1. なぜ今、新しいタイプの物件なのか?
なぜ、今新しいタイプの物件が求められているのか、理由を考えてみましょう。
背景の1つに挙げられるのが、2030年問題です。これは、少子高齢化による人口減少や人口構造の変化がもたらす、さまざまな社会経済情勢に及ぶ社会問題の総称を指します。2030年ごろに顕在化すると考えられるため、このような名前が付けられました。
なお、国土交通省がまとめた「不動産業ビジョン2030」によると、不動産業界に影響を及ぼし得る社会経済情勢の変化は、以下の9点とされています。
- 少子高齢化・人口減
- 空き家の増加・既存ストックの老朽化
- 生活環境・企業活動の変化
- 働き方改革の進展
- 国際競争力の強化
- 国土構造の変化
- 環境問題の制約
- 消費者ニーズの変化
- 自然災害の激甚化
これらの問題のうち特に「少子高齢化・人口減少」「消費者ニーズの変化」は、不動産投資において選ぶべき物件と大きく関連します。つまり、少子高齢化が進み、単身世帯も増えている以上、ファミリー向けの物件ではなく、快適に一人暮らしができる物件を求める人も今後は増えてくるはずです。
そうはいっても、家族一緒に暮らそうとする人がまったくいなくなることは考えにくい以上、従来型のマンション投資がまったく無意味とは言えません。以下のメリット・デメリットを踏まえたうえで、これまで不動産投資をやったことがないならチャレンジする価値はあります。
メリット | エリアを厳選すればある程度の賃貸需要が見込める |
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デメリット | ・管理費、修繕積立費が上がる可能性 ・不適切な管理で資産価値が急落する ・競合物件が多いので強みを打ち出す努力が必要 |
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2. 注目すべき新潮流!注目の投資対象を徹底比較
ファミリー向けの物件をすでに所有しており、ある程度の収益が挙げられているなら、次の投資対象をあえて「ファミリー向けではないもの」にしてみるのも選択肢の1つです。
ここでは、注目の投資対象として以下の4つを徹底比較してみましょう。
シェアハウス
シェアハウスとは、一棟の建物の中に各人に割り当てられる個別スペースと、リビング・台所・トイレ・浴室などの共用スペースを備えた賃貸物件を指します。リアリティ番組やドラマでも題材として取り上げられたので、存在自体は知っているという人もいるかもしれません。
不動産投資との関連におけるシェアハウスのメリットは以下の通りです。
- 初期費用を抑えやすい
- 利回りが一般的な賃貸住宅よりも高くできる可能性がある
- 空室リスクを下げられる
- コンセプトの決め方次第では差別化が可能
一方、デメリットとしては以下の点が挙げられます。
- 必要とされる法的知識が異なる
- 集客のターゲットが絞られる
- 運営コストが高くなりがち
- 融資が受けにくい
- 物件の特殊さゆえ売却もしづらい
- 入居者同士トラブルになりやすい
- 事業を終了させる際に入居者の同意が得られない
シェアハウス投資において成功するためには、これらのデメリットを克服できるよう工夫を凝らすことが必要です。
前提として、シェアハウスは建築基準法上、寄宿舎扱いになるため、既存の住宅を流用するなら、消防法や建築基準法の基準を満たす形での改修が必要になります。専門知識を持つ事業者を選択することが重要でしょう。
また、そもそも一般的な賃貸マンションを希望する人にはアプローチしづらい部分もあるので、コンセプトを作りこむなど「刺さる人にだけ刺されば良い」と割り切ることも必要になります。
加えて、入居者同士のトラブルが起きやすい住居形態であるため、審査は綿密に行いましょう。さらに、万が一撤退する場合も考えて、入居者とは定期借家契約を結んでおくと安心です。契約で定めた入居期間を過ぎた後は退去しなくてはいけないため、撤退したくても入居者からの同意が得られず踏み切れない、ということもありません。
コンパクトマンション
コンパクトマンションとは、一般的には1DK~2LDK程度の間取りで、30~50m2くらいの広さのマンションを指します。明確な定義はありませんが、ワンルームマンションとファミリータイプマンションの中間程度の物件と考えるとわかりやすいでしょう。
前述したように、単身者や子どもを持たない夫婦・カップルは増えています。これらの人の中には、日中は仕事で家にいないため、家に対して「通勤に便利であれば、さほど広くなくても良い」という考え方を持つ人は一定数いるはずです。
また、子育てを終えたシニア世帯が、持ち家を子ども世帯に譲り、自分たちはあえて最寄り駅から近く、車がなくても生活できそうなコンパクトな物件に住みたいと考えることもあり得ます。広い家は掃除の手間がかかるし、最寄り駅から遠い家は車が運転できなくなると生活に不便になるためです。
このような「広さより便利さ」を求める人には適しているコンパクトマンションですが、投資対象としては以下のメリットを有しています。
- ファミリーマンションに比べ低額な資金で購入できる
- 利便性が高い立地の物件を選べば資産価値が落ちにくい
一方、コンパクトマンションの致命的なデメリットは「ライフスタイルの変化に弱い」ことです。たとえば、入居した当初は独身や夫婦・カップルだけの世帯であったとしても、結婚したり、子どもができたりすれば手狭になるため退去してしまうことがあるかもしれません。また、シニア世帯の場合、入居者が亡くなったり、病院や介護施設に入院・入所したりするなどの理由で退去を余儀なくされることがあります。
コンパクトマンション投資をするなら「いつかは退去もあり得る」と考えたうえで、すぐに次の入居者が見つかるよう工夫をしましょう。有効な対策になるのは「利便性の高い物件」を購入することです。以下のポイントにも着目し、投資対象を探してみてください。
- 最寄駅から近い(徒歩5分圏内)
- 近隣にスーパー、コンビニ、クリニックがある
- スタディスペースやゲストルーム、展望ラウンジなどの共用スペースが充実している
ホテルライクマンション
ホテルライクマンションとは文字通り「ホテルのようなマンション」です。明確な定義はありませんが、以下の特徴がある物件と考えて良いでしょう。
- 広い寝室を中心に据える
- バスルームと寝室を一続きの動線で構成する
- 壁にアートを飾る
- ベッドルームに壁面パネルを導入する
- 廊下が内廊下になっている
- コンシェルジュサービスがある
最初からホテルライクマンションとして売り出されている物件を購入するか、既存のマンションをリノベーションしてホテルライクマンションと言える内装にするかの選択肢が考えられます。
ホテルライクマンションに投資するメリットとして挙げられるのは、他の物件と差別化が図れることです。家を借りようとする人の中には「多少賃料が高くても良いからできるだけおしゃれな物件に住みたい」と考えている人が一定数います。本当に気に入ってもらえる物件を貸すことができれば、入居期間が長くでき、結果として賃料収入を得続けられるはずです。
一方、デメリットとして挙げられるのは、物件価格の高さです。大手デベロッパーが手がけるホテルライクマンションは、都心部にあることが多くなっています。物件によっては1億円を突破するのも珍しくないため、それだけの資金を用意できるかが問題になるでしょう。
また、既存のマンションを購入し、ホテルライクマンションにリノベーションして貸すことも考えられますが、その場合もやり方次第ではかなりの資金が必要になるため注意しなくてはいけません。
サービスアパートメント
サービスアパートメントとは、日常生活に必要な家具、キッチン、食器などが完備された家具付きの部屋を1か月から1年間ほど、利用希望者に貸し出す形態を指します。長期の休みを使って旅行に来る外国人や、任期付きの転勤などで引っ越してくる単身者などをターゲットにしている場合が多いです。
なお、似たような住居形態であるマンスリーマンションと比べると、コンシェルジュサービスやランドリーサービス、ジムやスパの併設など、サービスが充実しているのがサービスアパートメントの特徴となっています。
投資対象にする場合、サービスアパートメントとしての利用に対応しているホテルの一室を購入するか、既にサービスアパートメントとして利用されている物件の一室を購入する方法が考えられるでしょう。
サービスアパートメント投資のメリットは、都心や観光地の近くなど、エリアを選べば高い収益が見込めるところです。1か月程度のバカンスを取って日本に旅行に来る外国人観光客であれば、観光地に近い、もしくはアクセスが良い場所のサービスアパートメントに泊まりたいと考えてもおかしくありません。
また、1年程度の任期で転勤してくる会社員であれば、わざわざ家具を買いそろえて引っ越すより、家具付きの物件に住む方が楽と考えていることもあり得ます。海外からの転勤であればなおさらです。これらの人たちにとって便利な物件であることを打ち出せれば、安定した収益につながるでしょう。
一方、デメリットとしては物件の取得価格や維持費が高いことが挙げられます。前述したように、サービスアパートメントはターゲットが絞られる特殊な物件であり、通勤や観光に便利な場所にないとなかなか入居者は現れません。また、コンシェルジュサービスやジム・スパなど人件費や設備費がかかるサービスを望む入居者が多い以上、相応の投資資金もかかります。ある程度不動産投資の経験があり、資金面で余裕がある、もしくは融資を引き出せるだけの実績がある人向けといえるでしょう。
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3. 中級者向け! 新しいタイプの物件投資を成功させるポイント
中級者向けの物件を前提にした不動産投資であっても、成功させるポイントは一般的な不動産投資と何ら変わりありません。
まず、物件選びは非常に重要です。以下の基本情報は欠かさずチェックするとともに、可能であれば実際に物件を見に行ってみるようにしましょう。
- 予算
- 周辺家賃相場と想定家賃
- 利回り
- 築年数
- 徒歩分数
- 管理費・修繕積立金
- 間取り
- 総戸数
条件に合いそうな物件が出てきたら声をかけてもらえるよう、不動産会社の担当者と関係を築くことも重要です。
また、市場調査・エリア選定もしっかりと行いましょう。不動産投資は「物件を借りてくれる人がいないと収益にならない」投資です。物件の種類によって需要が見込める時期やトレンド、求められるエリアとそうでないエリアが異なる以上、しっかりとしたリサーチをする必要があります。たとえば、ファミリー層に人気があるエリアでシェアハウスやコンパクトマンションに投資をしようとしても、なかなか苦戦するかもしれません。これらの物件は単身者や二人暮らしなど比較的少人数の世帯をターゲットにしているためです。
また、どのような物件を購入した場合でも、管理運営は非常に重要になります。たとえば、エレベーターなど共用部分の電灯が点かないのをそのままにしておくなど、管理がいい加減だったら入居者は不安を覚えるはずです。結果として退去につながりかねないため、快適に入居者に過ごしてもらえるよう、管理運営にはしっかりと取り組みましょう。
加えて、リスクヘッジも重要です。一般的に、不動産投資には以下のリスクがあるといわれています。
- 空室リスク
- 家賃下落リスク
- 価格下落リスク
- 金利上昇リスク
- 家賃滞納リスク
- 災害リスク
- 修繕リスク
- 倒産リスク
これらのリスクを防ぐためには、事前に取り組めるリスク対策を漏れなく講じておくのが重要です。具体的には以下の点をチェックしましょう。
- 周辺の利便性が高く、最寄り駅まで近い物件を選ぶ
- 周辺の相場や同等の物件とも比較し、適切な額に賃料を設定する
- 評判の良い管理会社を選ぶ
- ハザードマップ上安全なエリアにある物件を選ぶ
- 入居希望者と面談をし、人柄を見極める
- 火災保険、地震保険は必要な保障がもれなく受けられるよう契約内容をしっかりチェックする
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不動産投資の利益は、生活費へ充てたり、欲しいものを購入したりと、何に使おうか悩んでいる方もいるかもしれません。
また、得た利益をその後の資産運用に利用しようと考えているものの、...
4. まとめ:時代の変化に対応し、最適な投資戦略を
不動産投資も一種のビジネスである以上、長期的な視点は欠かせません。現在は問題なく収益が挙げられていたとしても、その状況がいつまでも続くとは限らない点に注意が必要です。社会が変われば、人が家に求めるものも変わっていきます。
たとえば、1970年代前半は第二次ベビーブームが到来し、毎年200万人以上の子どもが生まれていました。この時は、「日本は将来少子化で悩む」などと考える人はごくわずかだったでしょう。「夫婦と子どもが暮らせる家を構え、子どもが大きくなったら独立する」といった暮らし方が一般的だったはずです。一生独身を貫き一人暮らしをする人もいたはずですが、かなり珍しかったかもしれません。
しかし、2020年代を迎えた今、日本は未曾有の少子化時代に突入しました。2023年に日本国内で生まれた子どもの数は約75万人と、第二次ベビーブームのときに比べ半数以下に減っています。子どもを持たずに、一人暮らしをする人、夫婦・カップル(同性パートナー含む)2人で暮らす人など、家族のあり方も多様化しています。
一人一人の生き方、家族のあり方が多様化している以上、「夫婦と子どもが暮らすのに適した家」以外に住みたいと考える人もいるはずです。
今回紹介した4つの選択肢は、「夫婦と子どもが暮らすのに適した家」以外の場所という意味で共通しています。不動産投資は投資であると同時に、「必要としている人に安全かつ快適な住まいを提供する」という社会貢献です。「快適に暮らせる家を提供すること」を考え具体化するのを続けていけば、きっとコンスタントに成果を挙げ続けられるでしょう。
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