イオンの企業概要
イオンとは、セブン&アイホールディングスに次ぐ規模の国内第二位を誇る小売業の企業です。以前は「ジャスコ」名で事業展開しており、年配の方はこちらの方が耳馴染みがあるかもしれません。古くは「岡田屋呉服店」が商号であり、スーパーに業務拡大しました。
企業概要は下表の通りです。
(2023年2月時点)
企業名 | イオン株式会社 |
---|---|
設立 | 1926年(大正15年)9月 |
資本金 | 2,200億700万円 |
従業員数 | 444人(グループ、非正規を含めると約57万人) |
イオンの事業内容
イオンの事業内容はスーパーを中心としてその周辺事業も運営することや、「WAON」ポイントを使って利用者の利便性向上、囲い込みも行うことで一大経済圏を作っています。ここでは主要な事業について詳細を確認します。
- GMS(総合スーパー)事業
- SM(スーパーマーケット)事業
- ヘルス&ウエルネス事業
- 総合金融事業
- ディベロッパー事業
- サービス・専門店事業
- 国際事業
- 機能会社・その他
GMS(総合スーパー)事業
GMS(総合スーパー)事業とは、大規模で多くの商品を取り扱うことが特徴の小売業態の1つです。イオングループでは、子会社のイオンリテールと各地域の子会社が運営を担います。イオンでは売上ベースで3割強を占める主力事業です。
郊外に大型店を出店するという戦略を取り、規模の経済を利用し大量商品を仕入れ、低価格で販売しています。またプライベートブランドにも注力している特徴があります。
SM(スーパーマーケット)事業
スーパーマーケット事業は、一括仕入れで低価格商品を提供する戦略はGMSと同様ですが、対象商品は生鮮食品が中心の小売業態です。イオングループでは、「いなげや」、「マックスバリュ」、買収した「ダイエー」ブランドで展開しています。売上ベースでは3割弱を占め、GMSに次ぐ主力事業です。
ヘルス&ウエルネス事業
ヘルス&ウエルネス事業とは、ドラッグストア事業を指します。イオングループでは、ウエルシアホールディングスが主に展開しています。
ウエルシアホールディングスを連結子会社化したのは約10年前ですが、今年の2月にはツルハホールディングスとウエルシアホールディングスの統合が発表されました(出典:NHKニュース)。業界1位と2位の統合であり、ドラッグストア業界において大きなインパクトを与えました。
総合金融事業
総合金融事業とは、管理や企画業務を行うイオンフィナンシャルサービス傘下で、銀行事業、クレジットカード事業、保険事業、住宅ローン事業を抱える事業体です。
商品を購入すれば必ず支払い、つまり決済が発生します。またGMS事業の中では生活のあらゆるシーンに結びつく商品を販売しているため、保険やローンのニーズも発生します。小売業にとって金融業は非常に重要な機能であり、同時に顧客行動の把握や囲い込みにも有効です。
ディベロッパー事業
ディベロッパー事業は子会社のイオンモールが展開し、計画的に開発した大型複合施設事業を指します。GMSを中心として、映画館や複数の専門店で構成されることが特徴の施設です。イオンモールやイオンタウンという名称で展開されています。
サービス・専門店事業
サービス・専門店事業は、専門店を展開する事業です。有名なブランドでは、100円ショップの「キャンドゥ」、シューズ販売の「アスビー」、書籍の「未来屋書店」があり、その他にも旅行代理店や室内遊園地等、様々な事業を展開し、GMSやイオンモール内を中心に店舗を構えています。
国際事業
国際事業とは、イオンモールを海外で展開する事業です。中国では北京・天津・山東省、江蘇・浙江、湖北、広東エリアでモール事業を行い、アセアン地域ではインドネシア、ベトナム、カンボジアに12店舗を開いています。
機能会社・その他
機能会社・その他事業は、上述の事業に分類されない各種機能を担いますが、売上ベースでは各事業を合算しても1%未満です。
事業内容は、各グループ会社でIT・システムの開発・運営、農産物の生産・加工、パン工場運営と様々です。
イオンの業績推移|売上・営業利益
イオンの売上と営業利益の推移を確認しましょう。売上にあたるのが営業収益であり、下のグラフとなります。大きな伸びは見られませんが、堅調に推移していると言えるでしょう。
出典:イオン HP
一方、営業利益を見ると事業別の特徴が見えてきます。主力のGMS事業において、FY2020は赤字を計上しています。ここは新型コロナウイルスが蔓延した時期であり、大型施設に人が集まらなかったことが主な原因です。
出典:イオン HP
また、営業利益率を観察するとイオンのような小売業の特徴が明らかになります。下のグラフは営業利益率を示しますが、GMS事業やスーパーマーケット事業は利益率が1桁台であり低い数値です。イオンの主力事業は利益率が低いため、薄利多売型のモデルであることが分かります。
出典:イオン HP
イオンの株価推移|過去5年のチャート
次にイオンの株価推移をチャートで見てみましょう。イオンの株価は過去10年では2度大きく下落していますが、ここでは2018年の下落後の復活と、コロナによる影響の2面から考えます。
- 2019年〜2020年にかけて株価が高騰
- 2021年〜2022年にかけて株価が上昇
2019年〜2020年にかけて株価が高騰
イオンの株式は2018年に下落しました。その主な理由は、2015年に買収したダイエーの負の遺産からの脱却がうまく進まなかったこととウエルシアの不振により、投資家の期待を下回る業績となったことです。
しかし2019年には復活の兆しが現れたことで、株価も上昇に転じました。この背景には、ダイエーの買収による減損の影響が低下することや、平行して進めた構造改革によるGMSやスーパーマーケット事業の好転が期待されたことがあります。
出典:Yahoo!ファイナンス
また、当時は海外におけるイオンモールの出店計画から海外事業の拡大が期待されたこともあり投資家の期待を集めたことがうかがえます。
出典:イオンモール統合報告書
2021年〜2022年にかけて株価が上昇
2020年末から広がった新型コロナウイルスの影響は、世界的に、全産業に大きな影響を与えました。イオンにももちろん影響を与え、大型ショッピングモールを訪れる人は減少し、株価は一時大きく下落しました。
出典:Yahoo!ファイナンス
上のチャートを見ると、新型コロナウイルス感染拡大前の株価は約3,200円で、その後2,400円近くまで落ち込み、約25%の下落です。一方、日本経済全体、つまり日経平均で見るとコロナショックによる影響は31%下落であり、相対的に影響が小さかったことが分かります。
その後、GMSに客足が戻るにつれて株価も上昇傾向を示し、2024年1月時点では新型コロナウイルス前よりも高値となっています。
イオンの株主還元|配当・株主優待
イオンは株主還元が厚いことで有名です。その施策について、配当や株主優待を確認します。配当金の推移を見ることで、今後も同程度の施策が継続される可能性があるかという点も合わせて見てみましょう。
- イオンの一株配当・配当利回り推移
- イオンの株主優待
イオンの一株配当・配当利回り推移
過去5年(予定含む)の配当状況は下の表の通りです。毎年安定した配当が続けられており、今後も同程度の配当が続くことが期待されます。
出典:イオン HP
配当利回りについては、下の表の通りです。1%強で推移しており、一般的に高配当と言われる4%という水準から見ると低いように見えます。しかし、株主優待を含めて考えるとその評価は変わり、イオンの株主還元施策が人気である理由が分かります。
年度 | 配当利回り(%) |
---|---|
2023年2月期 | 1.42 |
2022年2月期 | 1.39 |
2021年2月期 | 1.12 |
2020年2月期 | 1.79 |
2019年2月期 | 1.45 |
出典:IRBANK
イオンの株主優待
イオンの株主優待は大きく分けると、オーナーズカードを保持することによる割引や優待特典、キャッシュバック、ギフトカードです。この優待はイオンを日常生活で利用する方には大変メリットがあるため、フル活用すれば高配当銘柄と言えるのです。
まず割引や優待特典は、「お客様感謝デー」における5%割引やイオンシネマでの割引があります。
そして、キャッシュバック制度は保持する株式数に応じて還元率が変わり、100株(単元株)、500株、1,000株、3,000株で保有数に応じて還元率が上がります。
出典:イオン HP
キャッシュバックは年2回発生するので、半年のイオンにおける買い物額に応じて返金が発生します。例えば、500株保有する投資家が半年で100万円(1ヶ月間では17万円弱)買い物した場合、4%分相当の4万円がキャッシュバックされることになります。
配当金と合わせて考えると、イオンを日常的に利用する人にとっては還元率が大きい銘柄となります。
ギフトカードは、長期保有した場合に適用される制度で、1,000株以上で3年保有すると下の表の金額のギフトカードを受け取ることができます。
出典:イオン HP
イオンの株価はなぜ上がるのか理由を解説
新型コロナの影響が低減し、イオンの株価は上昇傾向です。ここでは、なぜ株価が上がるのか、その理由をいくつかの観点で考察します。また、その傾向が続くのかという点も確認します。
- 構造改革が落ち着き安定した業績を維持
- 高い還元率の株主優待の魅力が継続
- 金融事業、海外事業という稼ぐ手段を持っている
構造改革が落ち着き安定した業績を維持
イオンは統合や買収を繰り返してきました。1970年代から小売業界トップに君臨しその後低迷したダイエー、マックスバリュー、ピーコック等を統合してきましたが、不採算店を黒字化するには時間と労力を要します。
店舗閉鎖も含めた一連の買収後の構造改革がある程度効果を発揮してきており、今後GMS事業及びスーパーマーケット事業が業績を維持すると投資家に考えられていることが、安定的に株価を支える要因になっています。
但し、現在は物価上昇が継続する様相を示していることから、仕入価格の上昇が見込まれている点は今後のマイナス要素でしょう。
高い還元率の株主優待の魅力が継続
前述の通り、イオンの株主還元施策は投資家にとって非常に魅力的です。配当金だけで見れば利回りは2%にも満たないですが、株主優待を含めて考えると配当利回りは20%を超える可能性があります。
GMS事業やスーパーマーケット事業が堅調を維持すること以上に投資家を惹きつけるのは、この株主還元施策でしょう。2024年3月時点でこの施策が改悪されるようなリリースも出ていないことから、還元水準は現状のレベルが継続されることが期待されるので、株価が上昇することにつながっています。
尚、自社株買いは2015年を最後に行われていないので、今後しばらくは実施される可能性は低いでしょう。
金融事業、海外事業という稼ぐ手段を持っている
イオンの主力事業であるGMS事業とスーパーマーケット事業は、既に確認した通り利益率が非常に低いものです。しかし、イオンは利益を稼ぐ事業を保持しています。それが金融事業です。また、国際事業は今後のビジネス拡大が期待されます。
金融事業は下の円グラフ左下(茶色部分)が示す通り、利益を稼ぎ出しています。 イオンは、GMSとスーパーマーケットで顧客をかき集め、利益率の高い事業に誘導することで収益を獲得する戦略であり、その事業構造が投資家に評価されていると言えるのではないでしょうか。
出典:イオン HP
国際事業は、利益ベースでは全体の10%にも満たない水準ですが、海外出店は継続される計画となっており今後の業績拡大が期待されます。
イオンの株価は割高で危険?
株価が割高であるかどうかを判断するには、指標を何に設定するかによります。一般的にはPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)が用いられるため、それぞれの指標を確認します。2024年4月5日時点では以下の通りです。
- PER:89.66倍
- PBR:2.85倍
PERは1株あたりの純利益を示し、平均的な数値としては15倍程度で、それを超えると割高と言われます。小売業界最大手のセブン&アイ ホールディングスの値も24.65倍であることから、イオンのPERはかなり突出した数値であることが分かります。PERだけを見れば、純利益に対して株価が相対的に大きいため割高と言えます。
次にPBRですが、こちらの指標は純資産に対する株価の比率であり、一般に1倍を下回ると割安と言われます。イオンのPBRは約3倍であり、こちらもセブン&アイ ホールディングスの1.47倍を上回ります。
PER、PBRのそれぞれが割高であることを示したことから、イオンの現在の株価は指標面では割高と言えます。しかし、すぐに手放す必要があるほど危険であるかと言えば、そのようなこともありません。その理由は、業績が安定しており稼ぐ力があるからです。
しかし割高な水準にあることは間違いないので、安全とも言い切れないことから、今後の見通し如何で保持する銘柄か判断することが求められます。
イオンの株価に対する投資家の口コミ
次に、イオン株を保有する投資家の声を、口コミから拾ってみます。
地域競争店はいろいろあるんだけど、
ビックで買うと、とにかく他店より安い!感謝ディ5%引き、オーナーズカードで4%引き。
おまけに200円で1ポイントもらえる。ついでに配当もいただき。
これでイオンが嫌いだなんて言う人いますか?
他店はガラガラ閑古鳥。キッと泣いてますよ。引用:Yahoo!ファイナンス
株主になるとな、これまで別の店で買うてたもんまで、全部イオン系列で調達するようになんねん。我ながら驚くほどイオンに金落としてるわ。
売上は上がり、浮動株は減る仕組み。
ホンマによう考えられてるわ。引用:Yahoo!ファイナンス
イオンオーナーズホルダー・イオン直営売場・ザ、ビック店舗で買い物すると、半年毎1単元で、3パーセント現金バックは、楽しみです。仕込株価から、現在2倍以上、株仕舞いまでホールドします。
引用:Yahoo!ファイナンス
イオンのPBの飲料水自主回収だそうです。この影響はこれから出るのかな?
引用:Yahoo!ファイナンス
ブヒヒーンみんな心配しないでいいと思うよ!なぜならイオンスタイル福井が夏にオープン予定だよね!俺のようにオーナーズカードがほしくて、またイオンラウンジ入りたくて株を購入しようとする人沢山いると思う!
だから、今、俺は自分の持ってる100株大事にしようと思っています。皆さん、また、明日頑張りましょう引用:Yahoo!ファイナンス
掲示板の口コミ全般の印象としては、やはり安定した業績と手厚い株主還元施策、特に株主優待に魅力を感じて保有している投資家が多いようです。また、日常で利用することから、イオンやPBブランド商品に愛着がある方もいるようです。
株主の日々の生活に入り込むことは長期的な保有につなげられる可能性があるため、小売業としての強みが発揮できています。
4月4日にPBブランドの水がカビ臭いことから自主回収したニュース(出典:NHKニュース)があり、それに関する口コミもいくつかあげられていました。
他銘柄の口コミと比べると、「イオンファン」が保持していることが多いようで、外部環境の動きや株価の細かな動きで一喜一憂する様子が少ないです。これが安定した株価の背景にあることが推察されます。
イオンの株価は今後どうなる?買い時はいつ?
イオンの株価は今後どうなるでしょうか。口コミでも見てとれるように、人気のある銘柄であることは間違いないようですが、イオン株を保有するとしたら買い時はいつかという点についても考察します。
- イオン株の買い時はいつ?
- イオン株は今後どうなる?
イオン株の買い時はいつ?
今後しばらく大きな下落が起きない前提でイオンの株式を購入するとしたらどのタイミングが良いでしょうか。ここでは目的を2つに分けます。1つはなるべく安く株を購入すること。もう1つは株主優待を狙うことです。
繰り返しになりますがイオン株式の魅力は株主優待にありますので、権利落ちのタイミングで株価は変動します。優待の権利を受けることができる最終売買日に向けて株価は上昇するため、安く株を購入したいのであればその翌営業日以降に購入することがお勧めです。
次の権利付最終売買日は2024年8月28日(水)(出典:イオン HP)のため、翌日の8月29日は株価が下落している可能性が高いです。
株主優待狙いであれば、前述の通り権利落ち日に向かって株価が上昇していくため、その日より充分に前のタイミングで購入してしまうことが良いでしょう。
イオン株は今後どうなる?
イオン株の今後の見通しについて考察します。これまで確認してきた通り、イオン株は安定した業績や手厚い株主還元施策、それらを背景にした「イオンファン」による長期保有といったことから、株価は安定的に推移することが予想されます。
ただ懸念事項もあり、それは株主還元が手厚すぎることです。ここで再度、配当金の情報を見てみましょう。注目すべきは配当性向で、いずれの年度も100%を超えています。
出典:イオン HP
配当性向が100%を超えているということは、当期純利益以上に配当金を支払ってしまっていることを示し、本来は経営上好ましくありません。現在は潤沢なキャッシュがあるためそれが可能ですが、中長期的には必要な投資への資源を削っているとも取れます。
しかし、株主還元の水準を下げることは投資家の離脱を招くため、配当金を下げるという判断は非常に難しいでしょう。株価はしばらく安定推移することが予想されますが、株主還元施策の転換時期に大きく変動するでしょう。
イオンの業績・株価・配当についてまとめ
ここまで、イオンの株価について事業内容や主還元施策等の観点から確認してきました。当面安定した業績と株主優待が株価を支えると予想されますが、中長期的にはリスクもあります。
株式を購入するかどうか判断する際の観点の1つは、日常的にイオングループの店舗を利用し株主優待を受けられるかどうかに依存します。近所にイオンがなければ購入推奨銘柄にはなりませんが、利用機会がある方は保有を検討しても良いでしょう。
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