落していたことがわかります。
- 2022年〜2023年にかけて株価が下落
- 2022年〜2022年にかけて株価が横ばい
2022年〜2023年にかけて株価が下落
出典:Yahoo!ファイナンス
それまでも兆しがあったとはいえ、2022年から2023年にかけて1株あたり約200円という著しい下落幅を記録しています。これは突発的な要因によるものではなく、四半期報告などで何度も懸念は示されてきたものの、抜本的な解決策を取ることができず、漸減的に株価が下がり続けたことに対する市場の評価を意味します。
通常企業側の施策で多少反発するものですが、その動きが長く継続しないところを見ると、何も手を打てなかったか、打った手が根本的ではないと評価された結果といえるでしょう。
2022年〜2022年にかけて株価が横ばい
出典:Yahoo!ファイナンス
前項の本格的な下落は2022年7月からで、それまでの株価はもみ合い状況ともいえます。当時の決算は目減りしていますが、まだ投資家にとって判断は分かれていることがわかります。その流れが一気に悪化したのが2022年7月以降といえるでしょう。2023年時点から見て株価をこの2022年レートに戻すには、事業部転換もともなう抜本的な改革が求められます。経営陣が述べた「創業以来の危機的状況」という言葉も、あながち誇張表現ではないことが読み取れる株価レートといえるでしょう。
住友化学の株主還元|配当・自社株買い
住友化学の株主還元について見ていきます。配当は自社株買いはどのように動いているのでしょうか。株価下落基調のなかですが、配当はしっかりと継続しています。どのような背景が考えられるでしょうか。
- 住友化学の一株配当・配当利回り推移
- 住友化学の自社株買い推移
住友化学の一株配当・配当利回り推移
出典:株主還元・配当|住友化学
中間 | 期末 | |
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2023年度第143期(2024年3月期) | 6円 | 6円(予想) |
2022年度第142期(2023年3月期) | 12円 | 6円 |
2021年度第141期(2022年3月期) | 10円 | 14円 |
最新期の2023年度になって中間配当・期末配当(予想値)いずれも減額されているものの、2022年から株価が下落している割には配当は高く維持されているといえるでしょう。個人投資家の数や流動株の割合を鑑みての戦略である可能性が高いです。
住友化学の自社株買い推移
実施月 | 取得株式数 |
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2019年3月(連結) | 2700万円 |
2020年3月(連結) | 700万円 |
2021年3月(連結) | 500万円 |
2022年3月(連結) | 900万円 |
2023年3月(連結) | 600万円 |
出典:IRBANK
住友化学は、規模は小さいながらも、継続的に自社株買いを継続しているイメージです。株価の下落を見ると、自社株買いの効果が見られず株価が下がっているといえる反面、自社株買いが株価抑制を抑えていると見る向きもできるでしょう。今後も同社による自社株買いは継続していくものと考えられます。
住友化学の株価が低い理由を解説
住友化学の株価が低い理由はどのような点にあるのでしょうか。長く伝統のある企業だからこそ、一足入り込んだら抜けられない株価低迷に苦しんでいる姿を見て取ることができます。
- 複合的かつ長期的な業績低迷が続く
- 株価が業績低迷を織り込んだ後に下落
- 医薬品事業が収益源になっていない
複合的かつ長期的な業績低迷が続く
特定の事業部の不調や一時的な業績悪化では、ここまでの株価低迷になる可能性は低いでしょう。住友化学の問題点は、業績低迷が複合的、かつ長期的に続いている点です。1株300円台まで落ち込んだ現時点から見れば、ここまで下落する前に何か打つ手があったようにも思えますが、効果的と思える手を打っても株価が反応せず、ここまで下落してしまった印象を持ちます。繰り返しになりますが経営陣が述べている「創業以来の危機」に対してゼロベースでどのような手を打っていけるのかが今後の論点となるでしょう。経済ニュースなどで特集されることも増えてきていますから、打つ手に注目です。
株価が業績低迷を織り込んだ後に下落
2021年までの業績を見ると、株価が下落する材料は確かにあります。ただ、その時点では反発要因があったのも事実です。業績悪化を十分に織り込んで株価が下落したうえで、2022年の大規模が業績悪化が報じられるという形は、それまで織り込まれていた株価低迷を加速させるのに充分なものでした。2023年以降、更に株価下落が止まらない様相が懸念されるばかりです。
医薬品株などは、このように低迷期でも状況を一転させる新薬などが発売され、相場にインパクトを与えます。住友化学は直接消費者に商品を販売しているわけではないため、多少趣は異なりますが、株価引上げ策に期待したいところです。
医薬品事業が収益源になっていない
ひとつの見方でしかありませんが、なんとか業績を維持している化学大手の他社と住友化学の違いは、医薬品が収益源になっていないことと指摘されています。三井化学や旭化成がヒット商品を飛ばしていることに対して、住友化学の医薬品事業において鍵を握る住友ファーマは世界的な競争が激化する中枢神経系に投資をしています。結果論ではありますが、その時々の経営判断に問題があったという指摘も受け入れなくてはならないでしょう。
住友化学では2025年3月期の業績回復を目指して、事業整理を踏まえたテコ入れを開始しています。株価の下落が抜き差しならなくなっている現在、短期に効果的な効果が見えてくるのか、注力する必要があります。
住友化学の株価に対する投資家の口コミ
経団連会長が万博は6年前から議論している。今の事態は想定していなかったことで理解してですって!
すごいね、そりゃ住友化学が赤字で株価が駄々下がりもわかるダメ経営者の典型です❗
何処が赤字を補てんするのかね、経済界か府民か国民か?
万博止めろ、中止だ!
直ぐに止めろ。引用:X
配当金投資だから株価は気にするな!って主張を見るけど、クマは全くそうは思わないクマね
例えば、何で住友化学の株価があそこまで下がってるかは考えれば分かるし、それでも銘柄を持ち続けたいかはちゃんと考えないとクマ。
株価は企業の成績表みたいなもの(煽り屋のいたずらが入らない前提だけどクマ)だと思っていて、株価が下がるということは何かしら要因があって、それが今後のシナリオ(特に減配/無配)に影響するのかどうかはちゃんと確認しないとダメクマよ
株価に揺られまくる必要はないけど、配当金投資だから気にしないというのもおかしな話だと思うクマー引用:X
万博協会会長。
経団連会長。
万博やってる場合じゃないねぇ。株価もどんどん下がるー。♀️
住友化学の最悪決算招いた経団連会長の経営判断引用:X
戸倉の出身母体でである、住友化学。株価は2018年880円から今日の330円まで62%超の下落。戸倉のポンコツ経営で不採算事業に手を染めその負債が多額であるにもかかわらず、自民党への献金額はトヨタの次の第2位。
引用:X
アステラス製薬と住友化学の株価が奈落の底へ⬇️
とくに住友化学は業績も株価も酷い状態なのに経団連会長が十倉(住友化学)ってどうなの!?引用:X
インターネット上の意見はすべてと言っていいほど、株価低迷への糾弾が目立ちます。また現会長が経団連の会長として、やはりハレーションが強い大阪万博の陣頭指揮を取っているのも、株価面ではあまり芳しくないことといえるでしょう。
住友化学の株価は今後どうなるか将来性を予想
住友化学の株価は今後どうなるのでしょうか。長期間におよぶ株価低迷のため、小手先のニュースでは反転する可能性はあまり見込めないでしょう。長期的に見て住友化学の印象が変わるのは、2つのポイントがあると考えます。
- 構造改革が進めば企業全体の印象も変わるのでは
- 大阪万博の陣頭指揮において目立つのは悪手では
構造改革が進めば企業全体の印象も変わるのでは
2023年の決算悪化をもって、経営陣からは抜本的な構造改革が叫ばれています。これが声だけで終わらず、実態を伴うものになれば、株価の回復要因になるかもしれません。2024年2月に予想される2023年度の第三四半期、および2024年春の通期発表が大きなポイントになるでしょう。
構造改革は一定の時間が必要とはいえ、この株価の低迷具合では残された時間もそれほどないように考えられます。スピード感を持った改革と、改革を的確に外にアピールする体制が必要といえるでしょう。
大阪万博の陣頭指揮において目立つのは悪手では
口コミでも目立った、現会長の財界への関与は投資家のあいだでも見解が分かれます。特に費用増大がネガティブに取られる大阪万博への陣頭指揮は、株価回復に向けて推奨できるものではないでしょう。経団連の会長職が会社経営にプラスとなることは疑う余地がないため、会社を引っ張る若手経営人材の引き上げなどが必要ではないかと考えます。とはいえ伝統的な企業であるがために、部署同士のヒエラルキーに巻き込まれることなく、企業一体となって押し上げる体制づくりが不可欠といえるでしょう。
住友化学の業績・株価・配当についてまとめ
住友化学の株価についてまとめました。長期的に続く同社の株価低迷は、一時的な打ち手で回復するものとは思えません。ピンチはチャンスではないですが、だからこそ根本的な構造改革が効果を持つのもこのタイミングです。人材の登用も含めた、企業の生まれ変わりに期待したいと思います。明治時代から続く伝統的な企業のため、必ず復活の兆しを見せてくれると期待しましょう。
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