日本人がニュージーランドで3億円あったら何年暮らせる？

１.はじめに

ニュージーランドは自然豊かな国として知られ、映画『ロード・オブ・ザ・リング』のロケ地にもなった美しい風景が魅力です。首都はウェリントンですが、最大の都市はオークランドで、公用語は英語とマオリ語です。ニュージーランドは、多文化社会が特徴で、多様な人々が調和して暮らしています。

経済面では、農業や観光業が中心で、乳製品や肉類の輸出が主要な産業です。また、治安が良く、教育や医療水準が非常に高いことも、移住先として人気の理由の一つです。移住者にとって、安心して暮らせる環境が整っています。

本記事では、ニュージーランドの主要都市であるオークランドと、地方都市として人気のあるクライストチャーチを中心に、3億円という資産を元手にどのような生活が可能かを詳しく解説します。ニュージーランドでの生活費や資産運用のポイントも紹介し、理想の移住生活を実現するための情報を提供いたします。

ニュージーランドは日本人にとって人気の移住先の一つですが、移住には一定の条件があります。ビザの取得、永住権の申請、そしてニュージーランド特有の税制や法律への理解が必要です。また、移住希望者が増加傾向にあるため、移民政策の変更にも注意する必要があります。

２.日本人が移住するための条件

ニュージーランドに移住を検討する日本人にとって、ビザの取得は必要不可欠な手続きです。ビザの種類により、提出書類や申請手続きが異なるため、事前に詳細を把握することが重要です。以下では、主なビザの種類とそれぞれの取得条件について説明します。

ニュージーランドでの長期滞在には、以下のビザが一般的です。それぞれのビザは、目的に応じて異なる要件が設定されています。

就労ビザ

ニュージーランドの就労ビザは大きく3種類あります。

一般的なのはテンポラリーワークとして、ニュージーランド国内で需要のあるスキルや資格を有し、ニュージーランド企業から雇用保障を得ている技能職の方が申請するビザになります。

取得の諸条件として、ニュージーランド雇用の障害にならないことなどがあり、また一定の英語力や健康状態を証明する必要があります。

投資家ビザ

ニュージーランドでの投資をする場合、投資家ビザが該当します。このビザは、3年間で一定額をニュージーランドで投資することを条件としており、4年目に投資を維持する必要があります。

はじめに5年間の居住ビザが発行され、48ヵ月の時点で条件を満たしていれば永住権を申請することができます。その後は投資に関する継続条件などはありません。

学生ビザ

ニュージーランドの教育機関で学ぶことを希望する場合、学生ビザを申請する必要があります。

申請者はニュージーランド国内の指定教育機関からの正式な入学許可を得る必要があり、学費や生活費をカバーできる資金証明も求められます。教育水準が高く、多くの留学生がニュージーランドで学びの機会を得ています。

家族関係ビザ

ニュージーランド国民、または永住権保持者の家族として移住する場合、家族関係ビザが必要です。

このビザを取得するには、配偶者やパートナーとの関係が真実であることを証明する書類の提出が求められます。また、扶養能力に関する証明も必要です。

ニュージーランドで一定期間滞在し、条件を満たすと永住権や市民権を取得することが可能です。永住権を取得するには、通常は数年以上ニュージーランドで生活し、犯罪歴がないこと、健康状態や英語力が基準を満たしていることが求められます。永住権を取得すれば、ニュージーランド国内での就労や居住に制限がなくなり、社会保障制度も利用可能となります。

移住のためのビザ申請制度は頻繁に変更される場合があるため、最新情報をニュージーランド移民局の公式サイトで確認することが重要です。

参考：ニュージーランド移民局

３.生活費の詳細

この章では、ニュージーランドの主要都市オークランドと地方都市クライストチャーチにおける生活費を、単身世帯と夫婦世帯に分けて、食費、住居費、交通費、医療費、その他の項目に沿って比較し、どのようにコストが異なるかを見ていきます。

生活費は、ニュージーランドへの移住を考える上で非常に重要な要素です。都市によって、そしてライフスタイルによって大きく変動することを理解しておきましょう。

※2025年2月6日現在 1ニュージーランドドル（NZD）＝85.94円

一人暮らしにおいて、1年に必要な生活費の目安を見ていきます。（あくまで参考値であり、変動する可能性があります）

住居費

オークランドでは、都市部の一人暮らし向けアパートは高額で、中心部のワンルームマンションは週に500 NZDを超えることもあります。特に人気エリアでは家賃が高騰しています。一方、クライストチャーチでは同様の物件が週300～500 NZD程度で見つかる可能性があり、より安価なオプションが多いです。郊外に住むことでさらに家賃を抑えることも可能です。

食費

自炊の頻度や外食の回数によって大きく変動します。オークランドでは外食費が高めですが、国際色豊かなレストランが多く、バラエティに富んだ食文化を楽しむことができます。一方、クライストチャーチでは外食費がやや安価ですが、自炊を積極的に行うことで、どちらの都市でも食費を抑えることが可能です。

交通費

オークランドは公共交通機関が発達しており、電車、バス、フェリーなどを利用できます。AT（Auckland Transport）カードを使用すると、交通費を抑えることができます。クライストチャーチでは公共交通機関が利用可能ですが、路線が少ないため、車を利用する人も多くいます。車を利用する場合は、ガソリン代や維持費、保険料などが追加でかかることを考慮する必要があります。

医療費

ニュージーランドでは公的医療保険制度（ACC）により、医療費が大幅に軽減されますが、一部自己負担が必要です。民間の医療保険に加入することで、カバーできる範囲を広げることも可能です。

その他

光熱費、通信費、娯楽費、日用品などを含みます。オークランドではエンターテインメントの選択肢が多く、支出が増える傾向があります。有料のイベントや観光施設が多い一方で、クライストチャーチは自然豊かな公園や無料で楽しめるアクティビティが多く、支出を抑えやすい環境です。

二人世帯において、1年に必要な生活費の目安を見ていきます。（あくまで参考値であり、変動する可能性があります）

住居費

夫婦世帯の場合、より広い住居が必要になるため、単身世帯よりも住居費が高くなります。オークランドでは2ベッドルームのアパートが週700 NZD以上の相場ですが、クライストチャーチでは週500 NZD程度で同様の物件を見つけることができます。家族構成や希望する住居の広さによって費用は大きく変動します。

食費

世帯人数が増えるため、食費も増加します。オークランドでは輸入食品などが高価ですが、地元のスーパーマーケットを活用することでコストを抑えることが可能です。クライストチャーチでは地元産の食材が比較的安価で手に入ります。自炊を中心とした生活を送ることで、どちらの都市でも効率的に節約ができます。

交通費

夫婦それぞれが交通機関を利用する場合、費用が増加します。クライストチャーチでは車社会の側面が強く、家庭で車を所有する場合、駐車場代や車両維持費が追加で発生します。通勤距離が長い場合は、ガソリン代が生活費の中でも大きな割合を占めることがあります。

医療費

家族の人数が増えると、医療費の負担も増える可能性があります。歯科や眼科の治療は自己負担となる場合が多く、事前に民間保険の加入を検討するのが良いでしょう。また、子供がいる場合は予防接種や健康診断の費用も見込む必要があります。

その他

光熱費、通信費、娯楽費、日用品など。家族が増えるとこれらの費用も増加する傾向があります。外食の頻度やレジャーの種類によっても生活費に大きな差が出るため、ライフスタイルに応じた計画が必要です。

生活費はライフスタイルによって大きく変動するため、上記の金額はあくまでも目安です。家族構成や個人の消費習慣によって、生活費は大きく変わる可能性があります。

４.インフレ率の影響

ニュージーランドでの生活を考える上で、インフレ率の影響は避けて通れません。インフレとは、モノやサービスの価格が継続的に上昇する経済現象であり、私たちの生活費に直接的な影響を与えます。

例えば、現在のニュージーランドで100NZDで購入できるものが、インフレ率3％で推移すると、1年後には103NZD、10年後には約134NZDが必要になります。

仮に、3億円をニュージーランドドルに換金して生活費をそこから捻出する場合、インフレによって同じ生活水準を維持するために必要な金額が増加していきます。このため、インフレ率の変動を予測し、資産運用や生活計画を見直すことが重要です。

ニュージーランドのインフレ率は経済状況によって大きく変動するため、一概に予測することは困難です。特に近年は世界的なインフレ傾向が顕著であり、ニュージーランドでも物価上昇の影響が見られます。3億円という資産をどれだけの期間維持できるかは、このインフレ率によって大きく左右されると言えるでしょう。

IMF（国際通貨基金）のWorld Economic Outlook Database（世界経済見通しデータベース）によると、ニュージーランドのインフレ率は直近6年間で以下のように推移しています。

参考：IMF（世界銀行）World Economic Outlook Database（世界経済見通しデータベース）

上記のように、インフレ率は年によって変動しており、特に2022年には7.2％と大幅に上昇しています。この背景には、世界的なパンデミックや物流の混乱、エネルギー価格の高騰などが影響していると考えられます。2023年にはやや落ち着きを見せたものの、依然として高い水準にあります。

これらのデータは、ニュージーランド生活においてもインフレの影響を強く考慮する必要があることを示しています。特に長期的な生活設計を立てる上では、インフレを見越した資産運用が重要です。資産を効率よく増やし、インフレによる購買力の低下に備えるためには、不動産や株式、インデックスファンドなどへの投資が検討されるべきでしょう。

また、ニュージーランドドル（NZD）と日本円の為替レートも、生活資金の価値に大きく影響を与えます。たとえば円安が進行すれば、換金した資産の価値が減少し、物価上昇と相まって生活費が増加する可能性があります。したがって、為替リスクに対する対策も必要です。

インフレと為替の影響を考慮することで、ニュージーランドでの生活をより安定的に、長期的に続けられる計画を立てることができます。

５.３億円での生活を充実させるには？

3億円という資金は、ニュージーランドで夢のような生活を送るためのパスポートになり得ます。しかし、その夢をより長く、そしてより豊かにするためには、資金を「使う」だけでなく「増やす」という視点を持つことが重要です。そこで考えたいのが「投資」です。適切な資産運用を行うことで、資金を効率よく増やしながら、インフレや為替変動といったリスクに備えることができます。

ここでは、ニュージーランドで活用することができる主な投資方法を5つ紹介します。

ヘッジファンド

ヘッジファンドは、専門家が独自の戦略を用いて世界中の様々な資産に投資を行い、高いリターンを目指す運用方法です。3億円という大きな資金を運用する際には、ヘッジファンドは有力な選択肢の一つとなり得ます。その利点として、高いリターンを期待できる点が挙げられますが、リスクも伴うため、運用会社や戦略を慎重に選ぶことが重要です。

ヘッジファンドは一般的に最低投資額が高いため、高額資産を持つ人に適しており、ニュージーランドのような安定した投資環境で活用すると効果的です。運用のプロに資産を任せながら、積極的に資金を増やす選択肢として検討してみましょう。

投資信託

ヘッジファンドに比べてリスクを抑えながら安定した運用を目指せる投資方法が投資信託です。特に、ニュージーランド証券取引所（NZX）に連動する「インデックスファンド」は初心者でも始めやすく、長期的な資産形成に適しています。インデックスファンドは少額から開始できるため、投資経験が浅い方でも取り組みやすい点が魅力です。

また、投資信託は分散投資を行うことでリスクを軽減できるため、資産の一部を安定的に運用したい場合に非常に有効です。長期的に堅実な資産運用を目指す方におすすめです。

株式投資

株式投資は、企業が発行する株式に資金を投じる方法であり、高い収益が期待できる投資手法の一つです。特に「高配当株投資」は、安定した収益を上げている企業を選ぶことで、定期的に配当金を受け取ることができ、資産を堅実に増やすことが期待できます。

ニュージーランドには、農業関連や観光業など、安定した収益基盤を持つ企業が多いため、それらの株式に投資することで地元経済の恩恵を受けることが可能です。ただし、株式市場は価格の変動が大きいため、定期的に見直しを行いながらリスクを管理することが重要です。

不動産投資

不動産投資は、アパートやマンションといった物件を購入し、家賃収入や物件の値上がり益を得る投資方法です。ニュージーランドでは、特にオークランドやウェリントンといった都市部の不動産需要が高いため、資産運用の選択肢として非常に有力です。

不動産投資の大きな魅力は「レバレッジ」を効かせられる点です。少ない自己資金で大きな投資を行うことができ、長期的な家賃収入を見込むことができます。また、将来的な物件価値の上昇も期待できるため、インフレ対策としても適しています。ただし、不動産市場の変動や管理費なども考慮する必要があります。

プライベートバンク

プライベートバンクは富裕層向けの資産運用サービスで、専属の担当者が顧客一人ひとりに合わせたオーダーメイドの資産運用プランを提供してくれます。預金、投資、不動産など、複数の資産を一括管理できる点が大きな魅力です。

ニュージーランドでもプライベートバンクのサービスを利用することで、国際的な資産運用を行うことができます。特に、高額な資産を効率的に運用したい場合に適しており、長期的な財務計画を立てる際に役立ちます。

3億円を元手にニュージーランドで充実した生活を送るためには、その資金を賢く管理し、長期的な安定を目指すことが必要です。投資は資産を効率的に活用し、インフレや為替リスクに備える有効な手段となります。それぞれの投資方法のメリットとデメリットを理解した上で、自身の目標やリスク許容度に合った選択をすることが重要です。

６.３億円での生活シミュレーション

日本人がニュージーランドで3億円を持って何年生活できるか、いくつかモデルケースをつくってみていきます。

生活コスト：29,000NZDの場合

生活コスト：45,000NZDの場合

生活コスト：74,000NZDの場合

生活コスト：46,000NZDの場合

生活コスト：70,000NZDの場合

生活コスト：116,000NZDの場合

７.まとめ

3億円という大金を持ってニュージーランドに移住する場合、豊かな暮らしを実現できる可能性は高まります。しかし、同時に注意すべき点もいくつか存在します。

まず、物価や為替レート、インフレ率といった経済的要因を常に意識することが重要です。ニュージーランドの主要都市であるオークランドやウェリントンなど、物価の高い地域では支出が増えるため、資金計画を慎重に立てる必要があります。また、為替レートの変動は資産価値に大きな影響を与えるため、円安やニュージーランドドルの価値変動によるリスクにも備える必要があります。さらに、インフレ率の上昇は生活費の増加に直結します。特に近年の世界的なインフレ傾向を考慮すると、インフレに対応できる資産運用を行うことが不可欠です。

これらの経済的要因に加え、想定外の出来事にも備える必要があります。例えば、病気や怪我による高額な医療費、予期しない修繕費や生活費の急な増加、さらには投資における失敗などは、生活設計を大きく狂わせる可能性があります。こうしたリスクを軽減するためには、ニュージーランドの医療保険制度や民間保険への加入を検討し、また資産運用においては分散投資を行うなど、リスク管理を徹底することが重要です。

また、ニュージーランドでの生活を充実させるためには、文化や習慣への理解も欠かせません。多文化社会であるニュージーランドでは、現地の人々とのコミュニケーションや地域コミュニティへの参加を通じて、生活の質を高めることができます。さらに、生活の拠点を選ぶ際には、大都市か地方都市か、ライフスタイルに合わせて慎重に選択することが必要です。

3億円という資産を有効に活用し、ニュージーランドでの生活を成功させるためには、これらの要素を総合的に考慮し、長期的な視点で資金計画を立てることが重要です。また、生活環境や経済状況の変化に合わせて、計画を定期的に見直す柔軟性も求められます。適切な準備と現実的な計画を持つことで、ニュージーランドでの生活をより充実したものにすることができるでしょう。