三井住友建設の企業概要
三井住友建設とは、土木建設や不動産に関する開発を行う準大手のゼネコンです。特徴的なのは三井グループと住友グループの名前が社名に入っていることで、2003年に三井建設が住友建設を合併した歴史があります。また三井住友銀行の資本も入っています。
企業概要は下表の通りです。
企業名 | 三井住友建設株式会社 |
---|---|
設立 | 1941年(昭和16年)10月14日 |
資本金 | 120億円 |
従業員数 | 連結:5,449名(2022年度末時点) |
三井住友建設の事業内容
三井住友建設の事業内容を確認します。規模は準大手ですがゼネコンなので、建設や不動産開発に関して広く事業を手掛けています。拠点は日本のみならず海外にも広げているので、海外事業についてもご説明します。
- 土木事業部門
- 建築事業部門
- 海外事業部門
- 新規・建設周辺事業部門
土木事業部門
土木事業部門では、橋梁やトンネル、地盤基礎等の鉄筋コンクリートを使った大規模施設を手掛けています。今後はカーボンニュートラルの進展に伴い再生可能エネルギー関連施設の新規建設や、増加している老朽化インフラの更新工事等、成長余地のある事業領域です。それらの需要に合わせ、DX推進による効率化も進められています。
建築事業部門
建築事業部門は、住宅、宿泊施設、商業施設、オフィスビル、物流倉庫等の建築が事業内容となります。新型コロナウイルス終息後の景気回復で建築需要は高まっていますが、一方で資源やエネルギー価格の上昇、労働力不足といったリスクもあるため、競争環境は激しいです。今後は国内の物流問題もあり、物流施設建設の伸びが期待されます。
海外事業部門
海外事業部門では、海外において土木事業や建築事業を進めています。アジア、特にインド、フィリピン、グアムにおいて積極的に事業を推進し、現地で通勤鉄道の建設、道路の建造、プラント施設の土木工事から建設まで手掛けています。
事業拡大に合わせて現地採用、教育も加速しており、人材の強化を課題として取り組んでいます。
新規・建設周辺事業部門
新規・建設周辺事業部門では、新規・周辺領域事業の創出、再エネ事業の拡大、脱炭素関連技術・サービスの開発、次世代生産システムの導入に取り組み、2023年度は再生エネルギーに関連する取り組みを進めています。
その一つとして水上太陽光発電が挙げられ、ダムや海洋に太陽光パネルを浮かべて発電をする実証実験を行なっており、今後の事業化を目指しています。
三井住友建設の業績推移|売上・営業利益
三井住友建設の業績推移を、売上と営業利益から確認します。売上は2021年度に向けて低下し、その後持ち直し傾向にあります。営業利益もやはり2021年度に赤字に陥り、その翌年度も2年連続の大幅な減少を示しています。
出典:三井住友建設 HP
この原因は、詳細は後述しますが、タワーマンション建設案件において問題を起こしたことです。またこれにより、財務の健全性を示す自己資本比率も悪化しています。一般的に建設業は40%程度と言われる自己資本比率が、2022年度には約15%まで落ち込んでいます。
出典:三井住友建設 HP
これらの指標から、三井住友建設の業績は芳しくない状態にあると言えるため、その原因と今後の対策を経営情報から探ることが重要になります。
三井住友建設の株価推移|過去10年のチャート
三井住友建設の株価チャートは、20年前に6,000円をつけて以降、現在はその10分の1以下に落ち込んでおり低迷したままです。長期的に見て優良銘柄とは言いにくい、その理由はどこにあるのか探ってみます。
- 2014〜2020年にかけて株価が暴落
- 2021〜2024年にかけて株価が低迷
2014〜2020年にかけて株価が暴落
出典:Yahoo!ファイナンス
20年前からは大きく落ち込んだ株価でしたが、2014年から2015年にかけては上昇傾向を示していました。そこから大きく下落した原因は、当時大きなニュースにもなった問題物件や事故によるものです。
2007年に完成した横浜にある「パークシティLaLa横浜」という700戸を超える大型マンションを有名にしたのは、「傾くマンション」という悪しきニュースです。ビー玉が転がる床や建て付けの悪い扉のニュースが本格的に流れたのは2015年からです。
マンションが傾いた原因は、強固な地盤に届く長さで杭を打たなかったことだという検証結果が出ていますが、その設計を担当したのが三井住友建設でした。現在は建て直されて住人が戻り住んでいますが、三井住友建設は入札工事指名停止や社会的評判の悪化という大ダメージを負いました。
これだけでなく、2015年2016年と立て続けに橋桁の落下事故も引き起こしており、株価にもその影響が現れ、持ち直しそうになるとまた暴落することを繰り返しています。
2021〜2024年にかけて株価が低迷
出典:Yahoo!ファイナンス
大規模マンションの傾き問題や橋桁落下事故以降も、株価は低迷しています。その背景には、業績を立て直すどころかまた新たな問題物件を発生させたことにあります。2022年度における営業利益マイナスをもたらしたのは、「麻布台レジデンス」という64階建の超高層タワーマンションに関する工事遅延と建築部材の不具合です。
「麻布台レジデンス」は、森ビルが手掛けた大規模開発で昨年末に開業した複合施設「麻布台ヒルズ」の一角にあります。本来は既に完成していなければならないタワーマンションですが、いまだ工事中です。
一連の問題物件や事故が長期に渡る株価低迷を招いていることが分かります。
三井住友建設の株主還元|配当・自社株買い
三井住友建設の株主還元施策として、配当の推移や自社株買いの状況を確認します。直近数年でも損失計上していることや長期の株価低迷の中で、株主に対してどのような還元をしているかは注目すべきでしょう。
- 三井住友建設の一株配当・配当利回り推移
- 三井住友建設の自社株買い推移
三井住友建設の一株配当・配当利回り推移
三井住友建設の一株配当は下グラフの通りで、増減はあるものの毎年実施されています。巨額の損失を計上したにもかかわらず配当が出たことは、投資家にとっては良いニュースに見えますが、実態はこれ以上の株価暴落を避けるために財務余力を超えて配当に回した可能性もあります。
また、配当利回りは下のグラフの通りです。4%程度で推移しており、プライム銘柄の一般的な水準である約2%を超えていることから、こちらも一見魅力的な銘柄に映りますが、実際は株価維持のために無理をしていることを示すとも見受けられます。
出典:みんかぶ
三井住友建設の自社株買い推移
三井住友建設の自社株買いの推移は、下表の通りです。自社株買いは一般的に一株あたりの価値を高める効果があるため、株主還元施策の一環としてとらえらえます。また財務健全化という目的もあり、三井住友建設もこの2点を施策実行の理由として挙げています。
年度 | 金額 |
---|---|
2018年 | 14.9億円 |
2019年 | 8.4億円 |
2020年 | 9.9億円 |
2021年 | 9.9億円 |
出典:IRBANK
今後については、「内部留保の充実を図りつつ業績と経営環境を総合的に判断して株主還元を進める」(出典:三井住友建設 HP)としていることから、配当の実行及び自社株買いが続くかは不透明と言えるでしょう。
三井住友建設の株価はなぜ安いのか解説
三井住友建設の株価がなぜ安いか、その根本的な理由を探る必要があります。ここでは企業としてどのような問題を抱えているかということに焦点をあて、3点想定される理由を挙げます。
- 度重なる不祥事による投資家からの敬遠
- 品質、リスク管理能力が低く大型案件受注に不安
- 内部抗争によるメインバンクとの関係性悪化
度重なる不祥事による投資家からの敬遠
株価低迷の最も大きな要因は、繰り返しになりますが度重なる不祥事です。「パークシティLaLa横浜」の物件ではデータの改ざんを行なっていたため、悪質な事件だと認識されました。
その後毎年のように問題を起こしていたことから、投資家は更に問題が起きるのではという疑念を抱くことになり、避けられた原因となりました。三井住友建設が手掛ける工事は、都営地下鉄大江戸線や新東名高速道路といった重要インフラもあるため、何か問題があった場合の被害も、それによってもたらされる損失も甚大です。
長期間、事故や問題を起こしていなければ企業体質の改善が認められ投資家を呼び戻すことができるでしょうが、直近の「麻布台レジデンス」問題もあり、しばらくは投資家から敬遠されると推察されます。
品質、リスク管理能力が低く大型案件受注に不安
三井住友建設が起こした問題工事は、最も最近のものでは「麻布レジデンス」ですが、こちらの原因は後述します。
それ以外に問題案件については、工事管理の杜撰さ、データ改ざん、足場の固定ができていなかった等、作業品質やリスク管理、現場へのリソース投入不足が原因となっています。
こうしたことから、三井住友建設は大型案件を受注しても適切な品質、リスク管理を行う能力が不足している可能性があり、今後、業績改善に寄与するような工事を受託しても株価に直接的にプラスになるか不明確です。管理能力の不足が株価低迷につながっていると考えられます。
内部抗争によるメインバンクとの関係性悪化
前社長の近藤重敏氏は2021年4月に就任しました。近藤氏は資本関係のある三井住友銀行の出身ですが、経営状況の悪いゼネコンのトップに銀行出身者が就いたことは、身売りを予感させることから当時もインパクトを与えました。
その後、2024年4月1日付で柴田敏雄氏が近藤氏の後任として社長に就任しましたが、銀行出身者がトップにいることをよく思わない生え抜き組が反乱しての社長交代人事だったとも言われています。
内情は不明ですが、仮にこれが真実だとすると、メインバンクである三井住友銀行との関係性が懸念されます。全社一丸となって業績改善に取り組むべき時期に内紛があるとしたら、当然ながら投資家には悪いニュースと受け止められるでしょう。
三井住友建設の株価に関する掲示板の口コミ
ここからは三井住友建設の株を保有する投資家の声を、掲示板の口コミからいくつかピックアップしてみます。
相変らず横横の動きじゃ500も行かずでこのままじゃこの株は死んでるな
引用:Yahoo!ファイナンス
しまった君
年初来安値タイまで僅か2円。何らIRも出せずジリ貧株価。泡沫経営に回帰して
光は見えず株主はイライラさせられる。だから近藤前社長のままが良かったんだ。
いつになったらポジティブサプライズを出すんや?引用:Yahoo!ファイナンス
現在特筆するような懸案事案はないと言い続けて、3ヶ月後には何百億も損金出すことをくりかえしています。そんなことわかってるはずだし、わからなないならおつむが大問題。こんな詐欺会社が上場してたらあかんやろ。市場から去りなさい。
引用:Yahoo!ファイナンス
もう一回くらい、500億捨てるんだろうが・・・
もう織り込み済みなの?引用:Yahoo!ファイナンス
十数年前90%の減資をしたね。大損した!!。いきなりの減資びっくりしたよ!!!。
名前で買ってはいけない。株は恐いですね。工事くらいは確りやってください。引用:Yahoo!ファイナンス
案の定ではありますが、前向きな口コミは見受けられません。やはり、何度も繰り返す問題工事、経営幹部の責任に関する言及、更なる損失の発生等、ネガティブな投稿が多いです。
他の銘柄は株価が上下するため好材料を探るようなコメントがあるものですが、三井住友建設に関しては、今後の株価上昇に期待をするような材料が挙げられていません。
また、円安による資材高騰等による原価高騰で利益を圧迫することについても不安が述べられています。現時点では株式を購入するに足る材料がないことが、口コミからも確認できます。
三井住友建設が500億円以上の損失を招いた不祥事
三井住友建設は、2021年度に219億円、2022年度に315億円、合わせて534億円の損失を計上しています。この原因が先の「麻布レジデンス」ですが、第三者委員会による検証が行われ、三井住友建設がHP上でその結果を報告しています(出典:三井住友建設 調査報告書)。
この報告書によると問題の発生原因は以下のものとしています。
- 大深度地下工事を伴う難度の高い工事における大幅な工法変更が発生
- 急速施工工法に使用した工場製作部材の一部に製品不具合が発生
更に品質管理に関する見通しの甘さ、部材製作図等管理体制の不十分さ、工場における部材製作管理・検査体制が不十分、不具合防止のための文書化・情報共有の不足等が挙げられています。
前述の通り、品質やリスク管理能力の不足が改めて浮き彫りになった事案と言え、今後の業績や成長に懸念を抱かせる事態となっています。
三井住友建設の株価は今後どうなる?将来性を解説
三井住友建設の株価は今後どうなるのでしょうか。これまでに挙げた問題点に対し、どのような対応が図られるかという点と、外部環境という点から、今後の株価の影響について推察します。
- 再発防止策の効果の発現には時間がかかるため低迷続く
- 資材や労務費の高騰による利益減少が継続
再発防止策の効果の発現には時間がかかるため低迷続く
「麻布レジデンス」問題に関する調査報告書(出典:三井住友建設 調査報告書)を再度確認すると、再発防止策として次の通り記載されています。
- 受注プロセスにおける審査の充実化
- 大規模工事における継続的なモニタリングの徹底
- 外部専門家による不具合検証と再発防止策の提案・実施
- 図面管理に関する対策
- 体制の増強
これらの施策が徹底されるかは今後の活動次第ですが、いずれもリソースを追加投入するものであり、効果の発現には時間を要するため、すぐに収益拡大にはつながらないと言えます。
上記の1〜5以外にも速やかに行う対策が記載されていますが、教育や情報共有の徹底等が挙げられており、少なくとも数ヶ月から1年はかかるでしょう。つまり短期的には株価は上がらない可能性が高く、低迷が続くことが予想されます。
資材や労務費の高騰による利益減少が継続
建設業界全体の問題としては、資材価格の高騰や労働者不足による労務費の上昇により、減価率が悪化していることが指摘できます。下のグラフは国土交通省が発表した建築資材の価格推移のグラフですが、令和4年までに価格が急上昇しており、現在もこの傾向は続いています。
また同じ資料では労働者数の減少も指摘されており、下のグラフの通り人材不足の傾向は明らかです。
こうした状況において各社はDXの推進による効率化や、海外展開等の対策を進めています。三井住友建設でもDX化が進められていますが、現在の円安や物価高の影響を吸収するほどの効果を上げることは難しく、しばらく利益への悪影響は続くと見られ、株価上昇はしばらく先になりそうです。
三井住友建設の業績・株価・配当についてまとめ
ここまで三井住友建設の株価について、事業の状況や株主還元施策等から考察しました。株価は長期で低迷が続いており、過去の不祥事や事故の影響も残っていることから、買い材料はないでしょう。
経済の改善による建築需要や、インフラ老朽化による建て替え等から、建築に関する需要は増加傾向にあると言えますが、敢えて三井住友建設に投資する材料がないため、お勧めはできない銘柄と言えます。
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